あんかけ焼きそばと焼肉だれのスープ割り 北海道あのまち、この味⑥小樽

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北海道のご当地グルメを都市単位で紹介する「北海道あのまち、この味」。約1年ぶりの6回目は札幌に隣接する小樽だ。小樽の発展は、明治政府が札幌を北海道の拠点とすべく、物資の供給基地として港湾を整備したことに始まる。木骨石造の倉庫が次々と建てられ1880(明治13)年には、北海道初の鉄道である官営幌内鉄道も誕生、日本銀行の支店もつくられ、北日本随一の経済都市として発展した。

小樽三角市場で食べるウニイクラ丼

そんな小樽の食文化として欠かせないのが魚介だ。観光地でもある小樽では、観光客に喜ばれる寿司店やリーズナブルな価格で新鮮な魚貝を楽しめる小樽三角市場こと小樽駅前市場が有名だ。ホタテやシャコ、そして北海道の発展の礎となったニシンなど、地元の新鮮な魚貝が味わえる。

「銘酒角打ちセンターたかの」のうに巻き

そんな中でも小樽三角市場では、ウニやイクラ、数の子といった魚卵類の人気が高い。三角市場で、ウニとイクラをたっぷり合わせ盛りにした丼を掻き込めば、それだけで幸せな気分になれる。駅に直結した「銘酒角打ちセンターたかの」のうに巻きも圧巻だ。高級なウニをこんなに山盛りにしてかぶりつけるのは、やはり小樽ならではだ。

八角のみそ焼き

ホタテや鮭、ニシンももちろん美味しいのだが、小樽まで来たからには、できれば、他の地方では食べられない魚を食べてほしい。その典型が八角だ。名前の通り八角形の魚体で、道内でも流通量が少ないため、北海道民にとっても貴重な海産物だ。白身魚の中でもより濃厚な脂が特徴。口に入れると脂が溶け出し、甘みと旨みを存分に感じられる。刺し身やみそ焼きなどで食べると美味しい。

小樽あんかけ焼きそばに酢とからしは不可欠

港湾都市だけに、洋食や中華にも事欠かない。その中でも、小樽を代表する味が、あんかけ焼きそばだ。小樽のあんかけ焼きそばは、1950(昭和25)年ごろに誕生したと言われている。その名を知らしめたのは、1957(昭和32)年に割烹を改装オープンした「中華料理梅月」と言われている。そこから一気に小樽市民のソウルフードの地位を確立、現在では中華料理店だけでなく、多くの飲食店で小樽を代表する味として提供されている。

B-1グランプリでも人気

2012年9月には、前年に発足した小樽あんかけ焼そばPR委員会を継承する形で、長年市民に親しまれたご当地グルメを通して、小樽のまちをPRする市民団体・小樽あんかけ焼そば親衛隊が発足、ご当地グルメの祭典・B-1グランプリにも出展するなどしてその知名度を高めた。

アーケード街の「中華食堂桂苑」

小樽あんかけ焼きそばに欠かせないのが、酢とからしだ。この2つの調味料とは不可分の関係と言っても過言ではない。特に、酢はかければかけるだけうまさが増す。油で炒めた麺が、酢の酸味でさっぱりと食べられるようになる。あんとの相性も抜群だ。

「中華食堂桂苑」のあんかけ焼きそば

提供店が多いだけに、そのスタイルにもバリエーションがあり、食べ歩きが楽しめるのも小樽あんかけ焼きそばの魅力だ。「中華食堂」を名乗る「桂苑」のあんかけ焼きそばは、まさに王道・ストロングスタイルだ。店舗もアーケード街のまさに「小樽のまんなか」に鎮座する。あっさりしょうゆ味のあんかけ焼きそばだ。

「龍鳳」の江頭第10使徒焼きそば

庶民派の代表は「龍鳳」だ。小樽のあんかけ焼きそばは、そもそもどの店でも量が多い。そんな小樽の中でも「龍鳳」は、普通盛りで他店の大盛りに匹敵する超大盛りで知られる。知らずに注文すると大変なことになる。さらにメニューのバリエーションが多く、多彩な味わいのあんかけ焼きそばを堪能することができる。ちなみに、ここで紹介するのは、江頭第10使徒焼きそば。天津に醤あんが掛けられている。

「天蓮華」のエビ入りあんかけ焼きそば(塩味)

対照的に本格中華の味わいなのは、「天蓮華」。ホテルの中華レストランで修業を積んだ店主が2015年に独立開業した。カフェ風のお洒落な店内で食べるあんかけ焼きそばはまさに本格中華の装い。エビ入りあんかけ焼きそば(塩味)は、大きなエビがごろごろ入っていて、ちょっと固めの塩味あんは、ベースになるスープのうまみを存分に味わえる。一方、しょうゆ味あんの豚肉細切りあんかけ焼きそばは、オイスターソースを効かせた本格派。いずれも、ぱりっと焼き目の付いた焼きそばに見事にマッチする。

「天蓮華」の豚肉細切りあんかけ焼きそば

「ニュー三幸本店」は、小樽で最も古いビアホールとして知られる。そもそもビール好きの北海道民、小樽市民にとって、ソウルフードのあんかけ焼きそばは、ビールの友としても不可欠なようだ。ちょっとゆるめのあんが、ビールをさらに美味しくしてくれる。あんかけ焼そばの年間売り上げが1万食を超えるという人気ぶりも、さもありなんだ。

「ニュー三幸本店」のあんかけ焼きそば

そして、忘れてはならないのが、焼肉のシメのスープ。北海道は、ジンギスカンに代表されるように全土で焼肉が愛されている。極寒の雪の中、野外で焼肉を楽しむ北見や、焼くというより煮込んで食べる滝川や名寄のジンギスカンなど、個性的な焼肉には事欠かない。そんな中でも、小樽は焼肉のシメに、焼肉のたれをスープで割って飲み干すことで知られている。

焼肉を食べ終えたらたれに昆布だしを入れてスープに

市内の焼肉店「三四郎」で誕生したと言われるスープ割り。多くの店で、北海道らしく昆布で取っただしを肉を食べ終わったたれに入れてシメとする。つけ麺などではポピュラーなスープ割りだが、焼肉のたれとなると、さすがに小樽くらいだろう。観光的には、小樽と言えば、寿司のイメージだが、残念ながら「観光地値段」の店も少なくない。地元民にとって親しみのある「地元の味」は、実はあんかけ焼きそばや焼肉のたれのスープ割りだったりする。せっかく現地に足を運んだからには、寿司ももちろんいいが、地元民ならではの味もぜひ味わってほしい。

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