都心でイタリアンというと小洒落たお店を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。大きな白いお皿の中央部分に真っ赤なパスタがちょこんと配されているような。しかし、パスタのまちとして広く知られる高崎を擁する群馬県では、イタリアンというとボリューム満点の、お腹いっぱい食べられる食堂のイメージが強い。

そもそも、群馬県は小麦の生産量・消費量が多いことは、これまで何度も紹介してきた。「ザ・群馬の味」の焼きまんじゅうをはじめ、小麦粉を原料とする料理は多い。高崎を筆頭に群馬県で盛んにパスタが食べられているのも、そもそも小麦粉好きが大きく影響していると考えられる。

高崎のパスタと言えば「シャンゴ」がその元祖的存在と言われている。1968年創業の老舗だ。高崎のパスタを全国的知名度に押し上げたイベント「キング・オブ・パスタ」でも2度優勝している。その特徴は、ボリュームの多さだ。パスタは一般に麺量が1人前100グラム程度と言われているが「シャンゴ」ではSサイズが150グラム、Mサイズが200グラム、Lサイズが250グラム、LLサイズは300グラムと圧倒的に量が多い。

さらに看板メニューのシャンゴ風はボリューム満点のパスタの上に、なんととんかつまでトッピングされている。先代の時代は、カレーとパスタの人気が高く、ある日かつカレーに間違えてミートソースを掛けてしまったのが誕生のきっかけだとか。スパイシーなミートソースととんかつの組み合わせが絶妙で、今では店名を冠する看板メニューになっている。

毎年「キング・オブ・パスタ」で競合店が覇を競い合っているだけに、各店舗とも味はもちろん、ボリュームでも競争意識が強いようだ。第7回の「キング・オブ・パスタ」で優勝した「ラビッシュ」もやはりボリューム満点だ。ハンバーグとオムライスやカレーライスとハンバーグなどセットメニューが人気で、パスタにも、2018年の「キング・オブ・パスタ」に向けて編み出されたというハンバーグをのせたものがある。

ナポリタンの上にハンバーグが鎮座する姿は圧巻だ。この圧倒的なボリューム感から、ミートソースの上にとんかつがのるシャンゴ風との共通性を感じてしまうのは、決して私だけではないだろう。

こうした高崎のパスタをはるかに上回るボリュームを誇るのが、前橋の人気店「パンプキン」だ。全般的に盛りのいい群馬の飲食店にあってもその量の多さで圧倒する有名店だ。あまりの量の多さに、Sサイズをさらに下回るSSサイズが登場するほどだ。ちなみに、店内の壁には、テレビで有名なフードファイターたちのサイン色紙で埋め尽くされている。

人気メニューはグラタンスパゲティ。レギュラーサイズでも、オードブル用の楕円形のアルミ皿いっぱいに盛り付けられている。一般店の大盛りをはるかに凌駕する盛りの良さだ。しかもこのアルミ皿、結構な深さがある。ひとりで食べきるには、相当な覚悟が必要だ。

そもそも盛りの良さで有名なお店なだけに、量が多いことは事前に承知の上だ。そうはいっても、スパゲティだけでは健康に良くないと考え、100円のミニサラダを追加することにした。「100円」と言う価格、「ミニ」というネーミングから喫茶店のモーニングに付くようなサラダが来るものとばかり思い込んでしまっていた。テーブルに運ばれてきたミニサラダを見て、思わず声を上げてしまった。山盛りのキャベツなのだ。「ミニ」どころか、世間の常識で考えれば、明らかに「大盛り」、ジャンボサラダだ。

青息吐息で山盛りスパゲッティに取り組んでいると、隣のテーブルの家族連れは、土鍋のグラタンスパゲティをシェアして食べていた。オードブル大のレギュラーサイズの上、大盛りはなんと土鍋で提供されるのだ。恐るべき、群馬の爆盛りぶりだ。

ランチタイムなどにピザが食べ放題になるイタリアンは、結構よく見かける。爆盛りの群馬イタリアンにも当然ピザ食べ放題がある。量の多さはパスタ・スパゲッティに限らない。高崎の行列店「ナポリの食卓高崎店」のセットメニューは、パスタと食べ放題のピザがセットになっている。

まずは、トマトソースやクリームソースなどパスタメニューの中から1品選んで注文する。取材時はカルボナーラを選択した。麺は生麺と乾麺から選べる。今回は生麺を選択。ピザ食べ放題が付くだけにボリュームは普通盛りだが、生麺特有のもちもち感が魅力的な食感だった。

セットにはサラダも付いている。ちょうどレタス高騰の折だったが、レタスもたっぷりで、ポテトサラダやコーンも盛り合わせてあり、満足感の高いサラダだった。ちなみに、飲み物は別料金になる。デザート付きのドリンクバーが非常にお手頃価格なので、ドリンクバーを合わせて注文するのが賢明だろう。

食べ放題のピザは、店員が焼きたてを皿にのせ各テーブルを回る。「体育会系爆盛りドカ食い食堂」と称したが、このシステム、ピザを美味しく食べるには非常に良くできたシステムだ。好みのピザを1カット単位で選べるので、様々な味のピザを少しずつバラエティー豊かに食べられるのだ。ひとりやふたりでピザを注文すると、同じ味のピザを結構な量食べることになる。少人数で、少しずつ、多種類食べたいと言うときには、非常に好ましいスタイルと言える。