広島の麺料理というと豚骨スープの広島ラーメンが有名だが、近年、広島市内では2種類の麺料理が人気になっている。汁なし担担麺と激辛つけ麺だ。いずれも、人気が高まったのは、平成以降のこと。どちらも個店のメニューではなく、多くの店で提供されている点が特徴だ。
ご存じの方も多いかとは思うが、本場中国では、担担麺といえば汁なしが一般的だ。ゴマを効かせたスープ入りの担担麺は、実は日本で誕生したもの。本場四川省の担担麺は汁なしで、山椒とトウガラシ、いわゆる麻辣、辛さと痺れを併せ持つ味だ。広島の汁なし担担麺は、この四川省の担担麺に近い味わいを持っている。中区舟入川口町にある「汁なし担担麺 きさく」が元祖と言われている。
そんな広島の汁なし担担麺を一挙に有名にしたのが、広島の中心市街地・広島市中区八丁堀にある「中華そば くにまつ」だ。「中華そば くにまつ」の汁なし担担麺は、東京でも食べられる。神保町の支店に行ってみた。
食べたのは、汁なし担担麺の元味。元味は、広島そのままの味だとか。温泉卵とご飯を添えて食べる。辛さは注文できるが、デフォルトはレベル2とのこと。デフォルトの味を確認しよう。
食べ方は、まず、良くかき混ぜること。加えて、ラー油、酢、山椒などを好みで加え、自分好みの味にしていく。広島汁なし担担麺の真骨頂は麻辣なので、ラー油と山椒をあとがけして食べてみる。
辛さはややマイルド。山椒はやはりたっぷりかけた方がおいしい。途中で酢を加えるといい感じの「味変」になる。
しばらく食べ進んだ後で、温泉卵を崩す。黄身の甘みが、辛さをマイルドにする。
麺を食べ終えると、たれと卵の残骸が皿に残る。ここに白いご飯を投入する。よくかき混ぜて、残ったたれをなじませてからいただく。少ししょうゆを垂らすと、いい感じの味付きご飯になる。
さらにもう1軒。現在、汁なし担担麺で最も知名度が高いのは「キング軒」ではないだろうか。中区大手町に本店を構える「キング軒」は、東京にも芝公園に支店を持つほか、銀座にある広島県のアンテナショップ「tau」の1階にも出店している。
「キング軒」は1辛から4辛まで、選んで注文する。トッピングは温泉卵やネギが追加できる。ネギを大盛りにすると、丼いっぱい緑色になる。
これにやはり、ラー油や山椒、トウガラシを加えて、自分好みの味に仕上げていく。もちろん、ご飯も注文できる。「tau」の売り場には、「キング軒」はじめ、自宅で食べられる汁なし担担麺も販売されている。また、後述する激辛つけ麺も自宅用に購入できる。
一方、激辛つけ麺は、その名の通り、辛いつけ汁が特徴。市内電車の入船町電停そばにある「新華園」が元祖と言われている(ただし、「新華園」でのメニュー名は冷麺)。しょうゆベースのつけだれに唐辛子やラー油、酢が入った、かなり辛めの味付けが特徴だ。ごまがたっぷりと入る点も個性的だ。
東京のつけ麺の多くは太麺だが、広島激辛つけ麺は、中太のストレート麺。これを冷水で締めて皿に盛り、その上にチャーシューや野菜をトッピングする。冷やしたゆでキャベツとキュウリ、細切りにしたネギが特徴で、まっ赤なスープがなければ、冷やし中華にも似たビジュアルになる。
汁なし担担麺同様、辛さを選べるシステムだ。辛みの苦手な人は別だが、やはり辛さが強い方が、より「らしさ」が出る。辛さの向こう側にあるだしのうまみと酢の酸味がくせになる。
まっ赤な漬け汁の見た目は、宮崎の辛麺にも似たインパクトがある。汁を麺に絡ませると、その赤さだけで唾液が出てくるほどだ。
写真を見れば分かるとおり、野菜たっぷりで、実はとてもヘルシー。麺が冷たいこともあり、とても食べやすい点も特徴だ。
チェーン店の「ばくだん屋」は広島市内だけでなく、福山や香港にも支店がある。また、東京でも何店かで提供されている。
辛いもの好きなら、ぜひ食べてみてほしい。