食材、味付け…くせの強さ際立つ ひたちなかのスタミナラーメン (トップ写真) 関東というと、あっさりしょうゆスープの東京ラーメンというイメージが強いが、栃木県の佐野ラーメンや千葉県の勝浦タンタンメンなど、各県ごと、それぞれもう少し限られたエリアで人気を誇る個性的なご当地ラーメンも多々ある。茨城県では、スタミナラーメンがその代表格と言われている。 (写真:カボチャとレバーが特徴) スタミナラーメンとは、もちもちの太麺の上に、とろみのついた熱々の甘辛いしょうゆあんをたっぷりかけた、いわばあんかけラーメンだ。具は素揚げにしたカボチャやニンジンなど緑黄色野菜とレバーなど。特に甘みが強いカボチャとくせのあるレバーを使う点は、数ある全国のご当地ラーメンの中でも、ひときわ異彩を放っている。 (写真:水溶き片栗粉でとろみをつけたあん) 食材と並んで特徴的なのが、その味付け、甘さだ。赤いあんをよく見るとわかるのだが、結構な量のトウガラシ粉が加えられている。しかし、味の第一印象は「辛い」ではなく、明らかに「甘い」のだ。しかもとろみが付いているので、太い麺に、その強い甘さがしっかりねっとりとまとわりついてくる。 (写真:地元では冷やしが人気) 麺は、太麺ならではのもちもちとした食感ととろみの強めなあんをまとわりつかせる点が特徴だ。ゆであげの温かい状態のものか、冷水で締めた麺から好み選べる。地元では、「冷やし」などと呼ばれている冷たい麺の人気が高い。さらにボリュームもセールスポイントで、メニューに「1・5玉」や「2玉」などの大盛りを予め用意していることも多い。 (写真:甘辛いあんが太麺に絡みつく) 誕生したのは、昭和50年代。ひたちなか市にある常磐線勝田駅前の「大進」でのこと。覚えていらっしゃるだろうか、以前ご紹介したが「大進」は、「焼肉冷やし」という超人気メニューを誇る行列店だ。ひたちなかが発祥の地、「大進」が発祥の店でありながら、なぜ同店の看板メニューが、茨城のご当地ラーメンを代表スタミナラーメンではないのだろうか。 (写真:行列が絶えない「大進」) 「焼肉冷やし」の項を読み返していただけるとお分かりいただけると思うのだが、「大進」は現店主の川崎正悟さんが居抜きで引き継いだ店。先代の頃に当時のオーナーがあんかけラーメンを発案、厨房を任されていた、後に水戸で「松五郎」を開業する長井順一さんがスタミナラーメンとして人気メニューに仕立てた。一方で川崎さんも「スタミナラーメンは長井さんの味、自らの味で勝負したい」と焼肉冷やしを考案したことで、「大進」の看板メニューが「掛け替え」られた。 (写真:水戸にある「松五郎」) そのため、ひたちなかの「大進」がスタミナラーメン発祥店であるにもかかわらず、現在では水戸の「松五郎」をスタミナラーメンの元祖店と扱うことが一般的になっている。そんな中ひたちなかでは、商工会議所が新メニューを立ち上げるなど「スタミナラーメンといえば水戸ではなくひたちなか」のアピールに余念がない。実際にひたちなかには多くの人気店もある。今回は、そんなひたちなかのスタミナラーメンに焦点を当ててご紹介しよう。 (写真:「大進」のスタミナラーメン) まずは敬意を表して発祥の店から。「大進」は、川崎さんの焼肉ラーメンで知られるが、スタミナラーメンも依然人気メニューとして提供が続いている。茨城県民は筋金入りのスタミナラーメン好き。しかも「スタミナラーメンの聖地・ひたちなか」だけに、焼肉ラーメンだけでは、客は満足しないのだろう。甘さに負けないしっかりとした辛さも「大進」のスタミナラーメンの魅力だ。 (写真:勝田駅前「大進」の向かいで営業する「らーめん現代」) 数あるスタミナラーメンの提供店の中で、最も「変化球」を投げているのが、「大進」の真向かいで営業するのが「らーめん現代」だ。スタミナラーメンの象徴とも言える食材ながら、好き嫌いのあるカボチャとレバーを外したスタミナラーメンを提供している。いわば万人向けのスタミナラーメンだ。 (写真:「らーめん現代」の肉スタミナラーメン) レバーの入ったスタミナラーメンとレバーの代わりに豚バラ肉を使った肉スタミナラーメンと二種類のスタミナラーメンがある。もちろん麺は冷温どちらかを選べるのだが、温の場合は汁なしではなくだしを張った上にあんを掛ける。同じ豚バラ肉でも「大進」の焼肉ラーメンと違い、野菜の多さはスタミナラーメンそのものだ。レバーは苦手だが、野菜たっぷりのスタミナラーメンが食べたい、という人におすすめだ。 (写真:「すたみならーめんえむず」) 「すたみならーめんえむず」は「大進」「らーめん現代」とは常磐線の線路挟んだ反対側、電車の車庫近くに位置する。同店の特徴は、麺がやや細めなこと。そしてあんへの強いこだわりだ。独学で編み出したという現在のメニューはあんの美味しさが光る。特にレバーの鮮度にはこだわっているという。 (写真:「すたみならーめんえむず」のスタミナラーメン) レバーとカボチャは好き嫌いがある。実際に、各店でレバー抜きを注文する客にも出くわした。「すたみならーめんえむず」では、レバーを豚バラ肉で代替する「らーめん現代」に対し、レバーのくせを極力抑えようとしている。レバーとカボチャのくせの強さこそ、ある意味スタミナラーメンらしさ。まずは「すたみならーめんえむず」でトライしてみて、それでもダメなら「らーめん現代」で肉スタミナラーメンか「大進」で焼肉ラーメンかという選択肢になるだろう。レバーが苦手な人にも優しいひたちなかのスタミナラーメンだ。 (写真:「スタミナラーメン珈奈里屋」) 駅から離れ国道4号線に近い場所に位置するのは「スタミナラーメン珈奈里屋」だ。やはりスタミナラーメンが看板メニューで、ラーメンもあるものの、注文のほぼすべてがスタミナラーメンというお店だ。ラーメンも取り扱うので、甘辛いあんの奥底には、だしの風味も感じられる。 (写真:「スタミナラーメン珈奈里屋」のスタミナラーメン) 特徴的だったのは、その強い甘さ。全般的に甘さが立つひたちなかのスタミナラーメンだが、その中でも特に甘みが強かった。カボチャの強い甘さが気にならなくなるくらい、あんが甘い。しかし、具の野菜が大ぶりに刻まれており、特にキャベツのシャキシャキした食感が、甘さをうまく調和しているイメージだ。スタミナラーメンの甘さが好き、という向きにはお薦めだろう。 (写真:ホームセンターにも出店する「我流食堂」) 総本店の他にホームセンター内にも店舗を構えるのが「我流食堂」だ。同店の特徴は、冷凍で本場のスタミナラーメンを持ち帰れる点にある。以前は東京都心にも茨城のスタミナラーメンを取り扱う飲食店があったが、現在はほぼ茨城県内に限られる。なかなか茨城まで行けないという人でも、「我流食堂」ならお取り寄せができる。 (写真:冷凍ならお取り寄せも可能) 福岡のとんこつラーメンが好例だが、くせの強いラーメンに魅了されると、そのくせの強さをさらに追い求める傾向があるのではないだろうか。かつては鼻をつまんで通り過ぎた強烈な豚骨臭に、今では自然と引き寄せられるようになった。ひたちなかのスタミナラーメンも同様だ。レバーのくせに、そしてカボチャとあんの強い甘さに、ちょっと心が動くようになってきた。