朴葉味噌や漬物ステーキ…山の味 飛騨・中濃の郷土料理

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海なし県で山に囲まれた岐阜県。これまでにラーメンや焼肉など、近代に形成された岐阜特有の食文化を紹介してきた。加えて今回は、明治以前から、海から遠い、山深いなどの地勢の影響から独自に形成されてきた岐阜ならではの食文化に焦点を当てて紹介してみたい。

朴葉味噌を火で炙る

まずは朴葉だ。代表的な味は、朴葉味噌。大きな朴葉の上に、自家製のこうじ味噌を乗せて焼いた料理だ。ご飯によく合うほか、酒も進む。朴葉とは、モクレン科の落葉高木である「ホオノキ(朴の木)」の葉のことだ。南千島から九州、つまりはほぼ日本列島全域に分布する。国内で生える木の中では最大級の大きさの葉と花を持つ。そのため大きな葉は、食べ物を包んだり焼いたりすることに使われる。

食材にも包装紙にもなる朴葉

実は朴葉には抗菌作用があり、包むと食べ物が日持ちし、良いかおりが移りおいしくなる。そう、朴葉は大きくて収納手段として便利なだけでなく、日持ちもして、味も美味しくしてくれるというわけだ。山の中を長期移動する林業関係者が、山を歩く際の携行食として食べたのが由来と言われている。やがてその味が一般家庭にも普及し、昭和40年代には土産物としての販売も始まった。

その上に飛騨牛を

本来、具は刻んだ椎茸程度で、それを山の中で温めて食べた。火で炙れば香ばしさが増す、次第に家庭内でも火を通して食べることが一般的になった。具は、きのこ類から肉類へと広がっている。そして誕生したのが、飛騨牛朴葉味噌だ。岐阜県の高級ブランド牛が最も岐阜らしいとも言える食材・朴葉と手を組んだ。

飛騨牛の脂が味噌にとろける

そもそも岐阜県は、愛知・三重と並ぶ赤味噌地帯だ。地域特有の八丁味噌のうまみを最大限生かす調理法については長けている。飛騨牛ならではのしっかりした「刺し」の甘さが、八丁味噌のうまみと溶け込んでいく。そこに炭火で香ばしさが加われば、何物にも代えがたい飛騨のご馳走になる。

下呂でさえ鮮度抜群の刺し身が食べられる

朴葉は保存性にも貢献すると紹介した。なので、朴葉寿司にも使われる。最近はコールドチェーンが進化して、富山側からも伊勢湾・三河湾側からも新鮮な魚介が岐阜にも届くようになった。海から遠い下呂温泉にある「樽や」でも、こんなに新鮮な魚介が食べられるようになった。

朴葉寿司

その一方で、昔ながらの知恵を尽くして編み出された「山の中のお寿司」も食べ継がれている。焼いたり、酢で締めたり、長期の歩行移動に耐えられるよう加工した上で、さらにご飯と一緒に抗菌作用のある朴葉で巻いてお寿司にした。人間の知恵と工夫はすばらしい、いやそこまでして食べたい人間の食欲が素晴らしいのだろうか。

漬物ステーキ

そして漬物ステーキもまた、山深い環境での暮らしが生み出した食の工夫だ。飛騨地方で、昔から野菜が不足する冬の間に食べられていたもので、要するに屋外で保存していた漬物が寒さですっかり凍ってしまい、仕方なくをれを加熱・解凍して食べたというものだ。

卵と絡めて

朴葉の上で切り漬けを焼いて、生卵を混ぜて半熟で食べたのが始まり。飛騨地方の居酒屋では人気の定番メニューであり、朴葉でなく鉄板に油を引き漬物を焦げ目がつくまで炒め、しょうゆや味噌などで味を調えて卵でとじ、カツオブシ・紅ショウガを添えれば完成だ。

豆腐ステーキも人気

冬も後半となると、長く漬物樽の中にあった漬物は発酵が進みすぎており、酸っぱくなってしまったものが多い。これを油で炒めて食べると、浅漬けにはない酸味やコクが加わることで、何とも酒に合う味になる。漬物は油で炒めて卵と絡める「漬物ステーキ」にしたり、くったくたに煮込んで「にたくもじ」にしたりと、酒肴両面で、冬の飛騨の食として大活躍する。

味変しながら食べ進める

冬の飛騨の味としては豆腐のステーキの人気も高い。飛騨は通年で豆腐をよく食べる地域だが、冬の間は作りたての豆腐はさすがに冷たい。そこて、地元の老舗食堂「国八食堂」が鉄板焼きにして提供したところ、あっという間に人気料理になってしまったという。

季節の山菜を天ぷらで

そうそう、山菜も忘れてはいけない。特に雪解けの頃には,県内全域で様々な山菜が食べられる。ただし、種類も多く、旬も年ごとに安定していない。お店の調理人なりにお願いして、その時期最も美味しい山菜を調理してもらえるようお願いするのがベストだろう。

朝食に不可欠の明宝ハム

あと、忘れてはいけないのがハムとケチャップだ。ハムの製造が明宝でスタートしたのは1953(昭和28)年、地元農協が「村の畜産振興と山間地の食生活改善のために動物性タンパク質を」というねらいで「新農村建設国庫補助」事業で始めた事業だ。無添加、無着色の体にもやさしいケチャップ製造にも乗り出した。今では地元を挙げた大事業になっている。

明宝ケチャップ

このあたりに宿泊すれば、宿の朝食のひと品には必ず明宝ハムが添えられていると言っても過言ではないだろう。飛騨牛やけいちゃん、高山ラーメンだけではい、多くの魅力的な食文化が中濃・飛騨には広がっている。ぜひ一度足を伸ばしてみてほしい。

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