料理の主役になる油揚げ 栃尾のあぶらげ

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薄く切った豆腐を油で揚げた油揚げ。煮物の具として、あるいは味を含ませて袋状にし、そこにご飯を詰めていなり寿司にするなど、日本じゅうで食べられている食材だ。一方で、全国各地に、一風変わった独自のご当地油揚げがある。

「谷口屋」の油揚げは福井県民のソウルフード
「谷口屋」の油揚げは福井県民のソウルフード

肉厚で三角形をした宮城県の三角揚げ、やはり肉厚で正方形の福井県「谷口屋」の油揚げ。愛媛県松山市や熊本県玉名郡南関町には、水分を飛ばして保存性を高めた松山あげや南関あげもある。そんなご当地油揚げの中でも、特に知名度が高いのが新潟県栃尾のあぶらげだろう。

栃尾のあぶらげ
栃尾のあぶらげ

栃尾は、越後平野に隣接した栃尾盆地を中心とする地域で、現在は長岡市の一部となっている。同地の油揚げは、「あぶらげ」と呼ばれ、肉厚でサイズも大きく、ジャンボ油揚げなどとも呼ばれている。そのルーツは諸説ある。ひとつは、江戸時代に、地元の秋葉神社で参詣者の土産品として誕生したというもの。もうひとつは、栃尾の馬市から生まれたというもの。馬の取引に際し、売買成立の証文代わりに酒を汲み交わし、その酒の肴としてあぶらげを食べたというものだ。

油揚げ(下)は中まで油が回り、厚揚げ(上)は中は豆腐のまま
油揚げ(下)は中まで油が回り、厚揚げ(上)は中は豆腐のまま

そもそも油揚げと厚揚げはどう違うのか。水切りした豆腐を油で揚げるのはいずれも同じ。違いは揚げ方にある。油揚げが、豆腐が油の中に完全に浸るようにして2~3度、十分に揚げるのに対し、厚揚げは表面だけをカラっと揚げて、中は豆腐の濃厚な味わいを残している。中まで十分に火を通さないことから「生揚げ」とも呼ばれる。

豆腐をあぶらげ大に切っていく
豆腐をあぶらげ大に切っていく

一般に油揚げは厚揚げに対して薄いとうふを揚げるものだが、栃尾では厚揚げに匹敵する厚さで揚げる。長さ、幅も大きく、通常の油揚げの約3倍もの大きさになる。これを上記のように中まで油が回るように、じっくりと丁寧に揚げるのだ。

低温と高温、2種類のフライヤーで揚げる
低温と高温、2種類のフライヤーで揚げる

低温と高温、温度の異なる2種類の油で揚げる。低温の油でしっかり芯まで温まった生地は、高温の油の中でくるくると回転しながらふんわり膨らんでいく。栃尾の「あげ家 松兵衛」では、生産現場を常時見学できるようにしている。現地を訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみるといい。

揚がったあぶらげを金串に差して油切りする
揚がったあぶらげを金串に差して油切りする

また、栃尾のあぶらげには大きな穴が開いていることにお気づきだろうか。これも、その揚げ方に由来するものだ。あの分厚いあぶらげを中まで油が回るようにして揚げるため、どうしても多く油を吸い込んでしまう。そこで、揚がった油揚げに金串を通し、しばらく吊るして油切りをする。

ネギなど薬味を挟んで
ネギなど薬味を挟んで

栃尾を訪れた際にはぜひ揚げたてを食べてほしいのだが、実際には揚げ置きのあぶらげを家庭で温めなおして食べることがほとんどだろう。トースターで炙ったら焦がしてしまった、表面はかりっと焼けたが中は冷たかった、という経験もおありだろう。栃尾観光協会では、一度電子レンジでチンしてからトースターやフライパンなどで炙ることを勧めている。

電子レンジを使うと中まで熱々に
電子レンジを使うと中まで熱々に

そのまま温めてもおいしいが、包丁を入れて、薬味などをサンドイッチして炙って食べるのも人気だ。百貨店の催事などでは、ネギやみそ、納豆などを挟んだものを販売するケースも多い。また、栃尾では、南蛮味噌などをあぶらげと一緒に販売していることも多い。「星長豆腐店」では、カレー味噌を販売していたが、これが絶妙にあぶらげにマッチしていた。

油揚げとカレーの意外なマリアージュ
油揚げとカレーの意外なマリアージュ

最近では、ごく普通の食品スーパーでも見かけることが多くなった栃尾のあぶらげ。様々な食べ方で、その魅力を味わってほしい。

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