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名脇役を味わう 下野のかんぴょう

投稿日:2026年9月18日 投稿日: (更新日:

お寿司の巻物には不可欠のかんぴょう。高級魚のにぎりに舌鼓を打っていても、ふと最後につまみたくなる――それがかんぴょう巻きだ。しかし、よく考えると、かんぴょう巻き以外でかんぴょうを食べることってあるだろうか? そもそもかんぴょうとは何か? 今回は助六寿司などでなじみ深い半面、その正しい姿を知る人が少ないかんぴょうについて調べてみることにしよう。

かんぴょう巻き
かんぴょう巻き

かんぴょう(干瓢)とは、ウリ科の植物である夕顔の果肉を紐状に剥いて天日で乾燥させたものだ。夕顔は、夏の夕方に開いた花が翌日の午前中にはしぼんでしまうことからそう呼ばれるようになった。洋なし形のものと球形のものがあり、その実は非常に大きい。ヒョウタンとは同一種で、苦味が少なく食用に適したものが夕顔と考えると分かりやすい。そもそもは、ウリ科らしく、ウリ類特有の香りがあり、トウガンに近い風味がある。

夕顔の実
夕顔の実

かんぴょうの起源は非常に古く、平安時代にはすでに夕顔の果肉を食べていたようだ。現在のように細長く剥いて干したかんぴょうが登場するのは、江戸時代初期のこと。乾燥という過程を経ることから保存性が高く、味がよく染み、さらには安価で栄養があることから、主に保存食として庶民に広まり、都市部では寿司や精進料理に欠かせない食材となる。干し芋や切り干し大根などと同様に、干すことで、冬の生野菜が食べられないような時期でも食べられることから重宝された。

かみなり汁のふるまい
かみなり汁のふるまい

茨城県、滋賀県、新潟県、秋田県、岩手県などで生産されるが、県別では栃木県だけで全生産量の98%以上を占める。さらに栃木県内でも、県南部の鬼怒川と思川に挟まれた平野部、特に下野市に生産が集中しており、周辺の壬生町や上三川町、小山市などが続く。旬は7~8月。栄養的にはカルシウム、カリウム、リン、鉄分等を多く含み、加えて食物繊維も豊富だ。

かんぴょうのつかみ取りも
かんぴょうのつかみ取りも

特にかんぴょうの生産量の多い下野市では、毎年、旬の時期に、雑木林を生かした公園とドイツをイメージして造られた建物からなる「グリムの森・グリムの館」でかんぴょうまつりを開催している。かんぴょう料理の振る舞いや、大きな夕顔の実をかんなのような機械で剥く作業の体験などを行っている。

かんぴょうの実を剥き機にセッティングする

特に興味深いのかんぴょう剥き体験だ。普段、寿司屋でかんぴょう巻きを食べている人のほとんどが、かんぴょうの実を実際に目にすることはないはずだ。その実は、通常で直径約10~20センチ、大きいものは直径30センチほどにもなる巨大なもので、その実を薄く、細長く削り、干すことで、あの紐状のかんぴょうが完成する。

ふくべ細工
ふくべ細工

夕顔の実は、一見巨大なメロンのよう。サイズはすいか大だ。いずれもウリ科の植物なので、何となくイメージが沸くのではないだろうか。大きさに比例して皮はそれなりに固い。かつて水筒などに使われたひょうたんは、夕顔の変種だ。なので、夕顔もひょうたんと同様に、大きく育った実から果肉を取り除き、外側の皮を乾燥させると、ふくべ細工と呼ばれる伝統工芸品・郷土民芸品になる。まつりの会場内では、ふくべ細工の制作体験も行われていた。

固い皮が吹っ飛ぶ
固い皮が吹っ飛ぶ

かんぴょう剥きに話を戻そう。大きな夕顔の実の中心部に太い釘のような棒を挿入、モーターで回る専用の機械に取り付ける。まずは皮むきだ。実の表面に刃物を当てて、足で操作しながら夕顔の実を回転させる。するとかんなくずのように厚くて固い皮が剥け、吹っ飛んでいく。

