春の味、だけのこ。千葉県大多喜町は、375ヘクタールもの竹林が広がり、「竹の里」として知られる関東でも有数のたけのこの産地だ。たけのこはえぐみがあるため、アク抜きをするのが一般的だが、粘土質の土壌で育つ大多喜産のたけのこは、地表に出て光に当たる前に掘るため、「白たけのこ」とも言われるほど色が白く、苦み・えぐみが少ない。

大多喜町は房総半島の南部、市原から勝浦へと抜ける国道297号線、通称勝浦街道が貫く、山の中のまちだ。東京湾アクアラインから圏央道を抜ければ都心から1時間半ほどで行けるため、房総半島の中では比較的観光に適した地理になっている。そんな交通の便の良さもあり、春にはたけのこ掘り体験やたけのこ料理の人気店が多くの観光客でごった返す。

まずは、たけのこ掘り体験だ。大多喜町役場のホームページには、町内のたけのこ掘り体験施設が7カ所紹介されている。今回はその中の一つ、市原タケノコ園を訪れた。オープン時間の朝9時からの予約を入れたのだが、駐車場に着くと、すでに開園を待つ行列ができていた。

受付を済ますと、軍手と鍬を渡され、たけのこ山へと入っていく。山はかなりの急斜面で、お年寄りなど足の弱い人は、この時点で入山を諦めるほどだ。息を切らしながら山を登ると、竹林が広がる。土の上に穂先が出るか出ないかが収穫のタイミングで、まずは、土のほんの少しの盛り上がりを探すのに苦労する。しかし、初心者には係員が指導してくれるので安心だ。

予め係員が目印をつけておいた場所に案内してくれた。しかし、鍬入れは想像以上の重労働だった。畑と違って地面は固く、地下茎が網の目のように張り巡らされているので、なかなか思うように鍬が入らない。結局たけのこを途中で折ってしまい、最後は係員に掘り出してもらった。料金は自ら掘ったたけのこの重さを計って支払う。もちろん、店頭価格よりは大幅に安い。そのため、リピーターが多いそうだ。

思いの他の重労働にお腹が空いた。市原タケノコ園でも、天ぷらやお刺身などを盛り合わせたセットやたけのこご飯単品も食べることができるが、せっかくのたけのこの地元、人気のたけのこ料理店を訪れることにした。向かったのは、房総半島を横断する国道456号線沿いにある「郷土料理たけのこ」。看板メニューは、まさにたけのこ料理だ。

人気メニューは、前菜、野菜の田舎煮、たけのこの刺身、焼きたけのこ、たけのこのからあげ、たけのこのステーキ、たけのこの酢の物、山菜天ぷら、たけのこ御飯、みそ汁、お新香、デザートが揃った「たけのこ御膳」だ(いちばん上の写真)。新鮮なたけのこを使った料理が、テーブルからははみ出すのではないかと思うほど並ぶ。セットで5000円だ。

刺し身は、酢味噌をつけて。たけのこ本来の持ち味が味わえる。コリコリとした食感が魅力だ。焼くと表面に焦げ目がついて香ばしさが増す。酢の物は穂先の柔らかい部分を使っている。ソフトな歯触りが酢の酸味とよく合う。たけのこのステーキは、焼き目をつけたたけのこに焼肉のたれ風のソースがかかっている。ちなみに、前菜の一つはたけのこ煮で、みそ汁の具にもたけのこが使われている。まさにたけのこのフルコースだ。

出色はたけのこご飯だ。煮たたけのこを炊いたご飯と混ぜているのだろう、やや色の淡いたけのこご飯になっている。味は少し甘めで濃くないので、他のたけのこ料理と一緒に食べるにはちょうどいい。最後に振りかけられた胡麻がいい仕事をしている。味は薄すぎず、濃すぎず、たけのこご飯の魅力を存分に味わえる。ちなみに、たけのこご飯とみそ汁はおかわり自由だ。

「たけのこバター炒め御膳」も魅力的なメニューだ。たけのこバター炒めに加え、前菜、野菜の田舎煮、たけのこの酢の物、おかわり自由のたけのこご飯とみそ汁は「たけのこ御膳」と共通だ。3500円。

たけのこの魅力を、手を変え、品を変えて多彩な角度から味わうたけのこ御膳とは対照的に、たけのこの味の最も魅力的な部分を一点集中で引き出しているのがバター炒めだろう。バターの風味が、ややもするとあっさりしがちなたけのこにこくを加えている。何よりバターで炒めることでたけのこの甘さやうまみが存分に引き出されている。「たけのこ御膳」よりも満足度が高いと感じた。

たけのこ掘りはしんどいので、たけのこ料理を食べてからお土産に朝掘りのたけのこを買って帰りたいという人も多いだろう。「郷土料理たけのこ」でも、「道の駅たけゆらの里おおたき」でも、買うことはできるが、あっという間に売れ切れてしまうので要注意だ。お昼の時間に合わせるとまず買うことは不可能だろう。開店前に行列するくらいの覚悟は必要だ。

水煮や加工品であれば、朝一番でなくとも手に入る。「道の駅たけゆらの里おおたき」では、たけのこご飯の入った弁当「春の駅弁・筍めし」とたけのこご飯のパック詰めを買うことができた。弁当には、千葉県の県花・菜の花のからし和えも入っていた。千葉らしさを味わうには最適だ。

訪れたのは3月下旬だったが、大多喜周辺はまだ菜の花が満開だった。菜の花を愛で、その足でたけのこに舌鼓というのもいいだろう。たけのこの旬は6月くらいまでだが、その時期になると南房総ではびわも実り始める。気温も上がってきた。春のお出かけに、房総半島に出かけてみてはいかがだろうか。




