前回、茨城県央の太平洋沿岸の港町、大洗のソウルフード、たらしを紹介した。実は大洗にはもうひとつソウルフードと呼ばれている食べものがある。みつだんごだ。群馬の焼きまんじゅうや熊本のいきなり団子などと同様、他の地域にはあまり見られない、大洗ならではの個性的な菓子だ。

ちなみに、餅とだんごの違いはご存じだろうか。主に米を原料に、どちらももちもちとした食感が特徴だが、実は明確な違いがある。餅は、お正月に餅つきをするように、蒸した米など穀類をつぶして作るもの。一方だんごは、米などの穀物を粉末状にしたうえで、こねて作るものだ。そもそも調理法が異なるのだ。

さて、みつだんごは「だんご」という名前の通り、粉をこねて作ったものだ。粉は小麦粉だ。和菓子屋などでよく見かけるだんごは、もち米を原料とするもち粉やもち米を精白した後に水引し、沈殿した細かい粒子を乾燥させた白玉粉、うるち米を粉にした上新粉を使うのが一般的だ。

大洗では、練った小麦粉を型に入れて厚めのコインのように焼くのが一般的だ。家庭によっては茹でることもあるという。それを3個串に刺し、たっぷりのみつときな粉をまぶして食べる。かつては、大洗や隣接する那珂湊で広く食べられていたが、現在は取り扱う店が数を減らし、数えるほどになってしまった。とはいえ、現在でも地元民のソウルフードとして愛され続けている。

現在、大洗でみつだんごを看板に掲げて常時販売している店は「味の店たかはし」だけになってしまった。とはいえ、「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」のキャラクターが連なる商店街の一角に店を構え、週末ともなれば、ガルパンファンや一般観光客が押し寄せる人気店だ。

店の裏には駐車場もあり、駐車場へと向かうスペースには椅子とテーブルがしつらえられ、店頭こそ販売のみだが、店の脇で、できたてを座って食べることができる。しかも、注文は1本単位で可能。ひとりで訪れて、1本だけ食べてみることも可能。もちろん、大量に購入することもできる。

店頭、ガラス戸越しに注文すれば、店の中で焼きたてのだんごにみつときな粉をかけてくれる。1串75円。紙皿ではなく、きちんと陶器の皿に盛ってくれるのがうれしい。食べるとき注意したいのは、きな粉だ。たっぷりのきな粉がまぶされているので、不用意に口に入れるときな粉が舞い、咽せてしまうからだ。

温かいみつだんごは驚くほどに柔らかい。小麦粉を練ったものなので、それなりにもっと歯ごたえのあるもっちりとした食感を事前に予想していたが、なんともとろけるような柔らかさだった。蜜もたっぷりで、だんごで蜜をすくい取るように食べ進める。

店頭で食べるだけでなく、持ち帰って食べてもみた。時間をおくと、きな粉とみつが一体化して、味はみたらし風になる。とはいえ、粉感は残っていて、みつを接着剤に、きな粉がジェル状になったイメージだ。さすがにだんごは冷めるとややしっかりした食感になっていた。

大洗では、みつだんごを常時食べられる店は、「味の店たかはし」だけのようだが、那珂川を挟んで中心街が隣接するひたちなか市那珂湊にもみつだんごを取り扱う店がある。ひたちなか海浜鉄道那珂湊駅に近い商店街の中にある「あべ川木内」だ。

ただし、商品名はみつだんごではなくあべ川だ。店名にも「あべ川」、店頭のメニューにも「あべ川」とある。やはり、小麦粉を練ったものを厚めのコイン型に焼き上げ、3個串に刺してきな粉と蜜をかけたものだ。原料、調理法、見た目、すべてみつだんごの近似値だ。

ただし、食感は「味の店たかはし」よりやや歯ごたえがあった。たっぷりの蜜、きな粉は同様だった。ちなみに「名前はあべ川もちではなく、あべ川でいいのですか?」と問うたところ、即座に「もちじゃないですから」との答えだった。「小麦粉ですよね」と返すと頷いてくれた。

(写真:やはり蜜をだんごですくい取る)
「あべ川木内」も特に飲食スペースは用意されていなかったが、店内には座れるスペースがあり、「ここで食べても大丈夫ですか?」と問うと「もちろんです」と陶器の皿に盛ってくれた。黒糖入りとのこと。1串100円だった。

提供店が減ってしまったとは言え、「味の店たかはし」はけっこうな繁盛店だし、「あべ川木内」もこぎれいな店構えで、地元の人には愛されている店のようだ。大洗のソウルフードが絶滅することはおそらくないだろう。ネモフィラなどで観光の人気が高まっているひたちなか海浜公園も近く、ガルパンなど観光地としても人気が高い大洗、那珂湊。訪れた際には、ぜひみつだんご、あべ川を食べてみてほしい。




