田辺のなんば焼・ごぼう巻 南紀の魚料理③

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魚の豊富な土地には食べきれなかった魚を保存して食べる文化が根付く。前回紹介した「なれ寿司」の他にも、佃煮やかまぼこなど、加工して魚を日持ちさせて食べる手法がある。紀南を代表する、和歌山県内では和歌山市に次ぐ人口を誇る田辺市の名物が、魚のすり身を使ったなんば焼とごぼう巻だ。

贈答用の箱入りセット
贈答用の箱入りセット

かまぼこは、主に白身の魚をすり身にし、塩や卵白などを加えて成型、加熱して食べる物だ。一般に白身魚は高級品で、かまぼこも古くから贅沢品とされた。贈答用などにも用いられるため、南紀でも、専用の箱が用意されている。

板つきのかまぼこ
板つきのかまぼこ

作り方は地域によって様々で、例えば関東・小田原なら、魚のすり身を板の上に盛り、それを蒸して作る。九州では、すり身を揚げた、関東でいう「さつま揚げ」が好まれる。北前船の寄港地だった富山では、北海道から運ばれた昆布ですり身を巻き、蒸した昆布巻かまぼこで知られる。さらに富山では、贈答用などに様々にデコレーションした飾りかまぼこも有名だ。

カラフルな富山の飾りかまぼこ
カラフルな富山の飾りかまぼこ

田辺のなんば焼は、宮城の笹かまぼこと同様に魚のすり身を焼いて作る焼きかまぼこだ。漢字では「南蛮焼」と書き、南蛮渡来の製法ともいわれる。エソ・グチなど地物の魚のうろこをていねいにとり、頭や内臓を取り除き、水洗いしたら、三枚におろし、皮をそぐ。余分な脂肪や水分、臭みを取り除いてから、臼で練り上げる。

田辺の老舗「たな梅」の焼き型
田辺の老舗「たな梅」の焼き型

なんば焼最大の特徴は、練り上げたすり身を焼くこと。成型したすり身を独自の焼き型を使い、約1時間かけてじっくりと焼き上げる。蒸しかまぼことは違い、焼くことで、表面に香ばしい焦げ目がつくとともに、しっかりした歯ごたえに焼き上がる。

厚めに切るのがおいしく食べるポイント
厚めに切るのがおいしく食べるポイント

食べる際は、その歯ごたえを楽しむためにも、厚めに切って食べるのがおすすめ。約1センチほどの厚みで食べると、もっともその歯ごたえが楽しめるという。

たっぷりのゆでごぼうをすり身でまとめる
たっぷりのゆでごぼうをすり身でまとめる

ごぼう巻は、なんば焼と並ぶ田辺の名産。なんば焼とごぼう巻は、田辺に限らず白浜などでも作られている。軟らかくゆでたごぼうをなんば焼のすり身でまとめ、魚をおろす際に出た皮を何枚も手作業で巻き付ける。表面を焦がさないように焼き色が付くまで、ていねいに返しながら焼いていく。こんがり焼き上がったら、店自慢のたれに漬ければできあがりだ。

皮の香ばしさとたれが味の決め手
皮の香ばしさとたれが味の決め手

ごぼうならでわの味わいとすり身のマリアージュに、魚皮の香ばしさ、さらには甘辛いタレの味わいが加わり、シンプルななんば焼とは違った味・食感が楽しめる。店によってたれの味が違うため、食べ比べて、自分好みのごぼう巻を見つけるのもおすすめという。

そもそも保存食品。南紀の土産にぜひおすすめしたい。

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