ソースカツ丼文化圏を旅する ~ 福井県 福井市 ~(4)

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第4回(全4回)

ソースカツ丼文化圏の卵とじ

福井におけるカツ丼といえばソースカツ丼が主流であることは歴史的にも文化的にも特徴と言えますが、意外にもソースカツ丼だけしかないわけではないようです。洋食店やレストランもしくは洋食系食堂ではソースカツ丼のみのお店も少なくありません。しかし食堂やとんかつ店にはソースカツ丼が必ずありますが、卵とじカツ丼の存在割合もそれなりに高いようです。統計があるわけではないですが、若い頃はソースカツ丼をがっつり食べ、そのままカツ丼ならソースカツ丼にはまっていく人と、年を取るに従い、だしの効いた卵とじが食べたくなるという話をする人もいます。

二枚重ねのカツに卵とじのせ――ヨーロッパ軒花月分店
二枚重ねのカツに卵とじのせ――ヨーロッパ軒花月分店

ちなみに福井における卵とじカツ丼は、全国的に一般的な玉ねぎとカツを卵でとじてご飯にのせるスタイルや、東海地方や関西地方の老舗の食堂などにみられる、カツを卵と煮るスタイルではなく、ごはんの上にのせたカツの上に、卵とじを後のせするスタイルです。

別の意味で蓋が閉まっていない―― ヨーロッパ軒三郎丸分店
別の意味で蓋が閉まっていない―― ヨーロッパ軒三郎丸分店

カツのさっくり感が残り、だしの効いた卵とじだけでもご飯が美味しくいただけるという評価もあります。ソースカツ丼の元祖である「ヨーロッパ軒」の暖簾分けのお店にはオリジナルメニューが認められており、総本店のメニューにはない卵カツ丼があるお店もあります。

たっぷりの卵とじをスプーンで食べる(その下には2枚のカツ)
たっぷりの卵とじをスプーンで食べる(その下には2枚のカツ)

カツを日本一消費するまち

スーパーマーケットのお弁当コーナーでは、ソースカツ丼が優勢ですが、卵とじカツ丼も置いてあります。ソースカツ丼はとんかつ が一般的なのですが、珍しいのはソースチキンカツ丼やソースメンチカツ丼があること。他地域でとんかつ 以外のカツ丼を見ることはまずありません。また総菜売り場を見てみると、福井ならではの総菜といえるソースの味付きとんかつ 、チキンカツ、メンチカツなどがあります。なかにはソース味のついていないとんかつもあり、幅広いニーズに対応しているようです。

総務省家計調査結果において福井市は、カツレツと総菜が全国一位となっています。種類豊富なカツを日本一消費するまちというわけです。またコロッケは全国二位、油揚げが全国一位と揚げ物を好んで食べることが伺えます。油揚げは厚揚げをよく食べることに起因しているようですが、これは浄土真宗の信仰が厚い仏教王国福井ならではのこと。秋の最大の催事「報恩講」の昼食には必ず油揚げ料理がだされ、お祝いの席などでも使われていたのがいつしか一般家庭にも広まったという説が有力です。この油揚げを古くから食べていたことが、揚げ物を好んで食べることにつながったと考えられます。

お持ち帰りの厚揚げ
お持ち帰りの厚揚げ

ちなみに福井は共働きが多いことでも知られ、カツレツをはじめとする揚げ物や、総菜の消費が多いことにつながっているといわれています。家庭でも「味カツ」を購入して、ご飯にのせてソースカツ丼にして食べることも一般的なようです。

家庭のとんかつ事情

自宅でのカツの食べ方を聞いてみると、とんかつとして食べる場合もソースカツ丼として食べる場合もあるようです。とんかつであれば市販のウスターソースやとんかつソースを使用し、ソースカツ丼の場合はヨーロッパ軒などの専用ソースを買う場合もあれば、ウスターソースを火にかけ、砂糖などの調味料でご飯に合うご家庭の味に仕上げるとのこと。ソースにひと手間かけるというのは、ソースカツ丼が定着している福井ならではです。

福井のソースカツ丼のレシピというのはあまり決まったものがあるわけではないようですが、ウスターソースベースに砂糖などの甘みを加え、ご飯に合うようにみりんや醤油などの和風調味料をブレンドするというのが多いようです。福井のソースカツ丼を家庭で楽しむのであれば、専用のソースを取り寄せてみるのもいいかもしれません。

ソースカツ丼専用ソース

日本のソースカツ丼の発祥お店があること、宗教心に厚いことで厚揚げから揚げ物を食べる習慣が根付いていること、そして女性が働き者の福井ならではの共働き文化があることで、福井のソースカツ丼文化が百年にもわたり受け継がれてきたと考えると、実に興味深く、地域の食文化の奥深さを感じさせられます

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