知れば知るほど面白い日本の食文化にまつわる豆知識。
あなたはご存じでしたか?
食文化クイズ⑯
【胡椒と南蛮】
Q 唐辛子のことを「胡椒」と呼ぶ地域と「南蛮」と呼ぶ地域があるのはなぜ?
A 「南蛮胡椒」を語源とする方言だから
九州の柚子胡椒は胡椒と言いながら入っているのは唐辛子です。九州ではうどんの店に置いてある刻んだ赤唐辛子も胡椒と呼びます。ではラーメンに振るペッパーの胡椒はどうかというと洋胡椒と呼んで区別します。
青森で初めて南蛮味噌をみたとき、南蛮が何を意味するかわかりませんでした。原材料表示を見て唐辛子を意味することを知り驚いた記憶があります。
唐辛子の伝来については諸説がありますが、16世紀の半ばにポルトガルからやってきたとする説が最も古いようです。つまり南蛮渡来の植物です。胡椒はそれ以前に日本に入っていたことから南蛮胡椒とも呼ばれました。
朝鮮半島から伝来したという説もあり、それに対応する呼び方が高麗胡椒です。
いずれにしても南蛮胡椒のうちの胡椒が九州の方言として残り、南蛮が北日本に残ったようです。「植物名辞典」や「季語・季題辞典」には「南蛮胡椒 トウガラシの別称」とあります。
本山萩舟著「飲食事典」をひもとくと「戦国時代に渡来したポルトガル船、その後のスペイン船を南蛮船と呼び、舶載した貨物にもナンバンの名を附した。それが食物調理にも移って転々する間に異同混交して呼称を異にし、例えば同じナンバンでも唐辛子を指す地方もあれば葱を呼ぶ地方もある」としています。
ここで注目したいのは「葱(ネギ)を呼ぶ地方もある」という記述です。葱も南蛮渡来の植物なのでナンバンと呼ばれたという訳です。そばの鴨南蛮、鶏南蛮の南蛮は「本当は大阪の難波が葱の産地だったことからきている」と唱える人がいますが、そうではなくて南蛮渡来説の方に説得力があります。
ここにももう一つの南蛮が隠れていました。