ポテトチップス入りの惣菜パン 横須賀のポテチパン

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高知県のぼうしぱんや福島県郡山市のクリームボックス、青森県のイギリストーストなどその地域では圧倒的な人気を誇るものの、一歩地元を出るとその名前を知る人すらいないという地域限定のパンが日本全国にある。ご当地パンと呼ばれるものだ。神奈川県横須賀市にも、そんなご当地パンが存在する。ポテチパンだ。

横須賀のご当地パン

惣菜パンに挟む惣菜と言えば、ツナ缶のマヨネーズ和えやマヨネーズで和えたゆで卵、ポテトサラダと言ったところが定番だが、ポテチパンはそれがポテトチップスに代わったもの。「我が店が発祥の店」という店が複数あり、そのルーツははっきりとはしない。とはいえ、高度経済成長の時代に誕生したことは間違いないようだ。

パンでポテトチップスをはさむ

そもそも横須賀は軍港のまち。戦後は米軍基地も加わり、アメリカの影響が色濃く、アメリカ発祥のポテトチップスが横須賀の食文化に影響を与えたであろうことは容易に想像できる。とはいえ、塩味でサクサクのポテトチップスが、パンのおかずになろうとは、横須賀以外の人には容易には想像できないだろう。

追浜の「北原製パン」

ポテチパンを提供する店は、横須賀市内に複数ある。いずれも、チェーンではない「まちのパン屋さん」ばかりだ。その中でも、最もシンプルなポテチパンを扱っているのが、京急追浜駅すぐ近く、横須賀街道=国道16号線にかかる歩道橋に隠れるように店を構える「北原製パン」だ。

「北原製パン」のポテチパン

多くの店がキャベツと和えたポテトチップスを挟む中で、「北原製パン」は、シンプルにポテトチップスのみ。ホットドッグ用の自家製パンに、まず自家製マヨネーズとバターを塗り、ポテトチップを挟む。野菜など水分を含んだ食材を使わないため、ポテトチップスのサクサク感が長く維持されるのが特徴だ。

「北原製パン」のポテチパンはシンプル

また、味付けはパンの方に施されているため、ポテトチップスが本来持つ塩気もしっかりと味わえる。ただ不思議なことに、塩味とともにほんのり甘みも感じる。何かシフロップのようなものをポテトチップスの上からかけているようだ。一方で、水分を極力避けているため、食べている最中も口の中が乾きやすい。牛乳やお茶など、飲み物と一緒に食べることをおすすめする。

県立大学の「中井パン店」

「北原製パン」と並ぶポテチパンの老舗と呼ばれているのが、やはり横須賀街道=国道16号線を横須賀の中心部を越えて南下したところにある「中井パン店」だ。最寄り駅は京急の県立大学になる。挟むポテトチップスは、のり塩で、キャベツとともにマヨネーズで和え、バターの風味も加わる。ニンジンも少し見える。

店頭に並ぶ「中井パン店」のポテチパン

歴史を感じさせる店頭のショーケースには、他にも多くの惣菜パンが並ぶが、パンは揚げパンなどを除けば、自家製のソフトフランスで惣菜を挟んでいる。ハードタイプではない柔らかい食感が特徴で、切れ目を入れて具を挟み込むのではなく、具を包み込むような独特の形状になっている。見た目は、ちょっと大きな餃子のようだ。

キャベツと共にマヨネーズで

マヨネーズ味が施されたポテトチップスは、本来のサクサク感を失うが、そもそもの原料であるジャガイモに立ち返るかのように、ジャガイモ本来の味を思い起こさせる。歯ごたえのいいキャベツと合わせると、ポテトサラダ感がいっそう増してくる。その意味でも、惣菜パンとしての違和感はない。

久里浜の「フジカワベーカリー」

メディアで人気なのが、国道134号線沿いの久里浜、京急とJR横須賀線に挟まれるような場所にある「フジカワベーカリー」だ。正面から見ると、小さな古い昔ながらのパン屋さんだが、よく見ると奥行きがあり、工場になっている。地元の学校や会社の売店にパンを卸す、地元では有名なパン工場だそうだ。

「フジカワベーカリー」のポテチパン

店頭には、キャラクター「ポテパンくん」が大きく掲げられている。テレビなどメディアで取り上げられることも多く、最初午後2時過ぎに訪店した際にはすでにポテチパンが売り切れていたほどの人気ぶりだ。ちなみに、キャラクターは「ポテパンくん」だったが、店の値札を確認すると商品名はポテチパンだった。

コショウが効いた大人の味

はさむパンは、ホットドック型の細長いパン。マヨネーズで味付けされているのは「中井パン」同様だ。使うポテトチップスは、うす塩味。キャベツはざく切りで、その分「中井パン」よりも歯ごたえがいい。また、コショウも使っているため、いくぶん「大人の味」になっている。

京急横須賀中央駅至近の「ヨコスカベーカリー」

京急横須賀中央駅の目の前、横須賀の中心街の真ん真ん中に店を構えるのは「ヨコスカベーカリー」だ。創業は1928(昭和3)年、間もなく100周年を迎えようかという老舗だ。老舗らしく、他の「まちのパン屋さん」とは一線を画すレシピ、価格になっている。いわば高級ポテチパンだ。

「ヨコスカベーカリー」のポテチパン

とにかく具の量が圧倒的に多い。ざく切りキャベツの食感もいい。ポテトチップスの供というよりは、ポテトチップ入りコールスローサラダと呼びたい味わいだ。横須賀ポテチパンを存分に味わいたい向きには、この具の量の多さはおすすめだ。挟むのは、同店自慢のソフトフランスパン。本場フランスの製パン技術の習得が創業のきっかけといい、その意味でも、同店を代表する味と言っていいだろう。

「ヨコスカベーカリー」は具がたっぷり

ポテトチップスを挟んだ惣菜パンは、横須賀以外の人にはなかなかその味が想像できないことだろう。しかし、一度味わってみれば、その見事に調和した味わいにくせになること請け合いだ。横須賀を訪れた際には、ぜひ一度試してみてほしい。

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