魚介スープの極み 「石巻サバだしラーメン」

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魚介らしいやさしい味わい深いサバだしのスープ、地元産の小麦にサバの焼成骨カルシウムを配合した麺…。脂の強さや臭みなどのくせを排し、サバのうまみのみを引き出した石巻サバだしラーメンのスープの味は、一度食べたらやみつきになる。

伝統のサバだしを活用

宮城県石巻市の飯野川地区は、平成の大合併で新たな石巻市に併合された旧河北町の中心市街地。新北上川が大きく曲がって太平洋に注ぐ、その左岸に位置し、かつては水運で栄えた。石巻の中心市街地が、東日本大震災の水害でその姿を大きく変えた一方、昔ながらの昭和の町並みが残る。飯野川地区では、伝統的にサバだしを使った煮物や汁が好まれており、そんなサバだしに地元大学生が着目、その味を生かしたご当地ラーメンを作り上げた。

石巻専修大のキャンパス

石巻サバだしラーメンは、地元の石巻専修大学のゼミの一環として、地域資源を活用した新商品開発の取り組みとして誕生した。学生たちが地域の飲食店などを調査、飯野川地区の飲食店やまちづくり団体などと連携しながら完成させた。2011年11月から飯野川商店街などの5店舗での提供が始まり、13年9月には家庭向けの商品も発売された。

飯野川の「きかく」

まずは、お店のサバだしラーメンをチェックしよう。サバだしラーメン提供店の中でも随一の人気・知名度を誇るのが「きかく」だ。人気テレビドラマ「孤独のグルメ」にも登場したので、ご存じの方も多いだろう。昭和の雰囲気漂う飯野川の商店街の中でも、ひときわレトロな空気を放つ店構えが特徴的だ。

「きかく」のサバだしラーメン

同店では創業時からサバぶしを使っているとのことで、石巻専修大学のプロジェクトにも当初から参画した。三陸産のサバの頭と中骨から身を取り、水洗いし、時間をかけて乾燥させるなど、様々な工夫でサバのくせを取り除き、うまみだけを抽出する。このスープが感動的な味わいなのだ。あっさりしているのに味わい深く、淡い味なのに、確実に舌でうまみを感じ取れる。

澄んだスープに揚げネギ

淡泊な味だが、そこにフライドガーリックや揚げネギなどが加わることで、サバのうまみを生かしながらコクも加わる。単なるすまし汁ではない。ラーメンスープであることがしっかりと主張されている。

揚げたつみれがのる

具はチャーシューとメンマ、そして揚げつみれだ。スープがあっさりしている一方、脂身のあるチャーシューや揚げたつみれが加わることによって「ラーメン感」が増してくる。

ソースかつ丼も人気

ちなみに同店では、ソースかつ丼も人気メニューだ。このかつ丼にもサバだしが使われており、サバだしラーメンとのセットメニューも用意されている。「孤独のグルメ」で食べたのも、サバだしラーメンとソースかつ丼のセットだ。

道の駅「上品の郷」内にある「こばやし」

「きかく」と並び、開発当初からプロジェクトに参画したのが「こばやし」だ。やはり飯野川の商店街に店を構えるが、現在は道の駅「上品の郷」内での営業になっている。道の駅だけに駐車場も広く、場所も分かりやすい。訪ねた日も多くの人たちがサバだしラーメンに舌鼓を打っていた。

温かいサバだしラーメン

ちょうど真夏だったこともあり、冷やしもあったので、冷温食べ比べてみることにした。まずは、通常の温かいサバだしラーメンから。石巻専修大学が開発したレシピをベースにしていることから、大筋の味は「きかく」同様だ。ただし、細かく店ならではのアレンジがあり、その違いを感じ取れる。

あっさり感が強い

最大の違いは、フライドガーリックや揚げネギが入っていない点。そのため、あっさり感がひときわ強くなる。具にのりやかまぼこが加わっている点もあっさり感の演出に手を貸している。ラーメンとしてはややパンチに欠ける観はあるが、サバだしならではのあっさりしたうまみを堪能したい向きには「きかく」よりおすすめかもしれない。

冷やしサバだしラーメン

冷やしサバだしラーメンは、個人的な感想だが、味や香りが立ちにくい冷やしだからだろうか、やや濃いめの味付けになっていた。脂を排することで弱くなった味のパンチが、「ちょっと濃いめ」の味付けで見事にカバーされている。冷水で締めた麺の心地よいコシも魅力的だ。揚げつみれなど定番の具に加え、もやしやゆで卵も追加されている。とくにもやしの歯ごたえがいい。温なら「きかく」、冷なら「こばやし」を個人的にはおすすめしたい。

家庭向けのサバだしラーメン

実は、石巻サバだしラーメンで最も気に入っているのは、家庭向けの商品だ。石巻専修大学での開発にも参画した地元製麺所「島金商店」の箱入りサバだしラーメン。お店の味もそうだったが、開発型でもあり、麺やスープのベースとなるレシピは決まっている。なので、この箱入りのラーメンも基本の味は共通だ。

サバの切り身付き

この箱入りラーメンの最大の特徴が、塩焼きしたサバの切り身が同封されていること。この塩焼きサバがとてもおいしい。そして、スープにベストマッチなのだ。お店の揚げつみれに比べて格段にサバだしラーメンとの相性がいい。さらに、濃縮されたスープの他に魚粉、オイルも同封されており、これがあっさりしがちなサバだしラーメンに適度なパンチを加えている。注意したいのは、同じ「島金商店」の製品でも、プラスチックパック入りのものにはサバの切り身が付かないこと。購入の際は、紙箱入りを要確認だ。

「島金商店」の紙箱入りサバだしラーメン

開発型のご当地グルメの中には、地産地消にこだわる余り、コストパフォーマンスが悪かったり、コンセプトそのものに「無理矢理観」を感じてしまうものもある。しかし、石巻サバだしラーメンは、飯野川伝統の食文化であるサバだしをベースに、多くの人の努力が積み重なって完成した。石巻を訪れた際には、ぜひ味わってみてほしい。

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