給食発祥、我がまちの味「津ぎょうざ」

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それは、ぎょうざと呼ぶにはあまりに大きすぎる。皮の直径は15センチ。中に包まれたあんの重さは約50グラム。三重県津市のご当地グルメ、津ぎょうざは、学校給食にルーツを持つ個性派揚げぎょうざだ。

忘れられない給食の味

忘れられない給食の味
忘れられない給食の味

主に小学校の6年間に食べられる学校給食は、地域の人たちの食習慣に大きな影響を及ぼす。50歳代の人たちにとっては、甘い揚げパンや牛乳に混ぜてコーヒー牛乳味にするミルメークなどに郷愁を覚えることも多いだろう。成長期に食べる給食メニューは、食育の面でも、その後の食習慣に及ぼす影響は大きい。
例えば納豆。多くの人が茨城・水戸をイメージする納豆も、総務省の家計調査によれば、一人あたりの消費量が最も多いのは福島市だ。福島市では、給食メニューとして納豆が親しまれていることがその背景にある。

巨大なぎょうざを揚げる
巨大なぎょうざを揚げる

津市の学校給食で揚げぎょうざが食べられるようになったのは、1985年ごろから。津市教育委員会の栄養士たちによって、子どもたちの栄養・満足感を考えて作られた。

給食だからこその巨大揚げぎょうざ

ぎょうざの皮、特大
ぎょうざの皮、特大

巨大化の背景にあったのは、皮であんを包む手間。限られた時間で、大量の食数を調理する給食では、小さなぎょうざをひとつずつ手包みしていては間に合わない。そこで、直径15センチの皮が登場した。巨大になったぎょうざを焼いてみる。しかし、一般的な蒸し焼きではなかなか中まで火が通らない。そこで、揚げることになったという訳だ。

あんにはタマネギがたっぷり
あんにはタマネギがたっぷり

また、一般のぎょうざは、キャベツや白菜といった葉物野菜をあんに使うことが多いが、津ぎょうざの場合、葉物野菜ではなく、みじん切りにしたタマネギを使う。レシピ立案の際、子どもたちが好んで食べるハンバーグのレシピを取り入れたという。

直径15センチの皮であんを包む
直径15センチの皮であんを包む

現在までに、津市で小学校時代を過ごした人は、6万人以上。1学期に1回、給食で食べる津ぎょうざは、年を重ねるごとに津市民の思い出に刷り込まれ、愛されるようになった。一方で、飲食店や家庭への普及は進まず、小学校を卒業するとなかなか口にできないメニューでもあった。

思い出の味が「まちの顔」に

市内のお店で提供される津ぎょうざ
市内のお店で提供される津ぎょうざ

そんな中、2008年10月に開催された「津まつり」で、市民有志が津ぎょうざを一般販売。すると、2日間で400個を完売。給食で食べた世代だけでなく、初めて津ぎょうざを食べた人たちからも人気を呼んだ。これをきっかけに、津ぎょうざを通じて津市をPRしようと、市内の飲食店にメニュー化を呼びかけたところ、約20店が賛同、同年11月から、給食以外でも食べられるようになった。

コンセプトは「小学生」
コンセプトは「小学生」

2011年には、津市中央学校給食センターが稼働し、学校給食が津市内全域の中学校にまで広まる。同年、津ぎょうざを旗印に津市を元気にしようと、兵庫県姫路市で開催された「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」に出展。知名度は、一挙に全国へと広がる。2014年には「まちおこし・まちづくり」主体の活動を明確にするため、市民活動団体「津ぎょうざ小学校」を創立。小学生に扮したメンバーが津ぎょうざを通じて津市の魅力を発信するパフォーマンスが人気を呼び、メディアへの露出が一気に高まり、知名度もさらに高まった。

お店で、家庭で幅広く食べられる

アレンジメニューの津ぎょうざ丼
アレンジメニューの津ぎょうざ丼

提供店は、2019年10月現在で、30店舗を超えた。ご飯の上に津ぎょうざを乗せた津ぎょうざ丼や、パンで挟んだ津ぎょうざドックなどアレンジメニューも多数登場している。また、津市内のスーパーでは、津ぎょうざ用の直径15センチのぎょうざの皮も販売され、家庭でも津ぎょうざが食べられるようになった。

各地で調理教室も開催
各地で調理教室も開催

津ぎょうざ小学校では、食育の一環として、料理教室も開催。家庭でも気軽に津ぎょうざに親しめるための活動を続けている。

津ぎょうざ小学校

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