和風のつゆで食べるやきそば 黒石つゆやきそば

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富士宮や横手など、全国各地に点在するご当地やきそば。富士宮なら、歯ごたえの強い蒸し麺と具の肉かす、最後にかけるだし粉、横手なら目玉焼き、挽肉、付け合わせは紅ショウガでなく福神漬けなど、各地各様の特色がある。

スープに入ったやきそば
スープに入ったやきそば

そんなご当地やきそばの中でも特にユニークなのが、青森県黒石市の黒石つゆやきそばだ。ソースやきそばに和風だしを注いでラーメンのように食べる。

やきそばのまち黒石

津軽地方の中心都市・弘前に隣接する黒石市は、こみせ通りと黒石よされなどで知られる。雪深い黒石では、中心市街地の店頭に「こみせ」と呼ばれる雪よけのひさしが並ぶ。新潟などでは「雁木」と呼ばれる雪国ならでは建築で、商店街の端から端まで「こみせ」がつながり、積雪時にも雪に足を取られず歩けるよう工夫されている。

B-1グランプリでもよされを再現
B-1グランプリでもよされを再現

黒石よされは、毎年お盆時期に開催される盆踊りの一種で、一般的な櫓を中心に周回して踊る「廻り踊り」に対し、通りを踊りながら歩く「流し踊り」が特徴。徳島県の阿波おどり、岐阜県の郡上おどりとともに、日本三大流し踊りに数えられる。

黒石やきそばの太平麺
黒石やきそばの太平麺

そんな黒石では、古くからやきそばが好んで食べられている。太平麺という、きしめんを細くしたような平たい麺が特徴で、具と共に炒め、ソースで味付けして食べる。まちなかにやきそばを提供する店が多いのはもちろんだが、店内ではなく持ち帰って食べることも多い。

黒石の「オードブル」
黒石の「オードブル」

黒石のやきそば店の壁に貼られたメニューには「オードブル」の文字が。つまみなどの料理を盛り合わせたものかと思ったところ、よく見かけるオードブル用の底が赤く丸いプラスチック容器にやきそばをいっぱい詰めて持ち帰るのだとか。それほど、黒石市民はやきそば好きだ。

冷えたやきそばを温かいつゆで

つくり置いたやきそばの量り売りも行われていた。子供たちは小銭を握りしめてやきそば屋へ行き、つくり置いてあったやきそばをビニール袋に入れたり新聞紙で包んだりして持ち帰り、「買い食い」をしたのだという。

ビニール袋で黒石やきそばをお持ち帰り
ビニール袋で黒石やきそばをお持ち帰り

そんなつくり置きのやきそばは、時間がたつと冷えてしまう。また、麺がくっついてダマになってしまう。とはいえ、やきそば好きの黒石市民としては、捨ててしまうのは忍びない。そこで、温かいそばの汁をかけて、暖めるとともに麺をほぐして食べた。それが、つゆやきそばの始まりだったのだとか。

やきそばに和風のつゆをかける
やきそばに和風のつゆをかける

2008年には、福岡県久留米市で開催された第3回B-1グランプリへ、やきそばのまち黒石会(当時)が出展、このユニークなやきそばを提供、青森県外でのつゆやきそばの知名度が一気に高まった。東北新幹線の新青森駅への開通時には、駅構内で黒石つゆやきそばが食べられるお店ができる(現在は閉店)など、青森県を代表するご当地グルメの一つになっている。

地元では食べ歩きも

では実際に黒石へ行ってつゆやきそばを食べてみよう。

つゆに入っていない黒石やきそばも食べてみよう
つゆに入っていない黒石やきそばも食べてみよう

黒石つゆやきそばを知るためにはまず、黒石やきそばを食べる必要があるだろう。肉やキャベツが入ったやきそばはもいいが、麺を炒めてソースで味を付けただけのシンプルなやきそばも魅力的だ。ソースを麺にしっかり染み込ませた味わいが黒石やきそばだ。

オーソドックスな黒石つゆやきそばは揚げ玉がのった「たぬき風」
オーソドックスな黒石つゆやきそばは揚げ玉がのった「たぬき風」

イベントなどで提供される、最もオーソドックスな黒石つゆやきそばは、肉などの具と一緒に炒め、ソースで味付けしたやきそばを丼に盛り、和風のスープをかける。仕上げには刻みネギと揚げ玉をトッピング。いわば「たぬきそば」のスタイルだ。揚げ玉のこくがやきそばとつゆのマリアージュを引き立てる。

東京・飯田橋の「あおもり北彩館」などでは家庭用のパックを購入できる
東京・飯田橋の「あおもり北彩館」などでは家庭用のパックを購入できる

つゆにソース味が染み出さないのかと思うのだが、意外とつゆにはソースの味は移らない。自宅で黒石つゆやきそばを作るなら、炒めたソースやきそばを一度レンジでチンしてからつゆをかけるといいという。ソースが麺にしっかり染み込むのだそうだ。

海老天がのった「御幸」の黒石つゆやきそば
海老天がのった「御幸」の黒石つゆやきそば

「御幸」では、揚げ玉が海老天に代わる。半熟卵も加わり、ちょっと豪華なつゆやきそばになる。

小海老の天ぷらがのった「蔵よし」の黒石つゆやきそば
小海老の天ぷらがのった「蔵よし」の黒石つゆやきそば

「蔵よし」では、小海老の天ぷらがのっていた。いずれにせよ、天ぷらの衣がつゆやきそばにはよく合うということだ。

黒石市内にはやきそば、つゆやきそばを提供する店が多数あり、それぞれ味付けにこだわる。胃袋が許す限り、食べ比べてみるといいだろう。

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