「イタリアン食べに行かない?」そう誘われたら、カルパッチョやアクアパッツア、パスタ料理などを思い浮かべるのが普通だろう。そして、パスタやスパゲッティという言葉に比べ、そこには「高級感」が漂うのではないだろうか。ジャケットは何着ていこう、靴磨かなきゃ、なんておしゃれな人は思うかもしれない。しかし、新潟県ではちょっと違う。「イタリアン食べに行かない?」と誘われた先に待っているのは、なんとやきそばだ。
![新潟が本拠の「みかづき」](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/4e3db23fe36912e2a383d0c263222a58.jpg)
新潟のイタリアンを、ひとことで言うと「パスタ風ソースのかかったやきそば」だ。もやしとともに炒めた中華麺をベースに、トマト味を基本に、多様なパスタソースがかかる。しかも、ワンコイン以下と驚くほど安い。食べられるのは、下越地方の中心都市・新潟を本拠とする「みかづき」と、中越地方・長岡を本拠とする「フレンド」の2つのチェーンだ。
![長岡が本拠の「フレンド」](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/2bc8a5252253aebe1b8f4cb1f6e624e8.jpg)
いずれもファストフードスタイルで、使い捨ての容器に盛られる。ソフトクリームやソーダなども合わせて販売されており、学生が部活帰りに小腹を満たすような感覚で食べられる。
![ソースやきそばを作り](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/cee5e88343589bf6379a8262e95ddb50.jpg)
「みかづき」のホームページによると、イタリアンの発祥は、1959(昭和34)年に遡る。当時は甘味喫茶だった「三日月」を創業した三日月晴三社長が、業界のセミナーで、東京・京橋の繁盛店「中ばし」(現在は閉店)の主人に店へ誘われる。当時「中ばし」は、甘味の傍らやきそばを販売、人気を集めていた。同じころ、浅草でもソースやきそばが流行しており、自分の店でもやきそばを提供しようということになった。
![その上にパスタソースをかければイタリアン](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/ac545d4e63ce571abbe4c4df434fdc9a.jpg)
しかし、普通のやきそばでは面白くないと、「ミートソースと粉チーズをかけて、フォークで食べる」というスパゲティ風の食べ方を思いつく。ちなみに、参考にしたのが東京のお店のため、現在も「みかづき」のイタリアンには東京製のソースが使われている。
![フォークで食べる「みかづき」のイタリアン](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/7331a5a09a5b8b1c42d2097de157fb8e.jpg)
使い捨ての小判型容器が登場したのは、1964(昭和39)年に、近隣の小中学校のバザーに出店を依頼されたのがきっかけだ。当時は、新潟地震の直後で都市ガスの復旧が遅れており、当初は店で作った料理を会場に持ち込む段取りになっていた。
![「フレンド」は店内で食べるとお皿のような容器だった](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/e8fc4599f080a63e25d9512c1d2523ff.jpg)
しかし、社長が温かいイタリアンの提供にこだわり、店で使っているプロパンガスをバザー会場に持ち込み調理することになった。これが喜ばれ、その後、あちこちの野外イベントから声がかかるようになる。しかし、よくある白い四角い紙パックでは、蓋の部分にミートソースがくっついてしまう。
![ドーム型の蓋はソースがくっつかない](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/65887721cd92cd7892e45ac7fac00859.jpg)
そこで、当時店で使っていたステンレスの銀皿を参考に、同じ小判型で高さがあり、冷めにくい現在の容器を考案、カスタムメードに応じてくれる業者を探し出し、金型からオリジナルで容器を作り上げた。
![「フレンド」のテイクアウト容器](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/17a9e05f9bd04642c2ce150029709a5b.jpg)
また、三日月晴三社長と「フレンド」の創業社長である木村政雄氏は、イタリアン誕生以前からの盟友だったそうで、現在も上越・下越で商圏を分け合い、共存共栄の関係にある。しかし、そこで提供するイタリアンにはそれぞれ個性があり、よく似てはいるが、特有のアイコンがある。
![「みかづき」は麺が四角くやや太め](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/4db9315476d1c9b0d0ce1cecfa9426ff.jpg)
新潟の「みかづき」は、麺が四角くやや太め。付け合わせは白生姜。食べるのはフォークだ。一方、長岡の「フレンド」は、麺が丸くやや細め。付け合わせは紅生姜。食べるのは割り箸だ。また、「フレンド」ではイタリアンだけでなくギョウザも主力メニューになっている。
![「フレンド」は麺が丸くやや細め](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/dfe29ccd56aa42b5b5f67854df640683.jpg)
「みかづき」は、パスタソースをかけなければ、やきそばそのものだ。
![「みかづき」は白生姜](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/7462b1d6f61bea88f115913b4009f247.jpg)
一方「フレンド」は、昭和の給食でおなじみの、ミートソースをかけて食べるソフト麺のような感覚だ。どちらかといえば、「スパゲティミートソース」に近い感覚。ただし、決して「パスタ」ではない。
![「フレンド」は紅生姜、フォークではなく箸で食べる](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/1f48c0ca7aa4233cb4962dbb45aa0323.jpg)
両店とも、トマトベースのデフォルトのイタリアンの他に、カレーソースも選ぶことができる。また、「みかづき」にはホワイトソースの、「フレンド」にはオムレツスタイルのイタリアンもある。
![「フレンド」のオムレツイタリアン](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/e65b87dd74c439f2b1ea0cdfe9d65804.jpg)
「フレンド」、「みかづき」とも新潟県内のみの出店で、県外の人はなかなかお目にかかれないご当地メニューだ。ただ、新潟のアンテナショップなどでは袋入りのインスタントのイタリアンは手に入る。さらに「みかづき」には冷凍イタリアンもあり、取り寄せて食べることもできる。
![「フレンド」喜多町店のドライブスルー](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/ab3e36a019caaa1e62bf5237e8cdca26.jpg)
ちなみに、国道8号線沿いにある「フレンド」の喜多町店は、1977(昭和52)年に、日本で最初にドライブスルーでの販売を始めた店舗と言われている。現在でも「日本初のドライブスルー」は健在だ。やや狭めのレーンに歴史を感じる。
![「みかづき」のホワイトイタリアン](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/07/fd6cd6ccad7b08e2fcdc73bd394ac45a.jpg)
新潟以外ではなかなか食べることができないイタリアン。エキナカやロードサイドで気軽に食べられるものなので、現地に行った際にはぜひ食べてみてほしい。