下北半島の生ウニの旬は春から夏にかけて。それ以外の季節に地元産生ウニは食べられませんが、ウニ好きには「塩ウニ」という選択肢があります。いわば刺身で食べる生ウニに対して、瓶に入ったウニには粒(つぶ)ウニと練(ねり)ウニがあります。粒ウニは粒の形の残ったウニで、練ウニはペースト状のもの。生ウニに塩をして水分を抜き、旨味を凝縮した「塩ウニ」をベースに、調味料やアルコールなどを加えて瓶詰めされますが、ウニの種類や塩ウニの含有率などで価格はかなり幅広く変わります。
生ウニの魅力は言わずもがなですが、「塩ウニ」の魅力も是非知ってもらいたいもの。冷蔵・冷凍技術が発達していない頃、魚介類は塩をすることで、海のないところへ運ばれ、海に出られないときのために保存されました。しかしそれだけではなく、塩で水分を抜き、旨味を凝縮することで、新鮮なものよりも美味しいと評判を得たものも少なくありません。
江戸時代に幕府などに献上され、日本三大珍味といわれた「塩ウニ」「カラスミ」「このわた」はすべて塩蔵品です。「塩ウニ」は温かい白ご飯にも合いますが、酒の肴としても一級品。
東京・神田にある1884(明治14)年創業の蕎麦の老舗名店「まつや」でも、メニューに「うに」として塩ウニが載っています。そば屋で一杯、粋に呑もうというときの外せない一品です。
さてウニの名産地が連なる下北半島の津軽海峡沿岸では多くの塩ウニも作られています。お取り寄せもできますが、東京では青森県のアンテナショップ「あおもり北彩館」で佐井村漁業協同組合の「青森県津軽海峡産甘塩うに」が購入できます(2020年9月現在)。昆布やわかめ他、豊富な海藻を食べて育った津軽海峡産キタムラサキウニと塩のみで作った塩ウニ含有率100%の粒ウニ。職人技ともいえる塩水づけの時間の管理で従来の塩ウニよりも甘塩仕立てにすることで、ウニ本来の味わいを楽しめる逸品として人気があります。
■青森県アンテナショップ あおもり北彩館 東京店
- 東京都千代田区富士見2-3-1 青森県会館1階
- 03-3237-8371
- 12月31日休
- 10:00〜19:30(月末18:00閉店)
※コロナ禍による営業時間の変更(2020年9月現在)
平日:10:00~19:00 土日:10:00~18:00
ここで佐井村の観光船・定期船フェリーターミナルに併設される「アルサス」横の「ちょこっと」というフードコーナーの、幻ともいわれる塩ウニのおにぎり「うにぎり」をご紹介しましょう。塩ウニは佐井村特産のウニを使用しているので十分にあるのですが、実は周りの海苔がレアなのだそう。このうにぎりで使用している海苔は、12月頃から2月頃の冬場に採られた「寒海苔」と呼ばれる超レアな天然「岩のり」。醤油でほんのり味付けされた岩ノリは香りも歯ごたえも格別。ただしこの贅沢なうにぎり、1日10個限定。幻といわれるゆえんです。
■津軽海峡文化館アルサス横「ちょこっと」
- 青森県下北郡佐井村大佐井112
- 0175-38-2255
- 不定休
- 10:00~16:00
※休業日・営業時間についてはコロナ関係で不定期となっています。
訪問の際には事前にお問い合わせください。
岩のりはなかなか手に入らないですが、塩ウニを使ったおにぎりを作ってみました。ご飯にのせて食べるだけでも美味しい逸品ですが、ちょっと贅沢した焼きのりに醤油で味をつけて、自作のうにぎり。佐井村に思いを馳せながら食べる塩ウニのおにぎりもなかなか侮れないのです。