知れば知るほど面白い日本の食文化にまつわる豆知識。
あなたはご存じでしたか?
食文化クイズ②
【食事のマナーと作法】
Q なぜ日本人は、器を持ち上げて食べるの?
欧米(世界?)には食器を持つことを失礼な食べ方とする国もあります。日本人は食事のとき、料理が入った器を手に持つのが作法とされています。この違いはどこから来るのでしょうか。
A 箸で食べる文化、そして食器との距離が関係しています。
日本人はもともと食べ物を床に直接置いていました。直接でない場合でも「折敷(おしき)」という板の上に置き、腰を下ろすか正座して食べました。その後、箱膳が用いられるようになります。そして使うのはお箸。
つまり食器と口との距離が遠いのです。江戸時代の絵画資料を見ると、高級な料理屋でも徳利や料理を盛り込んだ大皿を畳の上に直に置いています。取り分け皿のような食器を口元に持ってこないと途中で落とすなど食べるのに苦労します。
スプーンを使わないから、そうしなければ汁ものは飲めません。食器を置いて食べると「犬食い」などと言われた時代もありました。
一方、テーブルで食事をする人々は食べ物と口との距離が短いので、食器をテーブルに置いたまま食事ができます。
ちゃぶ台(折脚付きの円形甲板がついた食卓)が発明されたのは明治の中頃。都会の一般家庭にちゃぶ台が普及したのが明治末から大正初期で、農村部では昭和の初めでした。食器と口の距離は縮まりましたが、日本人は依然として食器を手にする習慣を変えませんでした。
ダイニングテーブルとイスの生活様式は公団住宅が誕生した昭和30年代に始まります。
いまは多くの家庭がテーブルとイスで食事をしていますが、箸で食事をする限りこの作法は変わらないのではないでしょうか。