知れば知るほど面白い日本の食文化にまつわる豆知識。
あなたはご存じでしたか?
食文化クイズ⑫
【姿を変える昆布】
Q 「おぼろ昆布」と「とろろ昆布」の違いは?
A 昆布を削る刃が違います。
大阪の老舗昆布問屋に生まれた作家の山崎豊子は小説「暖簾(のれん)」の中でこう書いています。
「『下ごしらえ』した昆布を『荒削り』するのが一年間。薄い紙裁ち庖丁に鋸のように二百、目を入れた庖丁で黒い表皮をかいて『黒とろろ』をとるのが三年。芯の方の白い部分を削って『白とろろ』をとるのが二年」
「かみそりのように庖丁を研ぎすまして、カンナ屑のようにかいて『おぼろ昆布』を作るのが四年。一人前の昆布の加工を習い覚えるには十一年かかる」
つまり昆布の表面をギザギザの刃でひっかいてつくるのが「とろろ昆布」と言っています。昆布の表面は黒いので、最初にできるのが「黒とろろ」。芯に近づくほど白くなるので「白とろろ」ができるわけです。
対して「おぼろ」は、刃先を少し曲げた庖丁でごく薄く削ります。最後に残った白い芯の部分(白板昆布)は長らく捨てていましたが、大阪で「ばってら」の表面を飾るのに使われるようになりました。
最近の「とろろ」は削りません。たくさんの昆布を圧縮して固いブロックに成形し、その側面を薄く切って作ります。何層も重ねた側面を切るので黒とろろと白とろろに分かれません。もしどこかで「黒とろろ」を見かけたら、それは昔ながらの手作業の産物ですから、即買うべし。
「おぼろ」は今も熟練の職人が手作業でつくるので、少し値が張りますが、機械で作る「とろろ」は手が出しやすい値段になります。
昆布加工の本場は福井県敦賀市です。福井から富山にかけては「とろろやおぼろで包んだおにぎり」が日常の食べ物です。コンビニでも売っています。