汁麺感覚の汁なし麺 新潟麻婆ラーメン

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新潟市は、外食時のラーメンへの世帯支出額で全国1位の座を山形市と激しく争うラーメンシティーだ。その背景には、新潟あっさり醤油ラーメン、新潟濃厚味噌ラーメン、燕三条背脂ラーメン、長岡生姜醤油ラーメン、三条カレーラーメンの新潟5大ラーメンと呼ばれる県内各地の豊富なご当地ラーメンの存在がある。これに加え、近年、新潟6番目のラーメンとさえ呼ばれるようになった人気ラーメンが勢力を拡げている。新潟麻婆ラーメンだ。

トッピングに麻婆豆腐がのったラーメン

新潟麻婆ラーメンは、その名の通り、トッピングに麻婆豆腐がのったラーメンで、その台頭は、約10年前の2014年のこと。当時はタンタンメンなど辛味を効かせたラーメンが流行、その流れから、新潟では麻婆豆腐をトッピングする動きが始まったという。そもそも新潟では、濃厚なラーメンが好まれていたことから、スープの濃厚さと麻婆豆腐の辛味とが融合、人気が高まっていった。

汁なしながらスープパスタのような深皿で

新潟麻婆ラーメンには、スープを張った通常のラーメンに麻婆豆腐をトッピングした「汁あり」とたっぷりの麻婆豆腐を麺に直接かけた「汁なし」とがある。「汁あり」は、新潟以外でも取り扱う店が見かけられるが、新潟で特に注目したいのは、あんかけながら、あんの量が多い独特の「汁なし」の存在だ。

「和風とんこつたまる屋」

そんな、汁なし新潟麻婆ラーメンの元祖的存在と言われているのが、「和風とんこつたまる屋」の背脂マーボーメンだ。背脂を振りかけた魚介豚骨スープの「イマドキのラーメン店」で、汁なしと汁ありを選択できる店が多い新潟麻婆ラーメン提供店の中にあって、同店は汁なしのみになっている。今風のお店らしく、背脂だけでなくチーズまでトッピングされている。一瞬、麻婆豆腐との相性を疑う組み合わせだが、これが実によくマッチしている。

背脂マーボーメン

配膳されてきた器は、ラーメンどんぶりではなく、底の浅い、スープパスタに使うような深皿だ。丼の表面は背脂とチーズがいっぱいで、麺の存在を確認できないほど。「汁なし」というだけに、当初はあんかけ麺のようなスタイルを想像していたが、見事に裏切られた。とろみのついたあんではあるものの、麺とあんの配分は、スープ麺の感覚に近いものだった。あんを麺に絡めて食べるというよりも、麺をすすりつつ、スプーンであんもすくって食べるという感覚だ。

山椒やラー油で味変も

メニューには、酢、ラー油、山椒で味変も楽しめるとある。味変しながら食べるのをあえて店側が推すのも今風と言える。豚骨出しで、背脂もたっぷりなので、相当に濃厚な味わいだ。これに山椒やラー油を足すといっそう刺激的な味になる。ただし、あまり刺激物を入れ過ぎると、ただでさえ背脂やチーズのインパクトに麻婆豆腐がやや押され気味なので、麻婆豆腐の持ち味をしっかり味わうには、味変はちょっと控えめがいいかもしれない。とはいえ、全体のインパクトは絶大だ。ブームをけん引したというのも納得だ。

「ラーメン工房まるしん」

続いて訪れたのは、新潟麻婆ラーメン提供店の中で、今最も人気が高いと言われている「ラーメン工房まるしん」だ。そもそもは新潟のつけ麺のパイオニア的なお店だが、近年は、マーボー麺を求めるファンが連日行列を作っている。大行列の噂を聞きつけ、開店時間午前11時の1時間前に店に到着したが、その5分後には行列客が現れ始めた。定刻より15分ほど早く店が開いたにもかかわらず、開店前から並びながらも入店できずに空き席を待つ人が相次いだ。確かにかなりの人気ぶりだ。

