競い合いで味高まる 「仙台マーボー焼きそば」 (トップ写真) 仙台の名物料理と言えば牛たん、笹かまぼこなど数多い。そんな中で近年、仙台市を中心に市民に愛されるようになったご当地グルメがある。仙台マーボー焼きそばだ。1970年代前半に、仙台市内の中華料理店「まんみ」でまかない料理としてつくられたのがルーツと言われている。その後、正式メニューに昇格。市内の多くの中華料理店に広がった。 (写真:仙台マーボー焼きそば) 宮城県中華飲食生活衛生同業組合が定義する仙台マーボー焼きそばとは、以下のようなものだ。@麻婆を使い、具は豆腐に限定しない、A麺は焼くか、揚げたものとする、B宮城県中華飲食生活衛生同業組合の認定人が認定したものとする。以上の3点で、仙台市内外の多くの中華料理店で提供されている。 (写真:「元祖」の幟がはためく「まんみ」) 早速仙台を訪れてマーボー焼きそばを食べてみよう。元祖に敬意を表して、まずは「まんみ」を訪ねた。同店は、1972年に仙台駅前のジャンジャン横丁で誕生。しかし現在は駅前の店舗を閉め、泉中央と長町で営業を続ける。店構えは、ファミリーレストランのようで、本格中華の雰囲気ではない。かといって、いわゆる町中華のような佇まいでもない。食券を自動販売機で買って注文するのも、どこかチェーン店風だ。 (写真:「まんみ」のマーボー焼きそば) 卵スープとともに運ばれてきた元祖マーボー焼きそばは、非常にシンプル。皿いっぱいにマーボー豆腐が盛られていて、麺はほとんど見えない。まずはマーボー豆腐だけ食べてみる。優しい辛味にちょっと驚かされた。かなり辛さが控えられたマーボー豆腐だった。 (写真:茶色い「素」焼きそば) マーボー豆腐から麺を引き出してみる。茶色いそれは蒸し麺だろう。結構歯ごたえがある。ただし、非常にシンプルな焼きそばだ。ソース焼きそばっぽいモノをイメージしていたのだが、具がなく、麺を炒めただけの「素」焼きそばだ。非常にシンプルな焼きそばとこれまたオースドックスなマーボー豆腐の組み合わせは、いかにもまかない、従業員用の限られた食材でつくったメニューというイメージだ。辛いもの好きとしては、ラー油をかけていただいた。 (写真:バナナ餃子とマーボー焼きそばが看板メニュー) 続いては、仙台駅前、パルコの1階と一等地にある「口福吉祥喜喜龍(シーロン)」を訪れた。同店は、場所柄バーカウンターがあったりとおしゃれな佇まいが特徴だ。お茶がポットで提供されたりと、こだわりを感じさせる。まずは名物メニューのバナナ餃子でビールをいただく。 (写真:バナナ大の餃子) バナナ餃子とは興味をひくネーミングだが、決してあんにバナナが入っているわけではない。野菜たっぷりのあんがつまったかなりジャンボな餃子で「バナナ大」という意味でバナナ餃子と名付けられたという。野菜がたっぷりなので、けっこうあっさりだ。 (写真:熱々の土鍋で食べるマーボー焼きそば) そして、ランチタイムは皿盛りだが、夜は、土鍋でマーボー焼きそばが提供される。蓋付きで登場した土鍋から、テーブルで蓋を取ってくれる。中ではマーボー豆腐がぐつぐつと煮え立っている。いかにもおいしそうな演出だ。 (写真:花椒が香るマーボー豆腐) まずはマーボー豆腐のみを味わってみる。花椒がふんわりと香る本格中華のマーボー豆腐だ。細かく刻んだねぎも入るなど、「まんみ」とはかなりイメージが違う。しかしやはり辛さは控えめだった。しかし、花椒など香り豊かに味が調えられており、ここにラー油を注ぎ入れるのは気が引けた。それほど美味しいマーボー豆腐だった。 (写真:麺には焼き目が) マーボー豆腐の下から麺を引き出すと、やはり茶色い麺。こちらもシンプルな「素」焼きそばだ。しかし、食べ進むうちに「まんみ」との決定的な違いに気づいた。麺が日田やきそばのように焼き固められてカリカリになっているのだ。揚げ麺ではない。焼き麺なのだが、たっぷりの油で麺をあまり動かさずに焼くと、麺の表面がカリカリになる。それが実に美味しい。 (写真:熱々が魅力) そして時間がたつにつれ、そのカリカリがマーボー豆腐でしんなりとしてくるのだ。この微妙な歯触りがいい。実に快感なのだ。土鍋のおかげでなかなか冷めないのもいい。最後まで熱々で、食べ終えるころには鼻水が出てきた。 (写真:「中国めしや竹竹」) もう1軒、五橋にある「中国めしや竹竹」も訪ねた。同店はマーボー焼きそばのバリエーションが多い。麺を太麺に変えられたり、焼きそばとチャーハンのハーフ&ハーフにできたりもする。今回注文したのは、カレーマーボー焼きそばのハーフ&ハーフだ。マーボー豆腐の辛味にカレーを使っている。 (写真:カレーマーボー焼きそばのハーフ&ハーフ) このカレーが実にいい。家のカレーでもインドカレーでもない。ほんのりカレーが香るマーボー豆腐なのだ。マーボー豆腐というスタンスは崩していない。やはり花椒が効かせてあり、本格中華の雰囲気も感じられる。 (写真:チャーハンとマーボー豆腐) れんげでチャーハンとともにカレーマーボー豆腐をいただく。チャーハンにマーボー豆腐をかけて食べるメニューはけっこうありそうだが、改めてその相性の良さを感じた。ほんのりカレーもまたいい。 (写真:カリカリが際立つ麺) そして麺。やはり、茶色い麺が日田やきそばのように焼き固められていた。そのカリカリ度は「口福吉祥喜喜龍」をはるかに上回る。箸ではなかなかほぐれないほどだ。しかし、それがまた美味しい。少しゆるめのマーボー豆腐の水分を、カリカリ麺がどんどん吸っていく、それで美味しさがさらにアップする。 (写真:「泰陽楼」のマーボー焼きそば) マーボー焼きそばは、仙台駅周辺だけでも他に「泰陽楼」など多くの店で食べられる。多くの店がその味を競い合っているからこそ、クオリティーが高くなるのだろう。どこのまちにもありそうなメニューだが、仙台名物と言われるからには、訪れた際にはぜひ食べてみるといいだろう。