2020年10月1日、福島県双葉町にできた双葉町産業交流センターに、全国的にも知名度か高い、隣まち浪江町のご当地グルメ、なみえ焼そばなどを提供する「せんだん亭」がオープンした。
双葉町産業交流センターは、東日本大震災による原発事故で、今なお広域にわたって帰還困難区域に指定されている同町で、事業者や就労者のニーズを受け止めるとともに、旅行者には地域特産品や地元の味を提供する。これによって、地域の産業振興に資する拠点となることを目指している。
なみえ焼そばはうどんのような極太の中華麺を使った浪江町のご当地グルメだ。豚バラ肉、モヤシを具にラードで炒め、たっぷりのソースで味付けする。戦後、額に汗して働く人々の空腹を満たすため、食べ応えと腹持ちをよくするために誕生した。ラードも相まって、ボリュームも満点の焼そばだ。
「せんだん亭」を運営するのは、浅見公紀さん。2016年に浪江町一部地域の避難指示解除が決まり、浪江町が役場隣に作った仮設商店街で、これまでなみえ焼そばを提供し続けてきた。地元紙の浪江支局長として赴任時に東日本大震災を経験、その後、福島への転勤が決まり退社、浪江に残った。支局長時代から地元のまちおこし活動に従事するなど、浪江の「まちのこし」への思いは強い。
そうした浪江町内での取り組みを買われて、今回の双葉町産業交流センターへの入居となった。ちなみに店名は、双葉町の木が「栴檀」であり、「栴檀は双葉より芳しい」のことわざにあやかった。
全国各地でご当地グルメでまちおこしに取り組む人たちとの交流も深く、「せんだん亭」のメニューにはなみえ焼きそばだけでなく、かほく冷たい肉中華や北上コロッケなど、まちおこしの仲間たちから手ほどきを受けたご当地グルメも並ぶ。
浪江町内には新たに道の駅ができ、その中でもなみえ焼そばが提供される。常磐自動車道南相馬鹿島サービスエリアでもなみえ焼そばは人気メニューだ。震災直後から避難先の二本松駅前で営業する「杉乃家」もすっかり定着した。東京・日本橋にある福島県産品のアンテナショップ「日本橋ふくしま館 MIDETTE」でも、袋入りのなみえ焼そばが手に入る。地元に限らず、なみえ焼そばは福島県を代表するご当地グルメの一つとなり、町外でも食べられるようになった。
双葉町産業交流センターには、この後物産販売の店舗も開店予定。センターに隣接して復興祈念公園、東日本大震災原子力災害伝承館もオープンした。多くの来場者で、復興に寄与することが期待されている。近くを訪れる機会があれば、ぜひ立ち寄ることをおすすめしたい。