色薄くても味しっかり「白しょうゆ、白だし」

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名古屋の味というと誰もが豆味噌、八丁味噌を思い浮かべるだろう。しかし、忘れてはならない調味料がもう一つある。白しょうゆと白しょうゆをベースに作られる白だしだ。白しょうゆは、愛知県碧南地方でつくられている、薄口しょうゆよりもさらに薄い色合いのしょうゆだ。その色にしょうゆ黒さはなく、琥珀色をしている。

原料は小麦と大豆、塩、そして酵母となる麹

一般にしょうゆには濃い口、薄口、たまり、再仕込み、そして白しょうゆがある。濃い口、薄口、再仕込みはの原料は、小麦と大豆が5対5の同量で醸造されるのに対し、たまりは大豆100%、一方白しょうゆは小麦9に対し大豆1という割合でつられる。仕込み期間は濃い口が半年から1年、薄口は半年、たまりと再仕込みは2~3年を要するのに対し、白しょうゆは2~3カ月と熟成期間が明らかに短い。つまり白しょうゆは、原料に占める大豆の量が圧倒的に少なく、かつ熟成期間も短いしょうゆということになる。

白しょうゆ(左)としょうゆ

そのため、色・うまみともに控えめで塩味がたっているため、素材本来の色合いや味わいを引き立たせる調味料と言える。特に煮物などに用いると、素材本来の質感を損なわずに調理することができる。

白しょうゆと白だし

白しょうゆと混同されやすいが、白だしは白しょうゆの派生商品だ。白しょうゆは素材の持ち味を引き出す半面、うまみは控えめ。そこで白しょうゆを愛用する料理人からメーカーに、だしの効いた白しょうゆがほしいとの要望が寄せられる。この声にこたえ、白しょうゆに、かつおぶしや昆布、干しシイタケなどを使い、だしを加えて完成したのが白だしだ。

白しょうゆを醸造するタンク

白しょうゆ・白だしのメーカー、七福醸造の愛知県碧南市にある工場では、工場見学と試食ができる「ありがとうの里」を開設している。ここで実際の白しょうゆ・白だしづくりと、その味を体験してみよう。

どこに大豆が入っているの?

実際に醸造途上の白しょうゆを見させてもらったが「どこに大豆が入っているの?」と思うくらい、中に入っているのはほぼ小麦だった。これを発酵させたものをタンクから出してもらうと、まるでビールのよう。ビールの原材料が麦芽とホップなので、色合いが似てくるのは当然なのだろう。

ビールそっくり

ただし、ビールと違って食塩を使うため、ひとくちなめるとかなり塩味が強い。七福醸造では、精製塩ではなく天日塩を原料に使う。そのため、塩そのものにミネラルが多く含まれ味がまろやかで、うまみにも優れている。ほんのり甘みも感じる。

厚く削られたかつおぶし

白だしに加えられるだしの原料も見せてもらった。かつおぶしは非常に厚く削ってある。関西風の「ひと煮出し」ではなく、うまみを十分に抽出していることが推察できる。また、干しシイタケ(どんこ)も非常に立派な、大ぶりのものだった。このだしのうまみと白しょうゆならではの素材の質感を生かす色合いが重なり、目に美しく、それでいてうまみも豊富な味ができあがるというわけだ。

茶碗蒸しが白だしの生みの親

白だしは、とある調理店からひとつの調味料で茶碗蒸しができるようにとの要望を受けてできあがったという。これならうまみもたっぷり、それでいて淡い色合いの茶碗蒸しができそうだ。

白だしならではの味わい

試食コーナーでは、白だしをお湯を加えてのばした汁や浅漬け、下味に白だしを使った卵焼きなどを味合わせてもらった。色の淡さの一方で、だしにも塩味にも優れたその味は、白だしならではのものだろう。

おすましきしめん(左)ときしめん

興味深かったのは、きしめんの食べ比べだ。熱田神宮境内にある「宮きしめん神宮店」で、一見関西風のうどん出しのようにも見える白しょうゆを使ったおすましきしめんと通常のしょうゆを使ったきしめんを食べ比べた。一見して、右のきしめんがしょうゆ黒いことがわかる。一方で、左のおすましきしめんは「おすまし」のキーワード通り、透明度の高いスープだ。

おすましきしめんのほうが塩味が強い

第一印象では右の通常のしょうゆを使ったきしめんの方がしょっぱく思えるが、実際はあきらかにおすましきしめんのほうが塩味が強かった。トッピングのかつおぶしととろろ昆布の違いもあって、目には明らかに、おすましのほうが薄味に見えるのに、その逆なのだから面白い。これこそが、白しょうゆ・白だしの持ち味なのだ。

煮物を美しく美味しく

日本料理において、ビジュアルは重要だ。だからといって、味が薄くなっては本末転倒。素材が持つ質感を生かしながら、どう味を含ませるかが重要になる。名古屋というと、味噌おでんに代表されるような色濃い味噌味を思い浮かべがちだが、実はビジュアル系の白しょうゆも生んだ土地柄だ。

スーパーにもずらり白だしが並ぶ

酢もみりんも一大産地の愛知県。その調味料文化は実に奥深い。

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