西東京の油そばの回でもご紹介したように、東京のJR中央線沿線は大学が多く、学生街には若者向けの安くてボリュームのあるメニューが多い。油そばの「三幸」と同じ、国立で発祥し、その後チェーン店化とともに全国に広がったメニューにすた丼がある。にんにくを効かせた豚肉を使った、いわゆる「スタミナ丼」だ。

誕生したのは、国立駅南口から富士見通りを10分少々歩いたところにある「サッポロラーメン国立店」。1971年に元ボクサーの橋本省三氏がこの地で創業した。すた丼は、「安くて旨いものを腹いっぱい食べさせたい」という想いから、まかない飯として誕生した。これが学生に人気のメニューとして定着、同店の看板料理となった。

「サッポロラーメン国立店」は現在でもすた丼の他ラーメンも提供するラーメン店だが、すた丼人気に目をつけて当時となり駅だった国分寺駅前に、すた丼を専門とする「元祖すた丼の店国分寺店スタミナ飯店」(現在は「名物すた丼の店国分寺店」)を開業する。さらに国立にもすた丼専門の「名物すた丼の店国立東店」(現在は「本家すた丼の店国立店」)を開業する。

2004年からは、国分寺店と国立東店が、屋号を「伝説のすた丼店」と改め、多店舗展開を開始する。現在は国内31都道府県に店舗を展開、海外にも4店舗を展開している(2026年1月現在)。その経緯で、発祥店の「サッポロラーメン国立店」は別法人、「名物すた丼の店国分寺店」「名物すた丼の店国立東店」両店は、屋号こそ違うが、提供しているすた丼は、チェーン店のすた丼そのものである。

「伝説のすた丼屋」のホームページによれば、その味は「豚バラ肉と長ネギを炒めて、ニンニクを効かせたしょうゆベースのたれで味付け。のりとたくあんをのせた500グラムの丼ご飯に盛りつける。完成まで3分。モヤシのみそ汁と生卵が付く。秘伝のニンニクしょうゆだれで味付けしたガッツリ濃い味の豚肉と、並盛でもお茶碗3杯分ある圧巻のボリュームは、まさにスタミナ抜群!」だそうだ。

まずは、元祖店に敬意を表して別法人の「サッポロラーメン国立店」から訪れてみた。券売機などを備えるチェーン店とは趣が全く異なる昔ながらの店構えだ。店内も古びたテーブルや雑然としたカウンターなど、いかにも「歴史のある店」を感じさせる。ラーメンを中心にメニューのバリエーションの多さもチェーン店との違いだ。

調理は手早い。あっという間にすた丼が配膳されてきた。一見してご飯の量が非常に多い。普通盛りだが、明らかに丼いっぱいにご飯が盛られ、その上に肉が山となってのっている。以前普通盛りを食べた際、あまりのご飯の多さに肉とのバランスの悪さを感じたため、今回は肉増しで注文した。腹には堪えるが、肉とご飯のバランスは正解だった。

肉はチェーン店よりやや厚めに感じた。バラ肉ながら、赤身部分に結構歯ごたえがある。ねぎもチェーン店に比べ存在感が高い気がした。肉とご飯の間には海苔。これはチェーン店でも継承されている。ニンニクしょうゆ味の刺激的な豚バラ炒めの中に、時折海苔の味が挟まるといいアクセントになる。

2枚のたくあんもチェーン店同様だ。肉増しにしたこともあるが、とにかくご飯の量が多く、完食には苦労した。しかしこの刺激的な味とボリューム感こそがすた丼の最大の特徴と言えるだろう。国立駅までの10分と少しの歩きは、ある意味腹ごなしにはちょうどいいかもしれない。

続いて、チェーンの「伝説のすた丼屋」を訪れた。フランチャイズ店も含めると、結構な店舗数だ。発祥の東京を中心に、関東地方だけで言えば全県に店舗がある。味的には、「サッポロラーメン国立店」とは大きな差はない。しょうゆ約6リットルに対して1キログラムのニンニクをミキサーにかけて投入するというその刺激的な味が魅力だ。風味と香りを大切にするため、たれの仕上げは店舗ごとで行っているという。

冒頭に触れたように、そもそもはすた丼専門店としてスタートしているが、近年店舗数が増えるに従い、メニューのバリエーションも増えている。ニンニクを効かせた鶏の唐揚げやカレー、さらにはラーメン、油そばまでメニューが広がっている。さらには豚肉だけでなく、牛肉やもつなども使ったメニューも登場している。個人的には、昨年冬限定で登場した肉だくあんかけすた丼がお気に入りだ。

また、毎月29日と2月9日は「肉の日」として、トッピングの肉が無料で1・5倍になるサービスも人気になっている。「名物すた丼の店国分寺店」と「本家すた丼の店国立店」は屋号や看板のデザインなどが異なっているが、店の中に入れば、メニューやシステムは他のチェーン店と一緒だ。

さらに、2011年に設立した「情熱のすためしどんどん」も東京都、埼玉県、神奈川県の1都2県で多店舗展開している。系列の「横浜家系ラーメン壱角家」の一部店舗でもすためしが食べられる。豚のバラ肉をニンニクしょうゆで味付けしたものをのせた丼めしで、ほぼすた丼と同じ物だ。

関東では牛肉よりも豚肉を好む傾向が強いと言われている。牛丼がチェーン店化をきっかけに広く国民食とさえ呼ばれるようになったことを考えると、今後すた丼の知名度がさらに高まることも考えられるだろう。近くにすた丼を出す店ができたら、一度食べてみることをお薦めしたい。




