能登半島の付け根に位置し、石川県と県境を接する富山県氷見市。人口減少が続き、さほど大きくないまちだが、名物料理に事欠かないグルメなまちだ。冬の「ひみの寒ぶり」を筆頭に「氷見」がその名についた名物料理が多数ある。その一つが、日本三大手延べうどんの一つに数えられる氷見うどんだ。

その歴史は、江戸中期1751(宝暦元)年にまで遡る。市内伊勢大町に店舗を構える「高岡屋本舗」創業初代・弥三右衛門が、輪島市総持寺のうどんや、同じく輪島のそうめん座の技術などを採り入れ、「糸うどん」の製法を編み出した。以来、この「糸うどん」「氷見糸うどん」が加賀藩前田家の御用達うどんとして献上され続けてきた。

手延べうどんの最大の特徴はその製法にある。讃岐うどんなどは、打ち上がった生地を包丁を使って麺に切って行くのに対し、氷見うどんなど手延べうどんは生地を細長く延ばしていき、最後は2本の棒に巻き付けてそれを引っ張るなどして、切らずに麺を作っていく。

手延べ麺は製造途上で麺が折れにくいようあえてコシを抑えるものが多いが、氷見うどんはあえてリスクを冒して、コシも加える。さらに、時間をかけて熟成を重ねながら引き伸ばしていくので、ツルツルとした滑らかなのど越し、強いコシ、そしてモチモチとした食感が揃うことになる。切るのではなく引き伸ばすため、断面が丸く、煮崩れしにくい点も特徴だ。では実際に、氷見うどんを食べてみよう。

蛇足だが、歴史をたどれば分かるのだが、氷見うどんは元々「高岡屋本舗」が生み出したものだが、「氷見うどん」の商標を登録しているのは1994年創業の「海津屋」だ。「海津屋」もそもそも「高岡屋本舗」出身者が創業しているので、大きく味が変わるわけではない。また、「高岡屋本舗」が麺の販売に徹しているのに対し、「海津屋」は本店敷地内でアンテナショップも営業しており、その場で食べられるのが特徴だ。

まずは「高岡屋本舗」を訪れて乾麺を買う。氷見うどんは麺のバリエーションが多いのが特徴だ。太さは細麺と太麺がある。また、乾麺が基本だが、半生麺もある。昔ながらの製法にこだわる「一糸伝承」もある。まずは一度食べてみて、好みの食べ方、好みの太さを探し出すのがいいだろう。

とりあえず「高岡屋本舗」は自宅で食べるとして、少し離れた「うどん茶屋海津屋」に向かう。人気店のようで開店の30分ほど前から入店待ちの行列ができはじめた。2010年の開店だが、短期間のうちに人気店になったのだろう。やはり麺の太さにはバリエーションがあるので、麺選びと並行して、食べ方も考える。

基本は細麺のようで、メニューの大半は細麺を使用する。太麺を使うのは、温かいカレーうどんと鍋焼きうどんのみだ。ざるうどん、かけうどんを基本に、天ぷらを添えたり、あんかけや肉うどんもある。こちらもやはり、多くのメニューの中から好みを見つけ出す作業が必要だろう。

また、冷たい麺と温かい麺を食べ比べるもの、氷見うどんを美味しく味わうための秘訣だそうだ。ここはオーソドックスに、冷たい麺はざるうどんで、温かい麺はかけうどんで注文する。さらに太麺も味わうべく、カレーうどんも合わせて注文した。

まずは基本中の基本ざるうどんからだ。とにかく食感の良さに驚いた。非常につるつるなのだ。それでいて、噛むとしっかりコシがある。表面がつるつるで、たれの味をはじいてしまうのか、西日本にしてはやや濃いめのつけ汁になっていた。その味わいも、麺そのものの美味しさを引き立たせる。冷細、温細、太麺の中で最も心動かされた味だった。

温かい麺を温かいつゆに浸したかけうどんは、いかいにも「富山の味」といった感覚だ。温かくすると、同じ細麺ながら、コシがすっとほどけていく感じだ。もちろん九州のうどんのような柔麺ではない。コシの角が取れたといった感覚だろうか。昆布だしの透き通ったつゆに昆布巻きのかまぼこだけのシンプルな風景は、まさに富山そのものだ。

カレーはつゆのスパイシーさが刺激的だった。ベースは昆布だけではないだろう、しっぱりスパイスを効かせながら、その根底にはしっかり和風のテイストが残っている。味わえば、まさにそば屋・うどん屋のカレーうどんだ。その濃厚な汁を太麺がしっかりと受け止める。かけうどんとは対照的な味わいが、カレーうどんには太麺を要求するかのようだ。

買ってきた麺を自宅で茹でてみた。乾麺の多くは7~12、3分の茹で時間だったが、「海津屋」の半生太めんのパッケージには中火で24分とあった。かなりたっぷりの茹で時間だ。中火でじっくりと茹で上がるのを待つ。茹で上がると麺にはかなりのぬめりがあった。冷水でよくぬめりを洗ってからざるに盛る。

半生麺はもっちりとした食感が特徴だ。つるつる感は細麺同様だった。長時間茹でたにもかかわらず、非常にしっかりした食感で、小麦の味も濃厚だ。東日本の舌には、昆布ではなく、かつお節でしっかりに出した濃いめんつゆで食べると美味しいと感じだ。

乾麺であれば、常温で流通するので、比較的手軽に取り寄せも可能だ。東京であれば、日本橋や日比谷などに富山県のアンテナショップもある。埼玉や武蔵野の生麺うどんに慣れた関東人の舌には、かなり魅力的な歯触り、のどごしだ。ぜひ自宅で茹でて食べてみてほしい。




