白いご飯が止まらない 塩川鳥モツ

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もつ、もつ鍋、もつ煮といえば、庶民の手軽なスタミナ食だ。鳥獣の内臓肉は、かつてはほうるもん=捨てられるものからホルモンとも呼ばれ、安価で栄養価が高いことから、全国の額に汗して働く人々から愛されてきた。筑豊の炭坑など西日本では牛のもつが、東京の下町など東日本では豚のもつがもっぱら食べられてきた。甲府では、そば屋のメニューとして鳥もつ煮も長年にわたって愛されている。

鳥皮を煮込んだ塩川鳥モツ
鳥皮を煮込んだ塩川鳥モツ

そんな各地のご当地もつ料理の中で、ひときわユニークなのが福島県喜多方市塩川地区の塩川鳥モツだ。もつといえば内臓肉のイメージだが、塩川では鳥モツといえば、鳥皮を煮込んだ料理のことで、町内の食堂の多くで定番メニューになっている。そのため、店によっては「鳥皮モツ」とも呼ばれている。

塩川鳥モツの人気店「アタミ食堂」
塩川鳥モツの人気店「アタミ食堂」

塩川は、喜多方と会津若松の中間に位置する、現在は喜多方市の一部となっている地区だ。かつて三方を阿賀川をはじめとする川に囲まれていることから水運で栄えた地域だ。同地の鳥モツが広く知られるようになったのは、2005年にJR東日本が実施した「あいづデスティネーションキャンペーン」がきっかけ。このキャンペーンで、塩川鳥もつがフォーカスされ、各方面から注目を集めた。

小モツ定食と小ラーメンのセット
小モツ定食と小ラーメンのセット

地区の鳥モツを扱う食堂の中でもひときわ人気が高いのが「アタミ食堂」だ。外観は、いかにも地元の食堂。開店早々に店を訪れると、地元のおじいちゃんだろうか、注文もせずに出てきたラーメンをひとりですすっていた。メニューは豊富で、喜多方市内らしくラーメンや会津名物ソースカツ丼などもそろえる。せっかくなので、小モツ定食と小ラーメンのセット(1000円)を注文する。

白いごはんにぴったり
白いごはんにぴったり

もつ煮というと酒のつまみのイメージが強いが、塩川の鳥モツは、白いごはんにもぴったりなのだという。確かにどこの食堂でも定食が用意されている。

出てきた鳥モツはいい照りをしている。薬味の刻みネギはまとうが、ストイックなまでに鳥皮オンリーだ。甘辛いの味は濃くもなく薄くもなく。皮の表面の焦げ目も香ばしい。皿の底には、鳥皮から出た脂が浮いている。この味が、絶妙に白いご飯に合うのだ。しょっぱすぎるわけでも、脂っこすぎるわけでもない。ギリギリのポイントの味付けで、それがまたご飯を口の中へと誘う。

中毒性を持った味わい
中毒性を持った味わい

思わず、皿の底にたまったたれと脂を、白いご飯の上にのせた鳥皮の、そのさらに上からかけてしまった。非常に中毒性を持った味わいだ。

テイクアウト用の鳥モツ
テイクアウト用の鳥モツ

テイクアウト用の鳥モツも用意されている。真空パック入りは250グラムのみ。熱々の鳥皮モツをそのまま容器に入れる場合は500グラム単位でも購入できる。中毒性を感じる味に、食後、真空を3パック注文したところ、この日は持ち帰りの客が他にも何人もいたようで、真空パックが足りなくなってしまい、あわてて店に隣接する作業場で真空パックづくりが始まった。

「丸市食堂」鳥モツは看板メニュー
「丸市食堂」鳥モツは看板メニュー

せっかくなので、もう1軒、別の店の味も確かめよう。「丸市食堂」では会津地鶏の鳥皮を使う。高級食材のためだろう、盛りは「アタミ食堂」の小モツとあまり変わらないサイズ。隠し味にはにんにくを使っているとのことだが、にんにく臭は強くない。くせが少ない鳥モツだ。

地鶏ならではの歯ごたえが魅力
地鶏ならではの歯ごたえが魅力

一方で、地鶏だけに歯ごたえがすごい。なかなか噛み切れないほど。とはいえ、コリコリとしたその食感は「アタミ食堂」の鳥もつとはまた違った魅力を持つ。何より定食の白いご飯がおいしい。酒のつまみもいいが、中毒的にご飯に合う味なので、ご飯がおいしいとうれしい。

喜多方駅前の「桜井食堂」
喜多方駅前の「桜井食堂」

この鳥皮を使った鳥モツ、食べられるのは塩川地区だけではない。今は同じ市となった喜多方市中心部のお店でも提供する店は多い。JR磐越西線喜多方駅前にある、明治37年創業の喜多方ラーメンの老舗「桜井食堂」でも鳥モツは提供されている。

喜多方「桜井食堂」の鳥モツ
喜多方「桜井食堂」の鳥モツ

塩川の鳥モツ、もともとは、鳥皮以外のもつも入った、いわゆるもつ煮だったそうだ。「桜井食堂」の鳥モツはそんないにしえの塩川鳥モツをほうふつさせるスタイルだ。鳥皮に加え、レバーも入っている。そしてモヤシも。このモヤシが実にいい塩梅なのだ。

鳥皮、レバー、モヤシが絶妙のコンビネーション
鳥皮、レバー、モヤシが絶妙のコンビネーション

味付けには、提供直前にすりおろしたにんにくを加えるそうで、にんにく特有の風味に加え、生にんにく特有の辛みが生かされている。ひとくち食べた際にはラー油を使っているかと思ったほどの辛みだったが、お店の方にうかがったところ「ニンニクの辛み」とのこと。塩川の2店は白いご飯に最適だったが、この味は断然ビールだ。食べ始めたとたん、ビールグラスを持つ左手が止まらなくなった。喜多方市中心部のお店では、喜多方ラーメンの上に塩川の鳥モツをトッピングした鳥モツラーメンといったメニューもあるようだ。

現在6店舗が加盟
現在6店舗が加盟

2010年には、塩川の鳥モツを真に愛されるご当地グルメとして発展させることを目的に塩川とりもつ伝承会が結成された。現在塩川にある6店舗が加盟し、それぞれの味を競っている。喜多方や会津若松のような観光地ではないので、立ち寄るにはちょっとハードルが高いが、一度食べるとやみつきになる中毒性があるだけに、機会があったらぜひ食べに寄ってほしい。もちろん、ラーメンを食べに入った喜多方のお店のメニューに鳥モツを発見したら、ぜひひと品加えて注文してみてほしい。きっとハマる味だ。

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