味の決め手はオーロラソース 「高知のチキン南蛮」

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チキン南蛮と言えば、甘酢をからめた鶏の唐揚げにタルタルソースをかけたものを思い浮かべるだろう。そう、宮崎県のご当地グルメだ。しかし、高知市でチキン南蛮と言えば鶏の唐揚げに、マヨネーズとトマトケチャップをベースに調合したオーロラソースがかかっている。タルタルソースのチキン南蛮との違いやいかに。実際に高知を訪れて食べてみることにした。

コンビニも兼ねる「くいしんぼ如月」

高知のチキン南蛮として、高知市民の誰もが思い浮かべるのは、地元のコンビニ・弁当チェーン「くいしんぼ如月」のチキン南蛮だ。「くいしんぼ如月」は1977年に創業、81年にはお弁当事業の「くいしんぼ」をスタートさせた。本社の他、高知市内に13店舗、香南市と香美市、安芸市にも各1店舗を構える。

「くいしんぼ如月」のチキン南蛮弁当

一番人気はもちろんチキン南蛮。そのバリエーションは豊富だ。定番のチキン南蛮は、チキンのサイズによって「BIG」と「スーパーBIG」がある。さらにはオーロラソースではなくポン酢で食べる「和風ナンバン」もある。「ナンバンチョイス」シリーズは、チキン南蛮にハンバーグや生姜焼きなど、もうひと品おかずが加わる。鶏の唐揚げとチキン南蛮が並ぶ「チョイス唐揚げ」もある。さらに「スーパーチョイス」シリーズなら、セットのチキン南蛮が2枚になる。「ナンバン族」と呼ばれるチキン南蛮のバリエーションメニューは年間100万食以上の人気メニューという。いったい高知の人はどれほど「くいしんぼ如月」が好きなのだろうか。

「くいしんぼ如月」のチョイス唐揚げ

実際に「くいしんぼ如月」のチキン南蛮を食べてみよう。鶏は胸肉を使用する。薄めに粉をまぶして揚げたその食感は、唐揚げでもなくチキンカツでもない。たまたま唐揚げのチョイスを注文したこともあり、もも肉の唐揚げとの味の違いを実感できた。ジューシーなもも肉に比べ、むね肉は非常に淡泊だ。

淡泊な胸肉を使用

一瞬高知名物のカツオを思い浮かべた。もも肉がマグロなら、胸肉はカツオなのだ。淡泊が故の味わいに、しかも肉に下味を付けるのではなく、揚げた上からオーロラソースをかけることで口に入れた瞬間は濃厚でも、食べ進むとじっくりと鶏肉本来のうまみを味わえるのだ。

オーロラソースはキャベツにも良く合う

オーロラソースは、独特の酸味がある。やはりトマトの味要素が加わることで、マヨネーズやタルタルソースとは明らかに違う味わいになる。これが、付け合わせの千切りキャベツにもまたよく合うのだ。高知の皆さんが好んで食べるのがよく分かった。

弁当だけに米にもこだわりが

興味深かったのは、冷えてしまったチキン南蛮がまた美味しいのだ。確認と撮影のために、チキン南蛮弁当とチョイス唐揚げを一度に購入したのだが、当然いっぺんには食べきれない。腹がこなれたところで改めて冷えたチキン南蛮に箸を伸ばしたところ、驚くほど美味しいのだ。さすがは持ち帰り弁当。揚げたてでなくても美味しく食べられるよう工夫されているのだろう。

市内にある「鳥心本店」

テイクアウトの弁当なら「くいしんぼ如月」だが、お店でチキン南蛮を食べるなら、「鳥心本店」が一番人気という。早速訪ねてみた。地元では行列店として有名だが、開店の11時を15分ばかり過ぎた頃に訪店したところ、広い店内にもかかわらず、すでに席は満杯だった。きっと開店前から並んでいたのだろう。

まずはコンソメスープが登場

15分ほど過ぎた頃に、店の中に招き入れられた。注文はテーブルの端末を使って行う。まずはコンソメスープとナイフとフォークが運ばれてくる。テーブルには箸も用意されているが、どうやらナイフとフォークで切りながら食べるようだ。

「鳥心本店」のチキン南蛮定食

チキン南蛮定食はさほど待たずに席にやってきた。まずはその大きさに驚かされる。皿いっぱいに大判のチキン南蛮が鎮座する。千切りキャベツも山盛りだ。さらにはレタスも添えられている。

ジューシーなもも肉

「くいしんぼ如月」ではカットして盛られていたが、「鳥心本店」ではやはりフォークとナイフを使って切る。ナイフを入れるとじゅわっと肉汁があふれ出てくる。こちらはもも肉だ。しかも極めてジューシー。あれよあれよという間に皿に肉汁がたまっていく。

たっぷりのオーロラソース

オーロラソースはやや酸味は控えめ。しかし、ピンクの赤さ加減は「くいしんぼ如月」を若干上回るように感じた。肉汁と合わさることでさらにおいしさが膨らむ。ここで改めて「くいしんぼ如月」のチキン南蛮が胸肉であることの理由を確信した。この「鳥心本店」の肉汁は確かに美味しい。しかし、鶏肉の脂は冷えてくると、特有の臭みが出てくる。それを避けるために「くいしんぼ如月」では胸肉を使っているのではないかと思った。カットして盛り付けることで、肉汁が流れ出てしまうことも影響しているかもしれない。

たっぷりの野菜にはドレッシングがかかる

「くいしんぼ如月」と「鳥心本店」のチキン南蛮は野菜の食べ方にも違いがあった。「鳥心本店」では、千切りキャベツにもレタスにもあらかじめドレッシングがかけられていた。さらには大判の鶏肉で、野菜にはオーロラソースがこぼれないのだ。野菜はあくまでドレッシングで食べすすめる。

チキンも野菜も量がすごい

とにかく、チキンも野菜も量がすごい。ご飯を小サイズにしておいて正解だった。ちなみに、スーパーやレストランを覗くと、惣菜売り場でも、フードコートでも、たまたまなのだろうか、チキン南蛮は甘酢&タルタルソースの宮崎スタイルだった。すべてのチキン南蛮がオーロラソースということではなさそうだ。オーロラソース目当てで高知でチキン南蛮を食べるなら、行列してでも人気店を訪れるか、ソースを確認してからの方が安全だろう。

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