ソースカツ丼文化圏を旅する ~ 福井県 福井市 ~(3)

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第3回(全4回)

ソースカツ丼文化が根付いている福井市には、数多くのソースカツ丼を提供するお店があります。福井市のソースカツ丼は洋食のポークカツレツの流れをくむ細かいパン粉を使った薄めのカツをソースに潜らせ、3枚ほど重ね載せするというスタイルがスタンダードです。ソースカツ丼につきものと思われがちなキャベツの千切りは丼にはのらず、ソースカツのみという潔さです。お店の中にはとんかつに近い粗目のパン粉を使ったり、カツを厚めにして2枚のせだったりと、それぞれ個性があります。

ヨーロッパ軒総本店

それでは福井市のソースカツ丼のお店をご紹介しましょう。まずは「ヨーロッパ軒総本店」です。1913(大正2)年に東京・早稲田で創業し、1924(大正13)年に福井に移り現在の「ヨーロッパ軒」を開業しました。ヨーロッパ軒から巣立っていった料理人は数多く、福井県内に現在19店舗ののれん分け店があり、福井市内は11店舗です。

福井県内では福井市と並び敦賀市もソースカツ丼のまちとして知られていますが、ヨーロッパ軒ののれん分け第一号店は1939(昭和14)年の敦賀分店で、現在の「敦賀ヨーロッパ軒」です。最初ののれん分けが戦前というのですから、地方における洋食文化の草分け的存在ともいえるでしょう。

元祖の味に豊富なバリエーション

ソースカツ丼は文字通り元祖の味。とんかつに使う粗い目のパン粉とは別物の、西洋料理の細かいサラサラのパン粉を使い、薄めのもも肉とロース肉を使ったカツをラードにヘット(牛脂)を混ぜた油で揚げます。仕上げに特製のウスターベースのやや甘めのソースに通し、どんぶりに三枚のせます。コクのあるラードを使いながら、細かい目のパン粉が脂を含まず、さらっとしたソースなので、見た目よりあっさりと食べられますが、そのシンプルながら深い味わいで食後の満足感は高いです。

見た目よりあっさりと食べられます
見た目よりあっさりと食べられます

またこちらにはとんかつのカツ丼以外にもエビ丼、パリ丼、ビーフカツ丼というバリエーションがあります。エビ丼はその名の通りエビフライ丼。パリ丼はメンチカツ丼。二代目店主と敦賀ヨーロッパ軒の初代店主がヨーロッパ研修に行ったときに思い付き、思い出深かったフランスのパリにちなんだ命名だったのだとか。ソースカツ、エビ、メンチカツの三種盛スペシャルカツ丼というメニューがあるのですが、ここにビーフカツを追加できるので、4種類のソースカツ丼を楽しむこともできます。

三種盛スペシャルカツ丼+ビーフカツ

■ヨーロッパ軒総本店

  • 福井県福井市順化1-7-4
  • 0776-21-4681
  • 火曜・隔週月曜定休
  • 11:00~20:00

レストランふくしん

地元ではヨーロッパ軒と人気を二分するといわれる「レストランふくしん」は、1973(昭和48)年創業の老舗人気店です。ヨーロッパ軒で修行した先代を引き継ぎ現在は2代目。ラードで揚がったカツに、甘めの特製ソースをまとったソースカツ丼の味はもちろん評判ですが、そのボリュームも注目されるデカ盛り店としても知られています。

普通盛でも人気のボリューム

普通盛のソースカツ丼はカツ三枚ですが十分なボリュームで、一見飾りのような閉まらない蓋をわきに置き、福井ならではの「ふたのせ」でカツを避難させてから、ソースのかかったご飯とともに頂きます。大盛になるとその破壊力はかなりのものになるようです。この大盛を求めて休日には遠くからわざわざやってくるお客さんも少なくありません。

閉まらない蓋にはワケがある
閉まらない蓋にはワケがある

ちなみに地元のお客さんは持ち帰りされる方もおり、対応しているそうです。ソースカツ丼の形で持ち帰る方もいれば、カツとソースを別で持ち帰る方、カツだけを持ち帰り、カツカレーや醤油で食べるなんて方もいるそうです。お客さんの要望にもきめ細かく応えるといった心遣いも、長年地元で愛される人気店ならではです。

食べきれないときはお持ち帰りに
食べきれないときはお持ち帰りに

レストランふくしん

  • 福井県福井市高木中央1-205
  • 0776-54-7100
  • 火曜・第3水曜定休(祝日の場合は営業)
  • 月〜木:11:00~15:00、16:30~19:30
  • 金~土:11:00~15:00、16:30~20:00
  • 日祝:11:00~14:00、16:00~20:00

蕎麦やすたけ

カツ丼はソースカツ丼のみがメニューに載るお店もあれば、卵とじカツ丼もお店もあります。しかし、さすがソースカツ丼文化のまちと言いましょうか、全国的にも珍しい。ソース味の玉子とじカツ丼が食べられるお店があります。福井といえば越前おろしそばが有名ですが、手打ちそばが人気の「やすたけ」のカツ丼はかなり個性的です。

見た目は普通の卵とじですが…

手打ち蕎麦の名店のソース卵とじ

創業1979(昭和54)年。先代の頃は食堂形態のお店で、数多くのメニューを扱っていたそうですが、2代目のご主人になる際に、手打ちそばの店に変わり、今では福井でも押しも押されるそばの名店として知られるようになりました。

おろしざんまい(おろし、とろろおろし、しぼりおろしの三皿)1,300円
おろしざんまい(おろし、とろろおろし、しぼりおろしの三皿)1,300円

代替わりの際にかなりメニューは絞ったそうですが、ご自身も子供のころからおやつとして食べていたカツ丼にはお客さんがついており、昔のままのカツ丼がメニューに残ったそうです。残してほしいと強く要望されたカツ丼はソースの風味のするもの。カツにはソースカツの様に味はついておらず、ご飯にのったカツの上に、青ネギが入ったソース味の卵とじをのせます。だしと共にソースが香り、ごはんに染みる卵とじのつゆはソースの味がしっかりわかり、これだけでもご飯を美味しくいただけます。

味わい深い個性的なソース卵とじ

個性的な味わいはハマる人とあまり好みではない人が分かれるのだとか。メニューにはソース味と明記してあるのですが、お客さんの中には丼から漂うソースの香りに、「作り方を間違えたのではないか」と聞かれた方もいたそうです。気鋭の蕎麦店の歴史あるカツ丼は、ソースカツ丼文化の福井にあっても唯一無二の味です。

蕎麦やすたけ

  • 福井県福井市文京7-9-35
  • 0776-26-7281
  • 水曜定休(火曜夜の部休)
  • 11:00~15:30(L.O15:00)、17:00~21:30(L.O 21:00)

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