ひとくちニッポン食文化論4

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知れば知るほど面白い日本の食文化にまつわる豆知識。

あなたはご存じでしたか?

食文化クイズ④

【小麦粉文化の謎】

Q ビスケットの天ぷらを食べる地域はどこですか?

ビスケットの天ぷら

写真提供:岩手県西和賀町

A 岩手県、長野県、山梨県に食べる地域が存在します。

中でも有名なのは岩手県西和賀町です。もともとは冠婚葬祭や人が集まる機会に作られていた家庭料理でしたが、最近は存在が知られて道の駅のメニューに加わり、手づくりセットなども売られています。地元ではイトウ製菓の「かーさんケット」というビスケットを使うのがデフォルトですが、スーパーで売っているほかのビスケットでもできます。

長野県の小谷村、白馬村でも昔から親しまれた郷土のおやつでした。そして山梨県鳴沢村でも食べています。

なぜそんな食べ物が生まれたのか。ネット上では「食料が不足していた時代に、ビスケットに衣をつけて揚げ、空腹を満たした」というようなことが書かれています。確かにそういう意味もあったでしょうが、それだけでしょうか。

衣をつけて揚げるというのは、ひと手間かかることです。手間をかけるというのは「ご馳走」の記号です。高価な油を使うこともご馳走の記号です。各地の冠婚葬祭の料理に揚げ物が多いことからも、昔のご馳走観が伺えます。

しかし西和賀町のような山間部の豪雪地帯では年間を通して海のものは手に入りませんでした。山菜や野菜を揚げるしかありません。逆に言うと、たとえビスケットでも天ぷらにすれば、たちまちご馳走になるのです。

ビスケットの天ぷらを食べるほかの地域も海から遠い山間部です。共通のご馳走観が根付いたと考えることはできないでしょうか。

会津若松のまんじゅうの天ぷら

福島県の会津地方には「まんじゅうの天ぷら」があります。天ぷらにする手間に、まんじゅうの「甘さ」が加わります。砂糖が貴重品だった時代、甘いものはご馳走でした。饅頭の天ぷらはご馳走の中のご馳走といえるでしょう。

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