若狭の逸品「美浜へしこ」(1)

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別格のさばづけ 若狭地方「美浜へしこ」 ぬかまで旨い伝統の熟成文化がのこった理由わけ

ぬか漬けといえば、一般的にはたくわんなどの野菜の漬物を想像するでしょう。しかし北陸地方には、魚のぬか漬け文化が存在するのをご存じでしょうか。ぬか漬けが根付いた時期は、はっきりとはしていないのですが、江戸時代だとする説が有力です。

全国各地に様々な種類の野菜のぬか漬がありますが、実は魚のぬか漬けも以前は全国各地津々浦々に存在していたようです。それが現在では、北陸地方と北海道の一部にみられるくらいになっています。

もともと漬物が漬けられた理由は、野菜が取れない冬の栄養源や、海が荒れて魚がとれないときのたんぱく源の確保が目的だったといわれています。家庭に冷蔵庫などがない時代の、長期保存ができなかった頃の生活の知恵だったのでしょう。ところが現在、冷凍・冷蔵技術が発達したことで、保存目的で漬物をつける必要はなくなったわけですが、漬物は全国各地に存在します。

漬物は日本の伝統食文化

保存目的がなくなったのに残っている主な理由は、当然味の良さにありました。近年、都市部の家庭で漬物をつける姿は見なくなりましたが、地方に行けばまだまだ自家製の漬物は残っています。こちらは味もさることながら、食文化・食習慣として継承されていると考えられ、昨今ではその栄養価の高さ、健康効果についても注目を集めています。

さて、野菜の漬物が全国各地に残っているのに対して、魚の漬物は一部にしか残っていません。その理由の一つとして、漬け込むのに半年から長いものでは2年といった、恐ろしく時間と手間がかかることが推測されます。しかしそれでも残っている魚の漬物は、言うまでもなく味が良いからだといえるでしょう。

へしこの刺身を大根やキュウリとともに

北陸地方の魚のぬか漬けは、福井県を中心とした「へしこ」、石川県の「こんか漬け」が知られています。「へしこ」は「圧込(へしこ)む」が語源となっているという説が有力で、「さばのへしこ」がよく知られています。「こんか漬け」は「小糠(こぬか)漬け」のなまったもので、「こんかいわし」が有名です。

福井県内でも少しずつ「へしこ」の作り方が違うのですが、美浜町のへしこは県民からもおいしいと高い評価を得ています。その味の良さが注目されたエピソードがあります。以前、「所さんの笑ってコラえて」という番組のスペシャルで、所ジョージさんの還暦のお祝いに喜ぶものを届ける、という企画がありました。

明石家さんまさんが所さんの好きなへしこのおいしいやつを、ということで福井県美浜町に日本一の鯖のへしこをわざわざ買いに来るというもので、番組放送後は一時期入手困難なったほどでした。現在は比較的に手に入りやすくなっていますが、そもそも半年から、長くて2年かけて発酵熟成される伝統製法なので、急に生産を増やせるものではありません。

樽上げ前のサバのへしこ

へしこの歴史は300年以上ありますが、美浜町ではほかの町と少し作り方が違っていました。ふつうは塩と糠だけで漬けるのですが、美浜ではそこに日本酒をあわせていたという文献が残っています。これは美浜へしこの味の良さの追求につながる原点ではないかといわれています。

美浜のへしこ作りは、塩漬けから本漬けの二段仕込みの過程で、秘伝のへしこの仕込みだれ「特製へしこみダレ」や、地元酒蔵の純米大吟醸の酒かすなどを使うなど工夫を凝らした美浜へしこは、糠までうまいものとなります。糠をあぶってつまみにする人もいるほどです。

「早瀬浦」を醸す三宅彦右衛門酒造

現在、町内の酒蔵は、なかなか県外には出回らない銘酒「早瀬浦」を擁する「三宅彦右衛門酒造」のひと蔵だけですが、江戸時代には北前船の風待ち港として栄えた町の狭い範囲に3つの酒蔵があり、数十年前まではそれらの酒蔵が残っていました。

多くの人が行き交い、若狭湾の美味しい魚、いい日本酒があったという地域性からか、少なくとも昔から美味しさには敏感な風土があり、現在も味にこだわった作り方が残っているのではないでしょうか。

保存性だけではない、味の優れた魚の糠漬けは、ここ若狭地方で手間暇をかけた郷土の誇れる食文化として、現代まで引き継がれているのです。

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