焼いてもおこわでも 「笠間の栗」

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秋を代表する味覚のひとつ、栗。農林水産省が発表した2021年の作物統計調査によると、栗の都道府県別収穫量では、茨城県がシェア24%と、2位熊本県の14%を大きく上回り日本一を誇る。そんな茨城県の栗生産地の中でも、特に知名度が高いのが笠間市だ。

新栗を求めて多くの人が集まった

2022年10月1~2日、笠間市内にある笠間芸術の森公園イベント広場で「第16回かさま新栗まつり」が開催された。毎年、栗のシーズンに入るところで開催されてきたイベントだが、過去2回にわたってコロナウイルス感染拡大の影響で中止になっていた。3年ぶりの開催で、当日は多くの来場者でごった返した。

専用の機械で焼く

栗には様々な調理法があるが、笠間で最も人気が高いのは焼き栗だ。ただ網で焼くのとは訳が違う。専用の機械で焼いた栗がとても美味しい。「膨化食品(ぼうかしょくひん)」と呼ばれる、ポン菓子など原料を膨張させて作るお菓子がある。この製造機を使って栗を焼くと抜群に美味しくなるのだ。

はぜた焼き栗

密封された筒の中で栗を加熱すると、栗の中の水分が水蒸気となり、膨らんで硬い皮がはぜる。栗自身が持つ水分で蒸すことで、甘味が逃げずに芯までホクホクに仕上がる。さらに、加熱の過程で表面が高温になることから香ばしさも加わる。会場内でも、焼き栗機を置くテントの前にはひときわ長い行列ができていた。

栗おこわ

もう一つの定番が栗おこわだ。生栗の皮を剥き、餅米と一緒に炊き込む。栗料理の定番中の定番だ。こちらも焼き栗に匹敵する長い行列ができていた。

「プティエテ」のモンブラン

そして、栗と言えばスイーツ。その中でも、モンブランは代表的な栗スイーツだろう。今回会場で食べたのは、荒川沖のパティスリー「プティエテ」のモンブラン。栗のクリームが非常に細いのが特徴だ。甘さを抑えたクリームを細く細く絞り出すことで、繊細な味わい、舌触りを作り上げていた。

古民家そのままの「雪みるく」

会場内には、笠間市内の人気かき氷店「雪みるく」も出店していた。お店は田園風景の中にぽつんと建つ古民家。看板もない、知る人ぞ知る名店だ。フルーツ店でもあるため、季節のフルーツを生かしたかき氷で人気がある。予約は当然、予約すらできない日、時間帯も多い。この日も大行列で、とても食べられる雰囲気ではなかった。

栗のかき氷

店のブログを見ると、モンブランやマロンショコラなど、笠間の栗を使ったかき氷が揃う。以前食べた際は、シンプルな新栗のかき氷だった。ゆで栗がトッピングされているが、氷の中にも裏ごしした栗が隠されていた。いずれも栗そのものが持つ甘さを生かした、ほのかな甘さだった。酒飲みをもうならせるような味わいだ。

笠間じゅうに栗があふれる

会場を離れて、笠間稲荷を参拝してから「道の駅かさま」へ向かった。笠間稲荷の参道では、やはり焼き栗を売る店に長蛇の列ができていた。会場内のあまりの行列の長さに、会場を離れて栗を探しに出た人も多いようだ。

「道の駅かさま」は車止めも栗の形

というわけで、「道の駅かさま」にも駐車場入り待ちの長い渋滞ができていた。昨年9月の新規オープン直後は連日大渋滞だったが、さすがに今年に入って落ち着いていた。しかし、夏頃から再び人出が激しくなっているという。この日も多くの来訪者でごった返していた。

生栗も販売

確かにモンブランなどには長い行列ができていたが、新栗まつり会場よりは比較的落ち着いていた。地元産品の直売所である「みどりの風」には、生栗や栗菓子も豊富に揃っていた。

ほくほくの栗がたっぷり

ここなら落ち着いて食事ができそうだ。フードコート奥にあるレストラン「常陸乃国がぐや姫」で栗の釜飯をいただいた。大ぶりな栗がごろごろ釜の中に入っている。薄く塩味のついたご飯と優しい甘みの栗が見事なハーモニーを奏でる。砂糖などの甘みを加えていない栗本来が持つやさしい甘みと、栗ならではほくほく感が味わえる。

けんちん汁付き

添えられた椀は味噌汁ではなく、けんちん汁だ。具だくさんのけんちん汁で、美味しく味わいながら野菜もたっぷり食べられる。茨城というと、以前にも紹介した、つけけんちんそばが名物。常陸秋そばを猪口のつゆではなく、椀のけんちん汁で浸して食べるのが茨城流。茨城の人たちは、けんちん汁好きなのだ。

道の駅のロゴが入った限定すいーとまろん

「道の駅かさま」を訪れた際には、ぜひとも笠間すいーとまろんを買って帰ることをオススメする。これまで紹介したように、笠間市は日本を代表する高品質な栗の産地ではあるが、実は収穫した栗の大部分は他県に出荷されている。そこで、地元の栗を美味しく味わってもらおうと2013年に誕生したのが、すいーとまろんだ。ペースト状にした栗にブランデーや砂糖を練り込み、ひとくちサイズに焼き上げた。

栗ペーストにブランデーも

ネット通販で売り切れになるなど人気商品だが、「道の駅かさま」では、このすいーとまろんをさらにグレードアップさせたプレミアムバージョンを販売している。「道の駅かさま」限定商品だ。コロナも落ち着いてきて、近場のレジャーは復活の兆しを見せている。ぜひ、笠間に栗を味わいに出かけてほしい。その際は、「道の駅かさま」のすいーとまろんは必食だ。
 

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