「山うに」の正体とは? 大分・日田の鶏肉食②

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前回、「食事の店そのだ」の軍鶏料理コースを紹介するだけでかなりの字数になってしまった。引き続き、日田の鶏肉食についてご紹介したい。

「泰勝軒」の地どりのタタキ

日田と言えば、日田やきそばを忘れるわけにはいかない。ラードでカリカリになるまで焼き固めた中華麺を改めてバラして作る、日田ならではの焼きそばだ。軍鶏料理コースの翌日に訪れたのは、「泰勝軒」。日田やきそばに加え、地どりのタタキが看板メニューのお店だ。

泰勝軒、看板の半分は地どりのタタキ

日田やきそばの人気店の一つで、開店と同時に多くの客が訪れていた。日田やきそばの回でも紹介したが、日田やきそばは、ラーメン店の1メニュー。「泰勝軒」でも、ラーメンとやきそばの注文が拮抗する。そしてラーメン、やきそばと並んで人気が高いのが、地どりのタタキだ。店の看板も、面積の半分を地どりのタタキが占める。

日田やきそばを供に従え地どりのタタキを味わう

日田やきそばのサイドメニューとして地どりのタタキを注文する。いやはや、これまた量がスゴい。4人で1皿注文したが、食べきれないほどの量だった。夜なら、これだけで飲めるな、と思うほど。やはり胸肉ともも肉が一緒盛りにされていた。新鮮な地どりは、歯ごたえも良く、食感や味の違いを楽しみながら食べられる。単に量を食べると言うよりも、日田の人たちは、おいしく鶏肉を食べることが骨身に染みついているのだなと思った。

日田駅のかつ丼人気店「東華ファミリー」

日田のご当地グルメと言えば、やはり日田やきそばが全国的に有名だが、実は地元の人々はけっこうかつ丼好きだ。ソウルフードと呼べるほどにかつ丼をよく食べるのだそうだ。かつ丼はもちろん豚肉だが、そこにも日田の鶏肉食の文化が顔を出す。かつを煮るだしが鶏だしなのだ。

「東華ファミリー」のかつ丼

東京のそば屋にルーツを持つといわれる卵とじのかつ丼は、そばに使うカツオだしでかつを煮るのが一般的。しかし、日田「東華ファミリー」では、鶏のだしでかつを煮る。ボリューム満点だが、たっぷりのかつの割りには、他の地域ではおなじみのネギの姿がないのも、東京のかつ丼との違いだ。

とうかのGOGOかつどん

ボリューム満点のかつ丼は「東華ファミリー」では人気メニューだ。ロース、ひれに加えてエビかつ丼まである。これだけ鶏肉好きの日田でチキンかつ丼はないのかと探してみると、それは「とうかのGOGOかつどん」というメニュー名だった。

チキンかつをレモンでさっぱりと

日田のかつ丼好きが多く集う同店にあって、「ヤングからオールドまで幅広い層にアピールできるもので気軽に受け入れられるメニューはできないものか」とのコンセプトでつくられたという。だしはもちろん、かつもチキンにして、レモンを添えてさっぱりと食べられるのが特徴だ。

スーパーの店頭にももみじが

市内のスーパーも確認して歩いた。精肉売り場では、豚肉や牛肉の影が薄い。関東に比べ、鶏肉の売り場面積が圧倒的に広い。もちろん、もみじをはじめ、鶏の内臓も数多く取りそろえる。

「鶏」を看板に掲げる駅前の「みくま」

JR日田駅前には、鶏肉専門のお店もあった。「みくま」のご主人に話を聞く。やはり山に囲まれた特有の地形と古くから栄え人口が多かったことが、鶏肉を好んで食べる背景にあるのだろうとのことだった。一方で、コールドチェーンの発達から、かつてほど鶏肉を好んで食べる傾向は薄れつつあるという。

「みくま」では様々な部位の鶏肉をそろえる

現在では福岡空港から九州道・大分道経由で直通バスが走るなど、大分県にありながら、福岡経済圏にあるといっていい日田市。豚や牛といった肉はもちろん、海の魚も鮮度を保ったままおいしく食べられるようになっている。そういう意味では「鶏肉依存」は、かつてほど切迫したものではなくなっているようだ。

日田の「山うに」

とはいえ、長年にわたって鶏肉を食べてきたからこそ根付いた数々の食べ方は、日田特有の文化であることは間違いない。以前、日田市内で「山うに」を食べたことがある。食卓に出された皿は確かにうにっぽい見た目だった。それを九州ならではの甘いしょうゆをかけて、海苔で巻いて食べる。

海苔で巻いて食べる

口に入れるとそれは生の鶏レバーだった。「山うに」という呼び方も含めて、それは紛れもなく、日田ならではの食文化だろう。

「みくま」の鶏皮の酢の物、タマネギと和えて

帰り際、案内していただいた地元の方に「みくま」の鶏皮の酢の物をお土産にいただいた。東京に帰って、薄切りにスライスしたタマネギと和えて食べた。もちろん東京でも鶏皮の酢の物は食べるが、そこには「鶏肉食の聖地」らしい味わいを感じた。

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