被災地のご当地麺 愛され続ける味

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今年の3月11日で東日本大震災から10年の節目を迎えた。この機に、被災各地で今も愛され続けるご当地麺の今を紹介したい。

茶色い麺が特徴の石巻焼きそば
茶色い麺が特徴の石巻焼きそば

まずは、市町村単位では最も多くの方々が亡くなった宮城県石巻市のご当地麺は、石巻茶色い焼きそばだ。戦後、まだ冷蔵庫が普及していない中、常温で保存のきくよう麺を二度蒸しし、茶色く「麺焼け」したことがルーツだ。

だしをかけながら蒸し焼きにする
だしをかけながら蒸し焼きにする

この茶色い麺にだしをかけて、蒸しあげるように焼く。だしを味わうため、調理段階ではなく、食べる際に自分好みでソースを掛けるのが暗黙のルールだ。もちろん、ソースを掛けず、だしのみで味わってもいい。

学生たちと共同で開発したさばだしラーメン
学生たちと共同で開発したさばだしラーメン

石巻市の中心街は、北上川の河口に位置するが、震災発生直後、この河口周辺から広く津波が襲った。飲食店はもちろん、製麺所なども被災した。被災した製麺所のひとつ島金商店は、被災から2年後の2013年に工場を再建、伝統の茶色い二度蒸し麺はもちろん、地元・石巻専修大学の学生たちと共同で商品を開発するなど、石巻の再興に取り組んでいる。

「新華園本店」の釜石ラーメン
「新華園本店」の釜石ラーメン

石巻と同様、中心市街地が津波で被災した岩手県釜石市は釜石ラーメンで知られる。地元民の多くが「釜石ラーメンならここ」と語る「新華園本店」もいちはやく復活、大手食品メーカーから店の名を冠したカップ麺が登場するなど、人気店として多くのファンに愛され続ける。

あっさりスープと細麺が特徴
あっさりスープと細麺が特徴

あっさり鶏ガラのだしに魚介の風味を生かした、だしを味わうようなスープが最大の特徴。釜石は「鉄と魚とラグビーのまち」として知られるが、せっかちな漁師の声で、すぐにゆであがるよう編み出された細麺も特徴的だ。

「こんとき」の釜石ラーメン
「こんとき」の釜石ラーメン

震災後、長く仮店舗での営業が続いた人気店「こんとき」も、三陸鉄道鵜住居駅のすぐ近くに新店舗がオープンした。「新華園本店」同様、薄味の中にもしっかりとパンチのあるスープは、ぜひ食べておきたい逸品だ。

普代村「レストハウスうしお」の蒸しウニ丼と磯ラーメンのセット
普代村「レストハウスうしお」の蒸しウニ丼と磯ラーメンのセット

太平洋に面した三陸海岸一帯で食べられているのが、磯ラーメンだ。海産物と海藻をたっぷりと使った塩味のラーメン。イカや海老などを使った庶民的な品から、ウニがのった豪華版まで、店によって様々なバリエーションがある。

「道の駅のだ」のぱあぷるラーメン
「道の駅のだ」のぱあぷるラーメン

気候的に稲作に適さなかった岩手県北から青森県にかけての旧南部藩地域では、沿岸の野田で精製した塩を陸路、盛岡まで運び年貢として納めた。塩を運んだ「塩の道」の起点を示した石碑は津波で流失してしまったが、「道の駅のだ」には、塩の道を往来した牛方とベコの像が建つ。店内では、野田の塩を生かした磯ラーメンが味わえる。

極太麺が特徴のなみえ焼そば
極太麺が特徴のなみえ焼そば

震災に加え、原発事故で避難を余儀なくされた福島県浪江町のご当地麺は、なみえ焼そばだ。うどんのような極太の中華麺を、豚バラ肉、モヤシを具にラードで炒め、たっぷりのソースで味付けする。戦後、額に汗して働く人々の空腹を満たすため、食べ応えと腹持ちをよくするために誕生した。ラードも相まって、ボリュームも満点の焼そばだ。

「杉乃家」のなみえ焼そば
「杉乃家」のなみえ焼そば

震災に伴う原発事故発生以来、長きにわたって町内に避難指示が出されていたが、市街地など一部地域で2017年に解除された。これにより、町内でのなみえ焼そばの提供が復活。現在、JR常磐線浪江駅近くにできた道の駅などで食べることができる。さらには、震災前の人気店「杉乃家」が避難先の福島県二本松市で営業を続けるほか、昨年、やはり避難指示が一部地域で解除された福島県双葉町の産業交流センターにできた「せんだん亭」でも食べることができる。

コロナ禍の折、被災地への訪問ははばかられるが、コロナ終息の後には、ぜひ現地を訪れ、その味に舌鼓を打ってほしい。

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