おいしく健やかに 血合いを食べよう

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三崎港(神奈川県三浦市)は、塩釜港(宮城県塩釜市)や勝浦港(和歌山県那智勝浦町)、境港(鳥取県境港市)などと並びマグロの水揚げ量が多く、マグロのまちとして広く知られている。11月14日、そんな三崎のフィッシャリーナ・ウォーフ「うらり」内のホールで、「マグロの新たな魅力発見!~セレノネインを知る・食べる~」と題したイベントが開催された。

美味しく食べて健やかに

今回のイベントは、三浦商工会議所及びまぐろ未病改善効果研究会が主催し、神奈川県水産技術センターと国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所、そして聖マリアンナ医科大学が、それぞれマグロに含まれる抗酸化物質・セレノネインに関する研究の概要を発表した。

メバチマグロの血合い

セレノネインは、2010年に発見された、強い抗酸化作用を持つセレン含有のアミノ酸。セレンは、原子番号34の元素で、自然界に広く存在し、微量レベルであれば人体にとって必須元素といわれている。活性酸素は、呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が、通常よりも活性化された状態になること。細胞伝達物質や免疫機能として働く一方で、過剰になると細胞を傷害し、がんや心血管疾患、生活習慣病など様々な疾患をもたらす要因となる。セレノネインは、この活性酸素を除去する働きを持つ。

見た目もおいしく

発見からまだ日が浅いことから、今回研究成果を発表した3機関が、それぞれの立場で、その性質、健康に与える影響を調査・研究している。健康と病気の端境にある「未病」と呼ばれる状態では、活性酸素の除去によって病気への進行を予防できるのではないか。それが現在進められている研究の概要だ。

多くの人が集まり血合いに舌鼓を打った

ただし、血合いは有用な機能性成分を多く含むものの酸素を貯蔵・運搬する鉄を含んだミオグロビンを多く含むことから酸化しやすく、鮮度維持が難しいため、これまで捨てられてしまうことも多かった。そんな血合いを、鮮度を確保しやすいマグロのまち・三崎でおいしく調理することで、より多くの人に食べてもらおうというというのが、今回のイベントの目的だ。研究発表の後、地元の人気飲食店が開発した、マグロやカジキの血合いを使った料理の数々が提供された。

「さかな料理まつばら」の血合いの刺身

まずはシンプルに刺身から。「さかな料理まつばら」が提供したのは、メバチマグロの血合いの刺身。そもそも血合いは鮮度が落ちやすく、臭みが出やすい。そのため、捨てる前提で扱われていることも多く、余計に味が落ちやすいという。釣り上げてすぐに急速冷凍し、さらに極めて低い温度で冷凍保存、その上で急速解凍したからこそ、刺身でおいしく食べられるクオリティーを維持できるという。まさに、マグロの聖地ならではの味といえるだろう。

「海舟」の血合いのステーキエスカルゴ風

マグロと地魚が自慢の和食店「海舟」が提供したのは、メバチマグロの血合いのステーキエスカルゴ風。実はこれ、以前から「海舟」の人気ナンバーワンメニューだ。メバチマグロの血合いをステーキにし、バターとガーリックを生かしたエスカルゴ風ソースで仕上げた。「海舟」では、血合いだけでなく内臓など、マグロの様々な部位をおいしく食べることができる。

「くろば亭」の血合いのミラノ風カツレツ

やはりマグロ料理が看板メニューの「くろば亭」は、メバチマグロの血合いを使ったミラノ風カツレツを提供した。メバチマグロの血合いを骨付きのままフライパンで揚げ焼きし、スライスチーズ、トマトとデミグラスの特製ソースで仕上げた。添えられているのは、バルサミコ酢を加えて洋風に仕上げた血合いの角煮だ。臭みは皆無、しっかりした食感は肉にも通じるものがある。

「羽床総本店」のミサキ串カツ

「羽床総本店」は、新鮮なカジキを創業以来の伝統の製法で作り続けている粕漬・味噌漬のお店。シロカワカジキの血合いを使ったミサキ串カツと三浦シチュウを提供した。ミサキ串カツは、シロカワカジキの血合いとタマネギに串を打ち、フライではなく、コンパクションオーブンを使ってノンフライ調理したもの。火の通った血合いはしっかりした食感があり、「くろば亭」のカツレツと合わせ、血合いがカツに適していると感じさせる仕上がりだった。

「羽床総本店」の三浦シチュウ

三浦シチュウは、火を通すことによる血合いの歯ごたえを、煮込むことによって和らげた一品だ。シロカワカジキの血合いを地元の三浦初声高校で作られているトマトや地元の名物野菜・三浦大根と一緒に煮込んだ。煮込むことによって、濃厚な味わいとほろほろの食感を実現した。

「港楽亭」のカジキとまぐろの血合いのシュウマイ

三崎まぐろラーメンなど、まぐろを生かした中華料理で知られる「港楽亭」は、カジキとまぐろの血合いのシュウマイを提供した。シロカワカジキの血合いをミンチにし、そこにマグロの血合いの漬け焼きを合わせタマネギと香味野菜を加えたあんを、もち米で包み、蒸し上げたもの。シロカワカジキのミンチのやさしい歯触りと、マグロの血合いのしっかりした歯ごたえのコントラストが絶妙だ。しっかり味付けされているので、からしのみでいただく。

カジキとマグロの食感のコントラスト

未病改善の趣旨は、あくまで生活改善によって、病気になるのを抑制すること。もちろんセレノネインは、薬ではないので、摂取することですぐに健康状態を改善するものではない。いわゆる「カラダにいいもの」だ。健康のために野菜をたくさん食べましょう、というのと似た発想だ。その意味でも、少しずつでも食べ続けることを推奨している。食べ続けるには、おいしいことが必要不可欠だ。「良薬は口に苦し」とは逆、おいしいからこそ食べ続けられるというもの。今回提供された料理は、健康を考えずともおいしく、日常的に食べられるものばかりだった。ぜひ、三崎を訪れ、血合いも含めたマグロ料理の数々を堪能してほしい。

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