知って作って味わって 茨城の梅グルメ (トップ写真) 日本中で広く愛される梅。生産量では和歌山県が圧倒するが、北海道と沖縄県以外は全都府県とも100トン以上収穫するなど、全国各地で愛されている。関東では、群馬県の生産量が多いが、観梅・梅の名所としては関東三大梅林と呼ばれる水戸、埼玉・越生、神奈川・小田原が名高い。水戸・偕楽園を筆頭に、茨城県は日立市の諏訪梅林やつくば市の筑波山梅林など各地に多くの梅林がある。当然その実もよく食べられており、茨城には多くの梅グルメがある。 (写真:梅羊羹) 特に水戸市は、観光土産品に梅を使ったものが多い。例えば、梅羊羹。砂糖、白生餡、水飴、梅シロップ、寒天が原料だ。時間を掛けて練り上げることで、なめらかな口当たりの、ほど良い柔らかさに仕上がる。ほんのりピンクの色あいと甘すぎない、酸っぱすぎない味で広く愛されている。 (写真:のし梅) そしてのし梅。梅の実を砂糖や寒天と煮つめ、竹の皮で包んだゼリー風のお菓子だ。酸味のあるさっぱりとした味で、べっ甲色の見た目も非常に特徴的だ。常温はもちろん、夏場は冷やすとさらにおいしくなることから、水戸では古くから暑気除けとして食べられてきた。 (写真:水戸の梅) その名もズバリ水戸の梅も、茨城県を代表する銘菓の一つだ。白あんをやわらかい求肥でくるみ、梅を使って甘酸っぱく漬けた赤しそで包む。パッケージは、赤しそと水戸伝統の染め技法である水戸黒をイメージしている。水戸を訪れた際にはぜひ買って帰りたい名物だ。 (写真:材料、漬け方で梅干しも様々) 甘いお菓子だけでなく、梅干しももちろん水戸の名物だ。大きな梅を柔らかく漬け込んだものからカリカリの小梅まで、多様な梅干しが、水戸をはじめ県内の多くの都市で作られ、販売されている。県内の土産物売り場を見回せば、梅干しは必ずと言っていいほど見かけるはずだ。 (写真:梅の実がそのまま入ったお菓子も) そして梅酒。6月頃に収穫される青梅を、ホワイトリカーや焼酎など蒸留酒に漬け込む。日本酒地帯の茨城にもかかわらず、日本酒ではなく蒸留酒で漬け込むのは、酒税法のためだ。酒類に水以外の物を混ぜることは、酒類を製造したものとみなされ、酒税の納付が義務づけられてしまうのだ。 (写真:梅や砂糖の違いが梅酒の出来を大きく変える) ただし、消費者が自ら消費するために、政令に定められた条件で酒類と他の物品を混ぜる場合には適用されないという例外規定がある。梅酒の場合、すでに酒税が納められたアルコール分20度以上の酒類に、糖類、梅その他財務省令が定めたものを混ぜ、新たにアルコール分1度以上発酵しなければ酒類の製造とは認められない。日本酒など醸造酒の多くがアルコール度数20度以下のため、梅酒の多くは蒸留酒を使うことになる。 (写真:梅酒と酒の資料館「別春館」) 水戸の梅酒を知る上でぜひ訪れたいのが、明利酒類が運営する梅酒と酒の資料館「別春館」だ。明利酒類は、江戸時代末期に新潟から水戸に入った杜氏が創業した酒蔵を前身に1950(昭和25)年に創立。日本酒と共に、梅酒造りを手がけている。「別春館」は、150年余りの由緒ある酒蔵で、酒蔵の2階には、かつてのの酒造技術や、道具などを展示、梅酒についての展示も行われている。 (写真:明利酒類の梅酒「百年梅酒」) 明利酒類の梅酒「百年梅酒」は、原料に国産青梅を100%使用する。大きさや熟度の揃った梅を漬け込んでから長期間熟成させ、仕上げにブランデーとハチミツで味と香りを整える。2008年の大阪天満天神全国梅酒大会で優勝するとともに、2013年の水戸の梅祭り梅酒大会で黄門賞(優勝)も獲得している。 (写真:梅体感パーク「Ume Sonare oarai」) せっかくなので、梅酒造りも体験してみよう。大洗にある1830(天保元)年創業の老舗梅干し屋「吉田屋」が運営する梅体感パーク「Ume Sonare oarai」は、体験、梅林、飲食の3つのエリアで構成され、体験エリアでは梅シロップや梅酒、梅干し作りのほか、梅染めの体験や梅干しを含む加工品製造工場の見学ができる。今回取り組んだのは梅酒造りだ。 (写真:皮も身も種も赤い露茜) 工房の中で、手ほどきを受けながら、自ら梅の銘柄、砂糖の種類、漬け込む酒を選び、実際に密閉容器の中に詰め込んでいく。梅は、青梅、完熟梅、露茜、無農薬青梅、季節限定希少品種から選べる。今回は、桃のようなフルーティーさが特徴で、鮮やかな赤色に仕上げる露茜を選んだ。 (写真:砂糖はたっぷりと) 砂糖は、てんさいグラニュー糖、花見糖、黒糖、和三盆、オーガニックシュガーから選べる。砂糖もそれぞれに持ち味があり、味わいはもちろん、できあがりの色にも影響を与える。今回は、露茜の鮮やかな赤さを生かすために、無色のてんさいグラニュー糖を選んだ。 (写真:酒は泡盛) 最後に漬け込む酒も選ぶ。地元産のそば焼酎、麦焼酎に加え、地酒もラインナップに加わる。先にも説明した酒税法の関係から、日本酒は加水する前のアルコール度数20度を超える銘柄だ。さらには、日本酒ベースのジンや泡盛まで用意されている。やはり露茜の色を邪魔しないよう、無色透明の泡盛を選んだ。 (写真:梅、砂糖、酒を密閉容器に) これらを密閉容器に詰めていく。詰め方のコツや、持ち帰った後のメンテナンス法までていねいに教えてくれる。最初の2週間は常温で1日1回は砂糖を溶かすように毎日瓶を揺すり、その後2週間は常温で熟成させる。約1カ月で完成するが、さらに長期で熟成させることもできる。 (写真:ローズポークの梅酒焼丼) 体験後、食エリアのカフェで、梅酒をソースに加えたローズポークの梅酒焼丼をいただいた。甘酸っぱいソースが柔らかい豚肉にからんで、とても美味しかった。カフェに併設する売店では、梅干しなど土産物も購入できる。このように、茨城県内各地には様々な梅グルメがある。茨城を訪れた際には、立ち寄ってみるといいだろう。