ラーメン、丼、個性派ぞろい 北海道あのまち、この味⑩旭川その2

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北海道のご当地グルメを都市単位で紹介する「北海道あのまち、この味」。昨年一度旭川を紹介したが、紹介しきれなかった旭川ならではの味が多々あった。今回、個店のメニューながら、旭川市民に深く愛されているソウルフードに主に焦点を当ててご紹介したい。

棒状のおにぎり?

まずはジュンドッグだ。北海道美瑛町の洋食レストラン「洋食や純平」で誕生したと言われているファストフードだ。「ドッグ」というとホットドッグに代表されるように、具材をコッペパンで挟んだものが一般的だが、コッペパンがご飯に替わったのがジュンドッグと言えば分かりやすいだろう。

ジュンドッグの「ピジョン館」

旭川で広く食べられているのは「ピジョン館」のジュンドッグだ。旭川市内忠別川の近くに店舗を構えるが、駅や病院などの売店でも販売されており、旭川市民には広く浸透しているファストフードだ。今回は「ピジョン館」に足を運んで購入した。

袋入りで売店などでも販売

この日購入したのは、エビフライ、チキンかつ、ソーセージの3種のジュンドッグだ。近年コンビニなどで、かつやフライなどを挟み込んだおにぎりをよく見かけるようになった。ジュンドッグは、これをスティック状にしたものと言えば分かりやすいだろう。袋を破り、手に持ちながらかぶりつくのは、ホットドッグ同様だ。

左からエビフライ、ソーセージ、チキンかつ

エビはそもそも棒状だが、ソーセージもチキンも、それぞれ細い棒状にカット。衣をつけて揚げた上で、ソースに浸す。これを白いご飯でくるみ、おにぎりのように押し固めればできあがりだ。味は、いずれも慣れ親しんだ味わい。棒状にして、手に持って食べるスタイルが旭川流だ。

「生姜ラーメンみづの」の生姜ラーメン

続いては、個店のラーメンを2軒。まずは「生姜ラーメンみづの」をご紹介したい。旭川と言えばしょうゆラーメンだが、「生姜ラーメンみづの」は店名の通り、しょうゆラーメンのスープにおろしショウガがたっぷりと入れられている。見た目はごく一般的なしょうゆラーメンだが、テーブルに運ばれてきてすぐ、その強いショウガの香りに引きつけられる。

丼の底にショウガが

とにかくそのスープの味は筆舌に尽くしがたい。もちろんショウガが強く前面に出てくるのだが、ショウガだけが立っているのではなく、スープ全体の味を見事なまでにショウガが引き立てている。血圧を気にしながらもついついスープを飲み干してしまった丼の底に、しっかりショウガが残っている様に、いかにたっぷりショウガが使われているかが自覚できる。

「蜂屋」のしょうゆラーメン

続いての個店ラーメンは「蜂屋」だ。旭川らしく、動物系と魚介系のダブルスープのしょうゆラーメンなのだが、「蜂屋」ならではの圧倒的な個性を発揮する焦がしラードで、他の旭川ラーメンとは一線を画する。1999年に新横浜ラーメン博物館に出展、以来道外でもその個性的な味が高く評価されるようになった。

焦がしラードの下には柔らかいスープが

そのビジュアルは衝撃的だ。「まっくろ」としか言いようのないスープだ。しかし、それは表面に浮いた焦がしラードで、下には柔らかい魚介の風味を生かしたスープが待ち受けている。くせの強い焦がしラードと柔らかいスープとのコントラストがくせになる味だ。

店構えが渋すぎる「花ちゃん」

やはり個店のメニューだが、国道237号線沿いにある立ち食いそば店「花ちゃん」のげそ丼は、広く旭川市民のソウルフードとして知られている。まず驚かされるのがその店構えだ。古い雑居ビルの1階にあるのだが、1階のその他の店舗はすべて閉店。駐車場のある裏から入ると「幽霊ビル」のようにさえ感じるのだが、「花ちゃん」だけは、開店直後から多くの客で賑わっている。

「花ちゃん」のげそ丼

げそ丼は、そもそも店主がつまみとして調理したいかげその天ぷらがルーツなのだとか。それが評判を呼び、今では店の看板メニュー、さらには「旭川のソウルフード」とまで呼ばれるようになった。価格は600円。セットのそばをつけても700円だ。非常にリーズナブルだ。

衣は薄め

構成はとてもシンプル。どんぶり飯に、揚げ焼きされ、味の付いたげそがたっぷりとのっているだけ。ボリューム満点だが、その美味しさに箸がどんどん進んでしまう。問題はアゴだ。引き締まったげそは、歯には強敵だ。食べ進むにつれ、どんどんアゴに疲れが溜まってくる。完食はしたモノの、しばらくアゴ痛に悩まされることになった。

老舗の「小野木」

最後は、前回も紹介した新子焼き。1922(大正11)年創業の鶏料理の老舗「小野木」の新子焼きは、山椒をきかせた味で知られる。個室中心で、庭もきれいに手入れされ、旭川の中心街からは少し離れてはいるものの、その店構えからは、老舗らしい伝統と格式が感じられる。「料亭」と呼べる佇まいだ。しかし、価格は驚くほどリーズナブルだ。

「小野木」の新子焼き

新子焼きは750円。山椒をきかせたたれで味付けされた、大ぶりな鶏もも肉は柔らかくジューシー。前回「独酌三四郎」で新子焼きのタレの醍醐味を味わったが、1900(明治33)年に鶏肉の行商を始めたと言う「小野木」だけに、鶏肉のおいしさを存分に味わえる新子焼きだった。

「小野木」の千鳥揚げ

千鳥揚げも「小野木」の名物料理だ。唐揚げ、北海道ではザンギとも呼ばれるが「小野木」では、千鳥揚げと呼ぶ。とにかく大きい。噛むと肉汁があふれ出る。衣も軽く、確かに他店のザンギとは一線を画す味だ。700円という価格設定が、どうにも理解できないほど上質な味だ。ガラだけでなく、肉も一緒に煮込むスープ煮も絶品だった。

「小野木」のスープ煮

今回紹介した旭川の味は、いずれも個性派ぞろい。札幌では味わえない味が揃う。札幌・旭川間は交通の便もいい。北海道を訪れた際には、ぜひ旭川まで足を伸ばして、その味に舌鼓を打ってほしい。

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