全国に数多く点在するご当地ラーメン。徳島ラーメンは、1990年代に関東でも人気が広がったラーメンだ。徳島を創業地とする大手ハムメーカー、ニッポンハムの影響から豚骨ラーメンになったと言われているが、ひとくちに徳島ラーメンといっても、実は発祥地によって3種類に分類される。もっとも知られているのは茶系と呼ばれる県庁所在地・徳島発祥のラーメン。そして白系は小松島発祥、さらに黄系は鳴門発祥だ。
まずは、関東でもその名が知られるようになったきっかけともなった茶系から。豚骨スープにこいくちしょうゆやたまりしょうゆで味付けした茶色い、甘辛いスープが特徴。チャーシューではなく、甘辛く煮た豚バラ肉に生卵を添えて、さらにはライス付きで食べることが多いラーメンだ。
代表店は、徳島中心市街地にある「いのたに」。99年から翌年にかけて新横浜ラーメン博物館からの要請で出展、全国に徳島ラーメンを知らしめるきっかけになった店だ。だしは豚骨や野菜でとる。しかし、しょうゆを使って調味するため、九州ラーメンのように白濁ではなく、けっこう濃い茶色になる。やや甘め、味も結構強めだが、くせになるうまさだ。
麺は自家製のストレート麺。縮れていないので、するすると入って行く。小麦の味もしっかり出ている。ストレート麺だとスープが絡みにくいが、スープの味が濃いめなので、勢いよくすすっても、麺がスープの味を伴ってくれる。
トッピングは定番のメンマに、少量のモヤシ、そして甘辛く味付けされた豚バラ肉だ。薬味のネギも散らす。この豚バラ肉がまたしっかり味付けされている。オプションだが、生卵は欠かせない。「いのたに」の卵はヨード卵だ。黄身が非常にしっかりしている。スープの中で黄身に箸を入れても容易にスープに溶け出さない。卵がしっかり味を保っている。
この味の濃い豚肉と生卵が白いご飯にも良く合うのだ。「いのたに」のラーメンと言えば、ご飯を添えて食べるのが定番だ。そして、白いご飯を口に入れ、やはり味の濃いスープをすすると、ご飯を口に運ぶ箸が止まらなくなる。
白系は、徳島市の南隣にある小松島市を発祥とする徳島ラーメンだ。小松島中華とも呼ばれる。代表店は「岡本中華」。戦後間もない1951年に、小松島港近くの屋台で創業した。だしはやはり豚骨ベース。白っぽいスープだが、九州の塩豚骨とは違い、茶系同様、しょうゆ豚骨だ。うすくちしょうゆや白しょうゆを使うため、茶色にはならず、白っぽいままだという。非常にコクがある一方で、けっこうあっさり。しつこくはない。
麺は茶系同様ストレートだ。こちらもコクのあるスープが、味が絡みにくいストレート麺にインパクトを加えている。
トッピングはやはりメンマと少量のモヤシ。チャーシューは国産ポークにこだわる。バラ肉で「いのたに」とは違い、ブロックで調理したものを切ってのせる。けっこう脂身もあり、コクのあるスープとともに、全体的に濃厚な味わいを演出している。
最後は黄系。徳島の玄関口・鳴門市発祥の徳島ラーメンだ。代表店は「らーめん三八」。徳島ラーメン最大の特徴であるしょうゆ豚骨がベースだが、鶏ガラや野菜などもだしに使い、うすくちしょうゆで味を調えるため、薄い黄金色のスープに仕上がる。これが「黄系」の語源だ。
「らーめん三八」では、創業者である先々代が、豚骨に鶏ガラを加えたことから、このスープが誕生したという。このオリジナルのスープが、現在も引き継がれ、店舗で提供されている。
麺はやはりストレート。鶏ガラだしが効いているため、茶系や白系に比べてあっさり感が強い。モヤシはやや多めに感じた。あまり茹ですぎず、シャキシャキとした食感が残っていた。それもまた、あっさり感を高めている。
チャーシューはバラとロースの2種類。チャーシューメンに当たる「肉入り」では、チャーシューの肉種を選んで注文できる。バラのみ、ロースのみに加え、バラとロースの合わせ盛りである「ハーフ」も注文可能だ。あっさり味のスープだけに、肉でパンチを加えるのもいいだろう。
全国的知名度になってからは、地元以外でも徳島ラーメンが食べられるようになった。東京でも、徳島ラーメンを看板に掲げる店は結構ある。しかし、その多くが茶系だ。茶系に加え、白系、黄系も味わえるのは、やはり徳島ならではだ。
幸いにして徳島を中心にして鳴門も小松島も車で30分ほど。胃袋さえ許せば、一度に三色を食べきることもできる。しかも、三色とも量はさほど多くない。普通盛り、麺1玉を「小盛り」と称する店も多い。基本はランチ営業だが、徳島を訪れた際は、せひ「三色」をすべて制覇したいものだ。