ねっとりサトイモを味わう 「北上コロッケ」

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芋煮というと山形県のイメージが強いが、大鍋を使って野外でサトイモを調理するのは、東北地方で広く行われている行事だ。秋田県や岩手県ではいもの子汁とも呼ばれている。食材であるサトイモの生産も東北各地で行われている。

二子サトイモの親イモ

岩手県南部・北上市二子町で生産されている二子サトイモは、全国的にも珍しい赤茎(あかから)種のサトイモで、古くから種イモとともにその栽培技術が承継され、地元でも特に品質の高いサトイモとして知られている。そのまろやかな食感や粘り、コク、舌触りは、定番のいもの子汁だけでなく、様々な料理に使われている。

イベント時の北上コロッケ ねっとりサトイモが特徴

北上市のご当地グルメとして人気の高い北上コロッケも、ジャガイモではなく、この二子サトイモを使っている。二子サトイモをベースに、豊かな自然の中で育った地元産黒毛和牛、ビタミンB1やミネラルが豊富な白ゆりポークを加え、さらにアクセントとして地元で盛んに生産されているアスパラガスが入る。

下ごしらえした「枕流亭」の親イモ

そもそもは、食材として使いにくい種イモの活用としてスタートしたという。サトイモの栽培では、前年に収穫したサトイモを一部種イモとして保存しておき、春に畑に植え、秋に収穫する。一般には種イモにできた子イモや孫イモを食用として出荷する。種イモももちろん食べることはできるが、小イモができて硬くなった部分などが多く、食材としては使いにくいという。その種イモから食べにくい部分をそぎ取り、茹でてつぶしたことが、北上コロッケの始まりという。そこに黒毛和牛、白ゆりポーク、アスパラガスというやはり地元産食材が合わさり誕生した。

B-1グランプリにも出展

2010年からは、北上コロッケを通じて地元の魅力を発信するまちおこし団体・北上コロッケまるっとLabが、ご当地グルメでまちおこしの祭典・B-1グランプリに出展。その味を全国にアピール、知名度が上がった。では実際に、北上市内で北上コロッケを食べてみよう。

展勝地の桜並木

北上市といえば桜。北上川畔の北上展勝地(北上市立公園展勝地)は、さくらの名所100選やみちのく3大桜の名所に数えられるなど、東北有数の桜の名所として知られる。2キロにもわたる桜並木の他、公園内には約150種、1万本にも及ぶ様々な桜が咲き誇る。そんな北上一の名所の、川を挟んだ対岸に位置するのが「枕流亭(ちんりゅうてい)」だ。

「枕流亭」の北上コロッケ

北上コロッケには、地元の調理師会が定めたレシピがあるが、今回訪れた3店は、いずれもお店ならではのひと工夫が凝らされていた。「枕流亭」は、3店の中では、もっともイモそのものの持ち味が味わえる。コロッケというとソースをかけて食べるのが定番だが、「枕流亭」の北上コロッケは、ぜひしょうゆで味わいたい。

イモそのものの持ち味が魅力

種イモを減量に、二子サトイモならではの持ち味を生かしているので、より和風のしょうゆがベストマッチだ。ご主人の岡島親吾さんは、イベントなどで北上コロッケを揚げることが多い。その経験も生かし、米粉を入れ、冷めてもおいしさが損なわれないよう工夫を凝らす。お店で食べるのもいいが、テイクアウトもおすすめだ。

「きたかみ風土」の北上コロッケ

一方、洋風の味わいが特徴なのは「きたかみ風土」。ホワイトソースが入ったクリーミーな仕上がりになっている。今回はテイクアウトでいただいたが、しっかりとしたホワイトソースの味わいで、ソースもトマトソースもしょうゆも使わずそのまま食べきってしまった。なめらかな舌触りもあり、イモのコロッケとクリームコロッケのいいとこ取りといったイメージだった。

ホワイトソースのクリーミーな味わい

市内の大型ショッピングセンター「パル」内に店を構えるのは「喜乃字」。こちらの北上コロッケは、親イモに加え、地元でズボ芋と呼ばれる小ぶりの孫イモも使用する。今回食べた3店の北上コロッケの中では最もボリュームがあった。添えられた千切りキャベツも山盛りで、たっぷり食べたい人にはおすすめだ。

「喜乃字」の北上コロッケ定食

「きたかみ風土」ほどではないが、食感はなめらか。一方で、パン粉が粗めで、非常にクリスピーな食感も併せ持つ。とんかつ屋のコロッケのイメージだ。この衣にはやはりソースがベストマッチだ。そもそも、ソースが添えられて配膳された。

クリスピーな衣にソースがぴったり

個人的な感想だが、「枕流亭」はビールで、「きたかみ風土」はワインで、そして「喜乃字」は炊きたてのご飯と合わせて食べたいと感じた。

ブランドサトイモを味わう

コロッケというと庶民派の惣菜で、小腹を空かせた学生が、学校近くの肉屋で揚げたてにソースをかけてかぶりつく…そんなイメージが強い。安くて手に入りやすいジャガイモだからこそなのだが、北上コロッケはサトイモの、しかもブランドサトイモのコロッケだ。ぜひ、そのおいしさをじっくり堪能できる食べ方で味わってほしい。

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