煮物や田楽など日本全国で幅広く食べられているこんにゃく。生産も列島各地で行われていると思いがちだが、実は国内生産量の9割以上が群馬県で生産されている。県内でも山がちな北部が生産の中心になる。しかし江戸時代には、水戸藩が久慈郡を中心にこんにゃく栽培を奨励、藩の専売品とし江戸に蒟蒻会所を設けて販売していた。
![こんにゃく料理いろいろ](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/ef2939116e5ff3457d25ce95951325cf.jpg)
こんにゃくの原料が芋だということを知らない人もいるだろう。あのぷるぷるとした食感は、実はジャガイモやサツマイモなどと同様の、土の中から掘り起こす芋から作られている。原産地はアジアで、縄文時代に海伝いに伝わったという説と仏教の伝来とともに日本に伝えられたという説がある。ちなみに、アジアでは、そのグロテスクな形から「象の足」や「魔芋」などとも呼ばれている。
![群馬県内のこんにゃく畑](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/b4a92e3b631fc7f536b6b2c577aa92cc.jpg)
こんにゃくの作り方はとても手がかかる。まず、芋の生産。こんにゃくの材料となるまで成長するのに2~3年かかる。年間平均気温13度以下では育成できず、春に種芋を植えたら、秋にはいったん収穫、5度以下にならないように貯蔵し、春を迎えると再び植えるという手間のかかりようだ。しかも、直射日光、強い風、水はけの悪さは大敵で、葉に傷が付いただけでも成長に支障が生じるほどデリケートだ。
![こんにゃくの原料、巨大なこんにゃく芋](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/c6fdfafd55288ddbb1c5d565e758b489.jpg)
芋にはえぐみがあり、そのままでは食べられない。適度な大きさに育ったこんにゃく芋はよく洗って土を落とし、皮をむき、根や芽を取り除く。山芋などと同様、生の芋を触るとかゆみが生じることがあるので注意が必要だ。生芋はすりおろしたり、ミキサーで粉砕したりする。これに湯を加えてとろ火にかけ、焦げないようかき混ぜながら煮る。色が白からこんにゃく色に変わり、糸を引くような粘りが出てきたら、火を止め、灰汁、現代であれば水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムといった溶液を加えて手早くかき混ぜるとのり状になる。これをすくいとって湯がけば、あのぷるぷるしたこんにゃくになる。
![カラフルなこんにゃくはデザートにも](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/356d18f7969cc0915c7aabce2dc55b59.jpg)
ちなみに、こんにゃくはアルカリ性のため、あくの強い野菜を加えると色素と反応、色鮮やかに変身する。ゴボウを加えれば緑の、サトイモならピンクの、タマネギなら黄色のこんにゃくができ上がる。さらに、刺身こんにゃくなどの味のバリエーションも自在に作れる。
![こんにゃく粉](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/b4ac1e1f4b0a7e9386a3a842fd8db730.jpg)
化学反応まで加えるなど手間のかかるこんにゃくづくりだが、こんにゃく芋を乾燥して粉砕し、粉末状にする技術を開発したのが水戸藩だった。粉末なら長期保存も可能なうえ、お湯で溶いて溶液を加えれば、簡単にこんにゃくができ上がる。
![工業化されたこんにゃく工場](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/33a3d461acd8762fe8aac786d7c62233.jpg)
明治になると水戸藩がなくなり、茨城県外でも生産が始まり、群馬県をはじめ全国にこんにゃくの製造が広がった。そもそも群馬県の地質がこんにゃく芋の栽培に適していたうえ、山がちな地形で急流が多く、乾燥芋を粉砕して粉にする水車にも困らなかった。さらには、富岡製糸場をはじめ、明治期に多くの工場が建てられたことから工業技術が進化、こんにゃく製造の工業化も発達した。
![甘楽郡甘楽町にあるこんにゃくパーク](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/385f3e31ed1107b9a8556c4b69a889c5.jpg)
不遇の時代もあった。戦時中に食糧不足から畑がサツマイモの生産に切り替えられるとともに、風船爆弾製造用の糊として使われたこともあり、食用の需要が低下してしまう。しかし戦後、それまで山間地でしか生産できなかったこんにゃく芋を品種改良し、平地でも生産できるようになると、群馬県での生産がさらに盛んになった。こうして、群馬県のこんにゃくは他県を圧倒する名産品となった。
![大人気の無料試食コーナー](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/0f4fb60cb920ec904712ce5468b1f3e5.jpg)
そんなこんにゃく県・群馬にはこんにゃくのテーマパークもある。甘楽郡甘楽町に本社・製造拠点を置くこんにゃくメーカー・ヨコオデイリーフーズが、工場に併設して、こんにゃくの歴史や製造方法を学ぶとともに様々なこんにゃく料理が味わえる「こんにゃくパーク」を展開している。
![シャワーのようにこんにゃく麺を射出](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/f1ece59aaa887f108e9369ebadc97001.jpg)
工場見学に加え、試食も無料で、休日には多くの来場者でにぎわう。工場は、上床に備えられた通路から、こんにゃくの製造過程を見ることができる。シャワーのようにこんにゃく原料を射出し、しらたきを作る様子は必見だ。
![こんにゃく麺のラーメンも](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/7da0c40ebbb7ba3b2014203cf6876ccf.jpg)
試食会場は食べ放題。田楽や煮物といった定番の他に、しらたきの射出技術を応用したこんにゃくのラーメンややきそばもある。カロリーの低いこんにゃくだけに、ダイエットにも好都合だ。
![こんにゃくでレバ刺しを再現](https://www.gastronomy.town/wp-content/uploads/2021/03/8a6cf05de08d681cf5fabb7541502d7b.jpg)
さらには食中毒のリスクから食べられなくなったレバ刺しの味と食感を再現したこんにゃくもある。イカスミを加えるなどしてレバーの味わいを再現。色は、派手好きの織田信長が作らせたという説もある滋賀県の赤こんにゃくの手法で、食用の酸化鉄を加え、生レバーの赤さを再現した。
そのほかデザートなど、定番から創作まで様々なこんにゃく料理が味わえ、おみやげを買って帰ることもできる。こんにゃく好きなら一度は立ち寄りたい施設だ。