ザ・昭和の中華そば 高山ラーメン

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岐阜県北部、飛騨地方に位置する高山市は、全国の市区町村で、実は最も面積が広い市だ。もちろん、その多くが山林だが、古くから町並みも発達し、さんまちの狭い通りには、数多くの小さな博物館や、江戸時代から続く木造の商家が並ぶ人気の観光都市だ。そんな高山のソウルフードが高山ラーメンだ。

「そば」といえば中華麺

甲信越の山深い地域で「そば」というとたいがい日本そばだが、高山では歴史あるまちにもかかわらず、「そば」というと、間違いなく中華そばをイメージさせる。「日本そば」とあえて言わない限り、出てくるのはラーメンばかりだ。年越しそばですらラーメンを食べるほど、ラーメン好きのまちなのだ。

高山ラーメン

では、より中華風の味わいかといえば、その味は和風。さらに特徴的なのはスープで、寸胴の時点ですでにスープが完成していること。鶏ガラやとんこつなどをよく煮てだしを引き、しょうゆや塩などのタレと合わせてスープを作るのが一般的だが、高山では後から加えるのではなく、だしを引いている段階で、すでに調味料が加えられている。

和風の味わいを引き出したスープ

鶏ガラやとんこつなどに加え、煮干し、カツオブシ等の和風の味わいを引き出し、さらには野菜からも甘みをダシとして取り入れる。また、メニュー名も「ラーメン」ではなく「中華そば」となっていることが多い。

「鼓」

ラーメンというネーミングを使う店はほとんどない。店構えも、古い街並みの中に同化したデザインが意識されていて、ラーメンチェーンや町中華によく見られる赤や黄色を多用した派手なものではない。あくまでも「高山」というまちに馴染んだ「中華そば」なのだ。

「まさごそば」

実際に高山のまちに出て「中華そば」を食べてみよう。まずは、1938(昭和13)年創業の「まさごそば」は、屋台からスタートしたという高山ラーメン元祖の店だ。確かに漢字とひらがなばかりの看板に、木目調の店の装いもあり、高山のまちによく馴染む和風の佇まいだ。

お店を紹介するパンフ

そろってPRしようとしているのか、各店にはがきサイズに同じ意匠のお店を紹介するパンフレットが用意されており、「まさごそば」のそれには大きく「元祖」と記されていた。メニュー名はもちろん「中華そば」で、品揃えはラーメンの他はビールとライスのみと非常に潔がいい。

手前が(中)、奥が(小)

共通パンフレットもそうだが、最も嬉しかったのが各店に「小」サイズが用意されている点だ。これは、高山ラーメンを複数軒食べ歩きたい人にとっては非常に素晴らしいシステムなのだ。少しずつ多くの店の味を確認できるというわけだ。

麺量50グラムとはいえ500円は爆安?

しかもメニュー見ると「中華そば(小)麺量50グラム」が500円、「中華そば(中)麺量100グラム」が1000円。そして「中華そば(大)麺量150グラム」が1500円という価格設定。ちなみに小を頼んでみたが、確かに麺の量に応じた価格設定かもしれないが、スープやトッピングのコストを考えると、(小)は爆安だと思った。

縮れの強い平打ちの細麺

麺は縮れの強い平打ちの細麺。くせの少ないしょうゆベースのスープだが、縮れの強さが、スープがよく麺に絡みつき、味わい深くしてくれている。しょうゆラーメンの王道のような味で、油はすっきりと、だしのうまみも他を押しのけて前に出てくるようなものではない。

しっかりと脂身を身にまとったチャーシュー

しっかりと脂身を身にまとったチャーシューは、ややもするとあっさりしすぎと感じさせるほどすっきりと仕上げたスープに適度な脂を添えてくれる。黒い濃いしょうゆ色とあいまって控えめながらしっかりと自己主張は忘れない感じだ。

「鼓」の中華麺

続いて「鼓」だ。こちらも「まさごそば」の後塵こそ拝するものの1956(昭和31)年創業と61年の歴史を誇る老舗だ。煮干しやこんぶなどを生かした魚介系ととんこつや鶏油などを生かした動物系とのダブルスープが特徴になっている。メニューに大中小を揃えるのは「まさごそば」同様だったが「お子様中華」600円、中華そば900円、大盛中華1100円という価格設定だった。原価計算するとそうなるのかな。

「鼓」のワンタン麺

違っていたのはバリエーションだ。ワンタン麺とチャーシュー麺、冷やし中華が中華そばの他に用意されていた。まず、ワンタン麺と中華麺の食感の違いがここまで大きく出たことにびっくりした。ワンタンの「つるんつるん感」がなんとも言えず快感なのだ。

「鼓」の冷やし中華
「鼓」の冷やし中華

そして、冷やし中華。事前予想は一般的に酢を効かせたタレが掛かっているものだったが、実際に口をつけてみると、タレではなく冷やしたスープだった。しかも、冷やすと脂が固まるのか、スープが温かいものとは別のものになっていた。喜多方「坂内食堂」が特徴的な清湯豚骨のスープを、冷やしではかつおぶしに変えているのと同様だ。高山ラーメンには、「味のばらつきが少ない」というイメージを抱いていただけに、今後、特に夏には冷やし高山ラーメンを見つけたら、気を配るようにしよう。

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