南紀を代表する観光地・白浜には、日本を代表する居酒屋の一つがある。「長久酒場」だ。南紀を訪れた際には、ぜひ立ち寄り、地物の魚料理を堪能したい。
「長久酒場」は、居酒屋探訪家の太田和彦氏が、東京・月島の「岸田屋」、大阪・天王寺の「明治屋」とならんで「日本三大居酒屋」のひとつとして紹介した店。白浜町の温泉街の海沿いたたずむ閑静な居酒屋だ。約50年にわたり、地元の方々に愛され続けている。新鮮な地物を使った料理が食べられると評判で、観光客にも人気が高い。夏の海水浴シーズンなどは、予約をしないと入れないときもある。
「長久酒場」では、南紀各地の美味が味わえる。例えば、那智勝浦ならマグロで知られる。地物のマグロを、まずは刺し身でいただこう。ちょっと厚めに切られたマグロは、極上の歯ごたえだ。
串本ではしょうゆ漬けで食べたカツオも刺し身でいただこう。ショウガとワサビで味に変化をつけながら楽しめる。
大地町はクジラの町として知られる。クジラは網焼きにしていたこう。「長久酒場」では、テーブルのコンロで焼く焼き物のメニューも揃っている。肉類も豊富だが、ここはやはり魚をいただこう。
大型魚であるクジラは、動物の肉にも似たしっかりとした歯ごたえがある。かみしめながら味わうと酒も進む。
網焼きメニューの中で人気が高いのがウツボだ。ウツボをぶつ切りにして網焼きにする。しっかり焼くと、皮がカリっと何とも言えない食感になる。身も歯ごたえがあり、歯にまとわりつくような弾力を持つ。他の魚にはない、個性的な食感だ。
おでんなどの居酒屋メニューも充実。地物の魚はもちろんだが、肉や野菜も気軽に楽しめる。
那智勝浦の「海つばめ」も地物の魚料理を味わうにはおすすめだ。巨大な温泉旅館「ホテル浦島」の中にある居酒屋だが、日本酒の品ぞろえも豊富で、地元でしか食べられない魚料理も多い。
例えば深海に住む希少なクモエビ。これをから揚げにして塩でいただく。鋏が長く、殻の部分の多いエビだが、揚げることで、カリっとした食感を楽しめる。ビールが進む味だ。
イルカも刺し身で食べられる。しょうゆ、あるいは塩を入れたごま油につけていただく。以前静岡で食べたイルカの煮物は非常に癖の強い風味だったが、「海つばめ」で食べた刺し身は、万人受けする味だった。
マンボウも食べられる。水分が多く、よほど鮮度がよくないと刺し身では食べられないが、加工品なら通年で食べられる。湯通しした腸の酢の物はコリコリとした食感が楽しめる。
コース料理もいいが、メニューを見ながら、気になった料理を注文、酒も料理に合わせて選べるのが居酒屋のいいところ。南紀の魚料理を味わうなら、地元の居酒屋がおすすめだ。