地元産高級肉種を味わう 信州新町のジンギスカン

投稿日:2026年5月29日 投稿日: (更新日:

ジンギスカンというと北海道をイメージする人が多いだろう。しかし、日本のジンギスカンのルーツには、明治政府の国策による緬羊奨励が背景にあり、全国で同時多発的に牧羊が始まり、それと共にその肉を食べる文化も広がった。長野市の信州新町もそんな全国に点在するジンギスカンシティーのひとつだ。

赤い幟が目印

信州新町の緬羊の歴史は1930(昭和5)年からスタートする。信州はもともと養蚕が盛んで、繭を取った後のさなぎなどの廃棄物が羊の餌に適していたことや乾燥した気候が羊の飼育に適していたこともあり、羊を飼う農家が増え続け、昭和20年代の後半には4000頭もの羊が、信州新町で飼われていたという。

店ごとのたれの違いも楽しみ

ジンギスカンは、1936(昭和11)年に開催された料理講習会でその美味しさを知った人たちが徐々に広めていったと言われている。1951(昭和26)年には、地元の観光協会が信州新町への来客をもてなす施設を開設、そこでのジンギスカンの美味しさが評判を呼び、信州新町がジンギスカンのまちとして全国に知られるようになった。現在、信州新町地区内を貫く国道19号線沿いにはジンギスカンの提供店が点在、その道はジンギスカン街道と呼ばれている。

地元産の高級肉種・サフォークが特徴

数多いジンギスカンシティーの中で、信州新町の最大の特徴を挙げるとするならば地元産の高級肉種・サフォークだ。緬羊の盛んだった信州新町でも化学繊維や安い輸入品の普及で、昭和の終わり頃には羊の頭数も激減していた。しかし、ジンギスカンのまちを標榜するだけに羊は絶やせないと、1982(昭和57)年にサフォークの飼育を開始。現在その美味しさが信州新町のジンギスカンの魅力となっている。

「焼肉レストランむさしや」開店前の行列

実際にジンギスカン街道に足を運んでみよう。近隣に宿泊施設がほとんどないため、昼間のみの営業がほとんどなので注意が必要だ。まず訪れたのは、ジンギスカン街道の最も長野側に位置する「焼肉レストランむさしや」だ。直営の牧場を有し、スーパーなどへジンギスカン用の肉なども出荷する、信州新町を代表するジンギスカン店だ。全体的にボリュームもあり、豪快に食べる、ジンギスカンらしさを楽しめるお店だ。家族連れでわいわい食べる客で賑わう。

ジンギスカンのハーフ&ハーフ

さすがは有名店だけあって、開店時間午前11時のほぼ1時間前からちらほらと開店待ちの客が集まり出し、開店時には結構な行列になっていた。ただ、肉と野菜を鉄板を使って自ら焼くので、店の中に入れさえすれば、後は速い。サフォークラムジンギスカンとマトンロースジンギスカンを盛り合わせたハーフ&ハーフとたれに漬け込んでいないサフォークラムロース、そしてタマネギとキャベツの盛り合わせを注文する。

サフォークラムロースは塩こしょうで

まずは漬け込みだれで味のついているジンギスカンから。生後12カ月以上の背ロースを使ったマトンロースはやや赤みが強く、火を通しても非常に柔らかい。マトン特有の臭みこそ感じないものの、牛や豚にはない羊ならではの香りというか個性はしっかりと感じられる。

ニンニクとショウガが明らかに存在感を発揮

漬けだれは、ニンニクとショウガが明らかに存在感を発揮する。それが、羊らしい個性と絶妙の組み合わせだ。肉とたれ、そしてキャベツが完璧なまでのマリアージュになる。羊らしい個性がキャベツをいっそう美味しく引き立てるのだ。カルニチンを豊富に含むサフォークは、さすが高級肉種だけあって、うまみが強い。濃厚な味わいで、ビールと言うよりは、白いご飯と一緒に掻き込みたい味だ。

サフォークラムロース

たれに漬け込んでいないサフォークラムロースでは、サフォーク本来の持ち味を味わう。予め、塩コショウで下味がつけられており、これを焼いて、そのままたれをつけずにいただく。たっぷりと脂肪がついているが、臭みは皆無だ。ただし、ジンギスカン同様羊肉らしさは強く感じる。サフォークの美味しさを確かめるには、漬け込みのジンギスカンと味のついていない生肉を両方焼いてみることをおすすめしたい。

「信州不動温泉さぎり荘」

続いて訪れたのは「信州不動温泉さぎり荘」だ。温泉宿泊施設を兼ねているので、信州新町では珍しくディナータイムにジンギスカンを楽しめる。やはり自社牧場を有し、大切に育てたサフォークの肉を高級感も添えて提供している。豚肉や鶏肉も用意しているので、食べ比べも可能だ。

ジンギスカン(上)とサフォークスライス

サフォークのたれに漬け込んだジンギスカンと生肉のサフォークスライスを注文する。「焼肉レストランむさしや」と違い、けっこう脂身がついている。しかし、そこは高級肉種だけあって、臭みは皆無だ。むしろ甘さを感じるほど。ただし、羊肉らしさも強くはなかった。もちろんうまみは強いので、羊肉が苦手と感じる人にはおすすめかもしれない。店構えも含めて高級感が漂う。

中央部が盛り上がったジンギスカン鍋

そしてもう1軒、「元祖ジンギスカン荘」も訪ねた。信州新町のジンギスカン店として最も長い歴史を持つ。同店の特徴は「信州らしさ」にこだわった「伝統の味」だ。肉は地元産のリンゴをベースとし、添加物を一切使わない秘伝のたれに一枚一枚ていねいに漬け込んでいるという。

炭火が香ばしい

これまでの2店の平たい鍋に対して、中央部が盛り上がったジンギスカン鍋を使用。七輪にくべた炭火で焼くため、香ばしさも強い。何より肉にしっかりまとわりついたタマネギ、リンゴ、ニンニク、ショウガなどのすりおろしが肉の味をいっそう引き立てる。

ビールもいいがご飯にも

ジンギスカン店の店内はもちろん、道の駅などで漬け込み肉も多く売られている。「ジンギスカンにビールは不可欠」な人には、持ち帰って自宅でジンギスカンもお薦めだ。北海道も含め、輸入肉の使用比率が99%を超えると言われている日本のジンギスカン。その中にあって貴重な地元産のサフォークを前面に押し出している信州新町は、ジンギスカン好きなら一度は食べに訪れるべきまちだろう。

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