汁なしマーボー麺

汁なしマーボー麺は、やはりラーメンどんぶりではなく、かといって平皿でもない、少し深めの皿に盛られて登場した。人気の秘訣は、麻婆ラーメンとしてのバランスの良さだろうか。例えて言うなら、「和風とんこつたまる屋」が「イマドキのラーメン店」なのに対し、「ラーメン工房まるしん」は町中華の感覚だ。その見た目からも分かるように、丼を覆う麻婆豆腐に、本格中華の装いはない。片栗粉多め、ややもっちりしたあんの麻婆豆腐だ。辛さも控えめ。色も赤よりも茶色に近い。

とろみの強いあんを麺にしっかり絡ませる

しかしこれが、麻婆ラーメンとしては、絶妙にいいバランスなのだ。本格中華の四川風麻婆豆腐なら、とろみを強くしてもったりとゆで麺の上に汁っぽくかけることが果たしてマッチするだろうか。本格ではなく、日本人の舌に合わせたような調理こそが、中華料理ではなく、日本で独自に発展したラーメンという料理に、より相性がいいように感じた。

大ぶりな挽肉とソフトな絹ごし豆腐

具も興味津々だった。挽肉は、かなり粗く挽いてあり、挽肉というより肉のみじん切りといった感覚。噛んだときの食感がしっかりしていて、肉々しい。豆腐は、箸で触るとすぐ崩れてしまうほどソフトな絹ごし豆腐だ。この食感のコントラストも見事だ。おそらく山椒も花椒ではなく、日本の山椒だろう。辛いのが好きな人なら、ラー油を足さないと満足できないかもしれない。

刺激を加える辛味噌

麻婆ラーメンだけでなく、つけめんからタンメン、味噌ラーメンまでバリエーションが豊富なこともあり、机上には多様な調味料が用意されていた。その中で、辛味噌を溶いてあんにいれると、より引き立つと感じた。ラー油ではなく、辛味噌との相性の良さもどこか町中華的だ。決してハレの日の味ではなく、ケの日の味。本格派のこだわりというよりも、毎日食べても飽きない味ではないだろうか。長い行列もさもありなんだ。

「中華麺食堂かなみ屋」

四川麹料理を看板に掲げる「中華麺食堂かなみ屋」は、店名の通り、麺店ではあるものの、町中華というよりは本格中華寄りの店だ。本場・四川省のピーシェン豆板醤やトウチジャン、テンメンジャン、ひ志おしょうゆを調味料に使った本格四川麻婆豆腐が売りだ。

本格四川麻婆麺

同店の本格四川麻婆麺は、初めて平皿で配膳された。写真で見てもおわかりの通り、前記2店の麻婆豆腐の汁に近い感覚はない。ちょっと黒みがかった麺にも中華麺としてのこだわりを感じる。ただその分、感覚的に「ラーメン」というよりは「本格中華麺料理」的な感覚が勝るように感じた。

麺も含めて本格中華へのこだわり

そのこだわりぶりは、中華料理としての高いクオリティーに通じる半面、銀座や横浜の本格中華料理店で「ゆで麺に麻婆豆腐をかけてもらえませんか」とお願いすれば食べられるような気もする味なのだ。もちろん、完成度は非常に高く、3店で唯一、何の調味料も足さずに食べきった。本格中華として食べるか、普段から食べているラーメンとして食べるかは、もちろん食べる人次第だ。

たっぷりのあんはスープのよう

もっちりとしたとろみの麻婆豆腐をまるで汁のようにして麺と一緒に食べる感覚は、あんかけ麺というよりやはりラーメンに近い感覚だろう。一度、汁ありも食べてみたいとは思うが、この新潟汁なし麻婆ラーメンの感覚にすっかり魅了されてしまった。提供店は数多い。再度新潟を訪れる日が今から楽しみだ。

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