ソースカツ丼文化圏を旅する ~ 群馬県 桐生市 ~(4)

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第4回(全4回)

群馬に根付く卵でとじないカツ丼文化

群馬県を北部地域と南部地域に分けて見ると、カツ丼事情は北部が卵とじ主流、南部が卵でとじないカツ丼が主流となっています。更に、南部地域は高崎を中心に西側が醤油カツ丼、東側がソースカツ丼という特徴があります。

なぜこのようなすみわけになっていったか、はっきりとした理由はわかりません。ただ群馬県は戦前から養蚕・製糸・繊維業が盛んであり、東京と交流のある人が多かった人口集積がみられる南部地域で、洋食メニューのカツレツの情報が伝わり、揚げたてのカツで作るカツ丼が卵とじより先に根付いたためではないか、と推測はできます。

いずれにしても、卵でとじないカツ丼が昔から根付く地域で、ソースカツ丼と醤油カツ丼のエリアが隣接している例はありません。ソースカツ丼エリアの中心をなす桐生市ですが、スーパーマーケットにおけるカツ丼は、ソースカツ丼と卵とじカツ丼は半々のようです。他のソースカツ丼の地域にみられる状況と同様に、コンビニ弁当の影響を受ける若い人たちに、卵とじカツ丼のニーズが一定程度あるためかと考えられます。

ソースは一口カツ 卵とじはロース

桐生のソースカツ丼弁当はヒレカツ、もしくは一口カツが複数枚のっている、という点で他地域とはビジュアルが違います。一方卵とじカツ丼はロースカツの卵とじが多いようで、全国チェーンのコンビニやスーパーマーケットで売られている“カツ丼”と同様の見た目になっています。

ちなみに総菜のとんかつはロースカツが主流のようで、自宅でもとんかつはソースカツ丼用ではないようです。とんかつを食べる際には、中濃ソースかとんかつソースで食べるようで、これは関東を中心とする東日本の中濃ソースの文化が根付いているためと考えられます。

ソースカツ丼を自宅で作るかを聞いてみたところ、ソースが独特なのとヒレカツを使うためか、お店で食べるものと考える人が少なくないようです。ただし、自宅で作る場合にはソースとみりんを合わせる、という話を聞きました。

各地のソースカツ丼エリアでの「おうちでソースカツ丼」レシピでは、ご飯に合わせるためか醤油や甘みを加えるようですが、他地域では甘みといえば基本的に砂糖ですが、桐生ではご家庭でもみりんを甘味料として加える話が聞かれます。

家庭の味は、人気店の味に似せることが多いためか、発祥のお店の流れをくむ味に近いものが多いように感じます。桐生においてはルーツがうなぎ屋なので、先にみりんの話が出てきても不思議ではありません。

自宅で桐生のソースカツ丼

桐生ソースカツ丼会の公式のレシピというのはないようなので、桐生ソースカツ丼に近いイメージのレシピを簡単にご紹介します。

ご家庭にある調味料を合わせるのであれば、

ウスターソース:3 醤油:1 酒:1 みりん:1

にお好みで砂糖の甘みを加え、水で1.5倍程度に希釈して、鍋で煮合わせます。そして一口カツをソースに潜らせ、残りのソースをご飯にかけた後、ソースカツを盛りつけます。桐生のソースカツ丼は千切りキャベツをのせないスタイルなので、ソースだけでもご飯が食べられるようなソースに仕上がると病みつきになります。

また鰻のたれがありましたら、元祖の味に思いを馳せながら、鰻のタレ1:ウスターソース1:水1を煮合わせ、お好みで甘みを調整してもご飯に合う特製のソースができます。

現在、なかなか外食も旅行もしにくい状況ですが、各地のソースカツ丼は、部位やパン粉、もちろんソースも違うので、いつものカツ丼とちょっと違う「おうちでご当地ソースカツ丼」を楽しんでみてはいかがでしょうか。



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