押し込むようにして剥く
押し込むようにして剥く

皮が剥けたら、次に実を削る。かんなのような刃物を手前から当て、押し込むようにして削っていく。ものすごい勢いで剥きたてのかんぴょうが飛び出していく。試しに剥きたてのかんぴょうをかじってみた。大根や蕪のような食感だが、味や香りはあまりしない。少し粘りがあり、うり特有のしゃくしゃくした食感だ。

種のある中心部は剥かない
種のある中心部は剥かない

意外だったのは、あまり中心部まで剥かないこと。結構大きなサイズのまま、機械から外して捨ててしまう。聞くと中心部は種があり、それが結構なスペースを占めるとのことだった。剥き上がったかんぴょうは、さっそく物干しのような竿に吊され、乾燥する。真夏の太陽熱で2日間にわたって干し上げれば、かんぴょうの完成という。

かんぴょうのおこわ
かんぴょうのおこわ

振る舞われたのは、まずかんぴょうのおこわだ。そもそもかんぴょうそのものにはほとんど味はない。乾燥させることで、煮汁の味をよく吸うため、だしを味わうものだ。おこわもその持ち味を生かすべく、とてもシンプルな味付けになっていた。

「特製壬生ラーメン壬生蘭々亭」のかみなり汁
「特製壬生ラーメン壬生蘭々亭」のかみなり汁

かんぴょうの卵とじスープも振る舞われた。同じ料理が「道の駅みぶ」では、かみなり汁という料理名で提供されていた。カツオだしの中に細切れのかんぴょうを入れ、卵とじにしたものだ。野菜や豆腐を入れることもあるようだが、かんぴょうと卵で味わう和風のスープが、ホッとする味だった。

「特製壬生ラーメン壬生蘭々亭」の中華そば
「特製壬生ラーメン壬生蘭々亭」の中華そば

場所を「道の駅みぶ」に移した。ここでは、通年でかんぴょうを使った料理が味わえる。「特製壬生ラーメン壬生蘭々亭」では、かんぴょうを使ったラーメンが味わえる。壬生ラーメンは細かく刻んだかんぴょうを野菜と共に炒めたあんがのったラーメンだ。そして、「壬生」がつかない中華そばにも特産のかんぴょうが使われていた。

ラーメンにかんぴょうをトッピング
ラーメンにかんぴょうをトッピング

関東風の鶏ガラスープをしょうゆで仕上げたシンプルなラーメンに、長いままに煮含められたかんぴょうがのっている。干しているということもあり、長いままのかんぴょうは意外に歯ごたえがある。いずれにせよ、あまり自己主張をしないかんぴょうだけに、シンプルなラーメンとの相性はいい。

かんぴょうのソフトクリーム
かんぴょうのソフトクリーム

農産物直売所では、なんと皮付きの夕顔が販売されていた。聞くと、冬瓜のように実を刻んで煮て食べる人もいるとのこと。そして、スイーツ。煮たかんぴょうの入ったソフトクリームが秀逸だった。かんぴょうまつりの会場内でも「かんぴょうミルクアイス」が販売されていたが、夕顔のシロップ漬けを入れたその味にはあまり大きなインパクトはなかった。

かんぴょう、ドライフルーツのような食感
かんぴょう、ドライフルーツのような食感

一方「道の駅みぶ」のソフトクリームは、かんぴょうらしく甘煮も含めてほとんど味が付いていない。しかし、水煮されつつも、干物ならではのしっかりした食感を持ったかんぴょうが、まるでグミのように甘いソフトクリームから顔を出してくる。甘くないドライフルーツのような食感でもある。これは、機会があればぜひ試してみてほしい食感だ。

居ないと困る名脇役
居ないと困る名脇役

かんぴょうは、なかなか主役はなりにくい食材だ。しかし、かんぴょう巻きのない寿司が物足りないように「とはいえ居ないと困る」名脇役でもある。ラーメンのトッピングに、ソフトクリームのアクセントにとなかなかの脇役ぶりだ。本場に栃木県南に出かけて、その魅力をぜひ味わってほしい。

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