北海道のご当地グルメを都市単位で紹介する「北海道あのまち、この味」。5回目は札幌に次ぐ北海道第2の都市であり、道北の中心都市でもある旭川だ。北海道の真ん中に位置し、交通の要衝として古くから栄えた。明治の末に陸軍第7師団が置かれたことを機に、軍都としてさらに発展した歴史を持つ。
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旭川でまず食べておきたいのはラーメンだ。札幌の味噌、函館の塩と並び、旭川のしょうゆラーメンは北海道3大ラーメンと称されている。その特徴は動物系のだしと魚介系のだしを合わせたスープ。味付けはしょうゆが基本だ。スープの表面にはラードが浮く。極寒の旭川にあってスープが冷めないようにという知恵から生まれたとされる。
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今回は「味特」で旭川ラーメンを食べた。旭川の基本形であるしょうゆ味は、店で使うチャーシューを作る際のタレを使って味付けする。ほのかな豚肉の風味とコクが、しょうゆに溶け込み、奥深い味わいをつくり出す。ほぼストレートの加水率の低い麺は、スープをよくまとい、麺とスープの一体感が味わえる。
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札幌の味噌に対し旭川はしょうゆというのが一般の認識だが、実は旭川は味噌ラーメンも美味しい。「味特」の味噌ラーメンは、味噌ラーメンらしくモヤシを入れてスープを作る。野菜のエキスで、味噌スープのコクの強さが和らぐのだという。味噌ダレは、白味噌、赤味噌の合わせ味噌で、数種類のスパイスと、みりん、酒などをブレンドする。味噌もまた味わい深いスープだ。
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ラーメンと並ぶ旭川のご当地グルメにホルモンがある。北海道らしい豚ホルモンを塩で食べるのが旭川流だ。そして、旭川を代表するこの2つのご当地グルメを合わせたのが「ひまわり」のモルメンだ。
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行列店としてテレビなどでも紹介される人気店で、近年は同店以外にもホルモン入りラーメンを提供する店もあるが、同店のHPでは、モルメンを提供し始めた当時、旭川でラーメンにホルモンを入れるのは「ひまわり」だけだったと記されている。「ホルモンラーメンの老舗として、お客様の胃袋と『美味しかった』という笑顔をずっと満たし続けるために、これからも精進していこう」との信条がファンにも伝わっているのか、噂通り開店前から多くの客が待っていた。
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スープは、豚骨と鶏ガラ、そして昆布や煮干しなどを長時間煮込んだ濃厚な味わい。そして何より、ホルモンが抜群に美味しい。ホルモンというと炭火焼きのイメージが強いが、「ひまわり」では中華鍋で炒める。使うホルモンは国産のみという。とにかく柔らかい。ホルモンというとどうしても歯に当たる、食べにくいイメージがあるが、さっくりと歯が通るのだ。しかも臭みがなく、適度な脂が、うまみと甘みを演出する。
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夜の部はホルモンもいいが、今回はモルメンとの被りを避けて、旭川のソウルフードといわれている新子焼きを選んだ。若鶏の半身を素焼きにしたものだ。誕生したのは戦後。ブロイラー誕生以前は高価だった鶏肉は、庶民のごちそうだった。名前の由来は、魚のコハダ。いわゆる出世魚でコハダ→ナカズミ→コノシロと成長につれて呼び名が変わる。そして最も珍重されるのが、コハダになる前の幼魚「シンコ」だ。若鶏をこのシンコに例えた。ちなみに親鳥を焼いたものは山賊焼きと呼ばれるそうだ。
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まずは、1950(昭和25)年創業の老舗「焼鳥専門ぎんねこ」を訪ねた。旭川市内の多くの店が新子焼きを提供しているが、その中でも特に有名店、人気店として知られている。北海道中札内産生若鶏の半身をそのまま豪快に焼き上げる。熟練の焼き手が一つひとつ丁寧に手焼きするため、注文してからテーブルに運ばれるまで30分以上かかる。
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味は好みで塩とタレを選べる。せっかくなので両方とも注文した。遠赤外線で香ばしく仕上げられた新子焼きは、表面はカリッと、それでいて中は肉汁がたっぷり、柔らかく焼き上げられていた。「焼鳥専門ぎんねこ」のたれは、祖父母の代から継ぎ足して使っている。さらっとしていてまったくしつこさがない。熱々の新子焼きにたっぷりたれを絡めて食べるのが地元流だ。
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もう1軒、新子焼きをチェックしておこう。「独酌三四郎」は、「ミシュランガイド北海道」に掲載され、人気のテレビ番組「孤独のグルメ」にも登場した旭川を代表する居酒屋だ。外観、そして暖簾をくぐって店内に入ると、そこはまさに「昭和の居酒屋」だ。カウンターの木肌の感触にも長い歴史がうかがえる。
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お通しは大豆を酢で味付けしたもの。素朴な料理だが、これが後を引く。さすがは老舗居酒屋だ。酒飲みの舌を知り尽くしている。あれこれ頼みたくなるが、おすすめはおかみ旬の盆。酒の肴がこれでもかと少しずつ、小鉢に盛られている。数えると小鉢の数は9種類。どれも、酒を誘う味付けだ。お刺身や和え物などはもちろんだが、マカロニサラダのようなありきたりのメニューも、老舗の味になっているから魅力的だ。
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旭川の酒・男山が進んだところで、新子やきの出番だ。居酒屋らしく、若鶏はひとくち大に切られている。若鶏らしい、やさしい歯触りだ。何よりだれが抜群においしい。皿に盛る直前に、焼きたての若鶏を継ぎ足しのたれのなかにドボンと浸すのが新子やきの調理法だが、たっぷりのたれが美味しさの秘訣だ。
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なので、若鶏を食べ終えた皿にはたっぷりのたれが残ってしまう。メニューには白飯とあるが、ここはたれが残った皿を差し出してそこにご飯を盛ってもらおう。それをよくかき混ぜて、たれまみれにしていただく。ちょっと甘めのたれが抜群に白飯に合うのだ。新子やきを食べる腹の余裕がなかったら、これだけでも注文したいくらいの美味しさだ。
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今年の夏の北海道は記録的な猛暑で、特に内陸の旭川や北見は、東京より気温が高かったほど。しかし、いざ美味しいご当地ならではの料理を味わえば、暑さもどこかへ吹っ飛んでいった感じだ。暑かろうが寒かろうが、また食べに来たい、そう強く思わせる旭川の味だった。