蒸して焼いてこその美味「岡山・日生のカキ」

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首都圏でカキというと、広島、あるいは宮城を思い浮かべる人がほとんどだろう。実は養殖カキの県別生産量で広島、宮城に次ぐのが岡山だ。首都圏では、地理的な関係で、宮城県産のカキが重宝されてきたが、東日本大震災で東北のカキが壊滅的な被害を受けた際に、東京でも岡山県産のカキが入ってくるようになった。

加熱用のむき身カキ

鮮やかな手さばきでカキをむく

岡山県だけでなく、関西でカキのまちとして広く知られているのが、県東部、兵庫県に隣接する備前市日生町だ。JR山陽線から赤穂線に乗り継いで、大阪から2時間あまり、カキの季節になると、小さな漁師町の街道筋には多くの行列ができる。

日生カキオコ
日生カキオコ

日生の名物は、カキを使ったお好み焼き「カキオコ」だ。


日生のカキは加熱用が基本。漁協に水揚げられたカキは、見惚れるような鮮やかな手さばきで貝からむかれる。大量にむかれたカキは、昔ながらの一斗缶に詰められて出荷される。広島や三陸などでは、上物は殻付きのまま生食用に出荷されるのとは対照的だ。

カキ山盛りのお好み焼き

お好み焼きにカキを「ひとつかみ」のせる
お好み焼きにカキを「ひとつかみ」のせる

この大量のむき身こそが日生の魅力だ。オイスターバーの食べ放題などでは「何個食べたか?」が話題になるが、日生では、そもそもカキを数えない。お好み焼きにのせられるカキも、そもそも「ひとつかみ」だ。お好み焼きの表面がカキで覆い尽くされるほど大量に盛られるのが、カキオコの最大の魅力だ。

カキ焼きで一献
カキ焼きで一献

お好み焼きの前には、カキ焼きで一献。鉄板の上に、やはり「ひとつかみ」のカキをのせ、ネギと一緒に炒める。これをつまみにビールを飲み、酒を飲み、最後にカキオコで満腹に。それが、冬の日生の楽しみだ。

カキオコで全国的な人気に

日生町漁協の魚市場、五味の市に行けば、むきたてのカキが所狭しと売られている。もちろんその場で食べることもできる。カキフライをトッピングしたソフトクリームまである。

五味の市駐車場の目の前には、日生カキオコまちづくりの会のアンテナショップ「カキオコ屋暖里(ゆるり)」がある。日生カキオコまちづくりの会は、カキオコの魅力を全国に知らしめたまちおこし団体だ。

カキのバジル焼き
カキのバジル焼き

もちろん、カキフライも食べることができる。そして「暖里」に行ったらぜひ食べておきたいのがカキのバジル焼きだ。むきたてのカキを串焼きにして、バジルソースをぬって食べる。バジルの香りとオリーブオイルのコクがカキのミルキーな味わいに絶妙に絡みつく。鉄板のカキ焼きもいいけれど、冬なお温暖な日生の屋外で、海を眺めながら、串焼きをほおばり、缶ビールを飲む。それもまた魅力的だ。

地元ならではの蒸しガキ、味噌貝焼き

殻ごとカキを蒸す
殻ごとカキを蒸す

生ガキにはない、加熱したカキならではのおいしさを味わうなら、ぜひ蒸しガキをおすすめしたい。焼きガキならではのおいしさはもちろんあるが、鉄板はもちろん、殻ごと網焼きでも焼くと少し身が締まる。身の端の黒い部分が少し歯に触ることもある。しかし、殻ごと蒸すと見事なまでの柔らかさに仕上がる。ミルキーな味わいも、火が通ることによって、いっそう甘さを増す。調理法が手軽なこともあり、地元の家庭では蒸して食べることが多という。お店でみつけたらぜひ食べてみるといいだろう。

身がぷりぷり
身がぷりぷり

実は先日、三陸で3年ものの生ガキを手がける生産者に取材した際も「個人的には蒸すのが、カキのもっともおいしい食べ方かもしれない」という話を聞いた。産地以外ではあまりなじみのない食べ方だが、家庭でも簡単にできるので、試してみるといいだろう。

味噌ベースのスープに生ガキを投入
味噌ベースのスープに生ガキを投入

さらに今回、カキのまちならではの衝撃的なカキの家庭料理に出合った。味噌貝焼きだ。味噌ベースのちょっと甘めのたれを張った鍋に、やはり「ひとつかみ」で生ガキを投入、火が通ってきたら刻みネギとタマネギを加える。ネギに火が通ったら、最後に溶き卵を注ぎ入れてできあがり。カキの味噌味卵とじだ。

最後に溶き卵を
最後に溶き卵を

広島で土手鍋が愛されているように、カキと味噌は相性抜群。これに溶き卵が加わることで、これまで経験したことがない、カキの美味ができあがる。これを炊きたての白いご飯の上にかけたら、いったいどれほど食べられるだろうか?

味噌と卵がカキと絶妙のマリアージュ
味噌と卵がカキと絶妙のマリアージュ

カキオコに次ぎ、ぜひ「味噌貝焼き丼」を全国デビューさせてほしいと切に願いつつ、カキのまちを後にした。

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