山梨県は、山がちな地形から、古くから稲作よりも麦の栽培が盛んだった。そのため、県内各地に麦を原料にした郷土食が多い。和食の麦の食べ方としてよく知られるのがうどんだが、山梨県内では、県を代表する郷土料理とも言えるほうとうをはじめ、富士吉田のうどんなど、各地で麦を原料とした粉ものがよく食べられている。
そんな山梨の粉もの郷土料理のひとつが、大月のおつけだんごだ。
大月は、郡内地方では比較的平地の多いまちだ。とはいえ、市域のほとんどは山間部で、市街地は沢沿いに細長く形成されている。江戸時代以降、甲州街道の宿場町として発展、宿泊の他にも焼畑による畑作や林業、養蚕、郡内織と呼ばれる織物生産も行われていた。ルーツははっきりしないが、おつけだんごは、そうした大月の暮らしの中で食べ継がれてきた。
小麦を練った、いわゆるすいとんを汁で煮込む料理だ。九州のだご汁(だんご汁)がすいとんや麺など小麦を練ったものを汁で煮込むのと同様だ。また、国中地方の名物料理、ほうとうともよく似ている。根菜などと煮込むが、ほうとうが麺なのに対し、おつけだんごは小麦のだんごだ。
市内、国道20号線沿いにある「いなだや」で大月おつけだんごを食べた。
汁の味付けはみそ。しょうゆや塩、カレーなど、家庭によって味付けや具材が違うというが、お店で食べられる大月おつけだんごの多くは味噌味だ。根菜と一緒に煮込まれている。甘すぎないカボチャが、ほくほくしておいしい。
だんごは予想以上に大ぶりだ。しかもたっぷり入っている。ちょっと大きめのみそ汁椀といった感じの器だが、けっこうお腹いっぱいになる。
JR大月駅前の「かつら」でも、おつけだんごが食べられる。こちらのだんごもかなりの大きさだ。里芋がしっかり煮込まれていて味が染みている。
量の多さは、もてなしの心でもある。食べ物が限られる地域だけに、そもそもお腹いっぱい食べさせることが、何よりのおもてなしなのだ。素朴な味だが、これからの季節、お腹いっぱいでポカポカになる大月おつけだんご。ぜひ、食べに行ってみてほしい。