5月27日、郡山市立美術館に行く。「北斎・広重 大浮世絵展」をやっている。会期末が近づいたので、その日の朝に思い立った。市立美術館は市の東のはずれにある。ほかの地方都市の多くが観光客を意識して美術館や博物館を中心地に置いているのとは対照的だ。並木道の切れ目から駐車場に入ると、美術館の建物まで長い屋根付きの道がある。右に見えるのはカフェ。昼時とあって外からでもほとんどのテーブルが埋まっているのがわかる。敷地の片隅に「へびに注意」の看板がある。

この展覧会は意欲的だ。歌川広重の「東海道五十三次」と葛飾北斎の同名の作品を展示している。北斎の「富嶽三十六景」はとても好きな作品で、中でも気に入っている「神奈川沖浪裏」や「凱風快晴」と再会できてうれしかった。対して広重は「名所江戸百景」が並び、両者の画風の違いを際立たせている。美人画あり、滑稽画あり、肉筆画ありと見どころ満載だった。

見終わって外に出ると小腹が空いていた。
「そうだ、あそこに行こう」
三春の滝桜を見物した折、地元で有名なラーメン店「とらや分店 田村や」は花見ついでに押しかけた客で早々とスープだか麺だかが品切れになり、食べることが叶わなかった。今日は平日だから大丈夫ではないか。

そう思って店に行くと、先客が2人、店の外で待っていた。それぐらいなら並べばじきに順番が巡ってくるだろう。やがて先客が呼ばれて店内に消えたので、私も入口の先にある椅子に腰かけて声が掛かるのを待った。
ラーメンを食べるのにもたもたする客はいない。若い男女も年配者もズルズルと勢いよく麺を啜り上げ、ゴクゴクとスープを飲んでは店を後にする。その都度、厨房から「ありがとうございます」という店主の声が聞こえ、適度な声量と声音に誠実さが滲んでいる。

ほどなくカウンター席に通された。ワンタンメン(税込み1180円)を注文する。店内の様子に目をやっているうちに湯気が立つ丼が登場した。

外見は正統派。なるとが入り、メンマはチャーシューの下に潜んでいる。スープを啜るとほのかに魚介系の味がして、醤油のわずかな甘さに東北を感じる。味わいもまた正統派だ。この店は本家伝来の手打ち麺を使っていて、噛み心地、のど越しともに申し分がない。見事と言っていいだろう。
店があるのは三春町だが、その近さから郡山市内と言っていい距離感だ。市内のラーメンだと「支那そば 正月屋」と「春木屋郡山分店」が双璧で、喜多方ラーメンの看板も目に付くけれど、居ながらにして白河ラーメンの名店の味を楽しめるのはありがたい。また行きたくなりそうだ。




