四日市に20万人のにぎわい 2023東海・北陸B−1グランプリ (トップ写真) 11月18・19日の2日にわたり、三重県四日市市で「2023東海・北陸B−1グランプリin四日市」が開催された。初日7万3800人、2日目12万8600人、2日間合計で20万2400人が来場、まちじゅうに人があふれ、中京工業地帯を代表する工業都市が大いににぎわった。 (写真:東海・北陸のご当地グルメが一堂に会した) 東京一極集中が進み、各地で地方都市の衰退が懸念されている。人口31万人と三重県最大の都市・四日市でも、かつては公害被害からまちの将来が危ぶまれた時期を経験した。今回の東海・北陸B−1グランプリも、公害を克服し「元気都市四日市」の実現を目指すまちおこしの一環として開催された。 (写真:第1回B−1グランプリで挨拶する渡辺英彦さん) ご当地グルメによるまちおこしのルーツをたどると、富士宮やきそば学会を設立、B−1グランプリを主催する一般社団法人ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会の代表理事も務めた故渡辺英彦さんに遡る。2000年、静岡県富士宮市の活性化を目的に、地元ならではのやきそばを前面に押し出し富士宮の魅力を発信する活動をスタート。同じくやきそばでまちおこしに取り組む群馬県太田市や焼きうどんの福岡県北九州市などと連携、関東や九州などで共にイベントを開催することで、活動の認知度を高めた。 (写真:12年の北九州大会には61万人が来場した) この流れが、06年に青森県八戸市で初めて開催されたB−1グランプリにつながった。焼き麺に限らず、提供する料理の幅が広がり、ともに活動するまちおこし団体は北海道から九州まで、全国に広がった。地方都市のまちおこしは、なかなか域外の人には伝わらない。同じ志を持つ仲間たちが手を携えたからこそ、その取り組みは全国レベルで知られるようになった。しかし、コロナ禍に見舞われ、多くの人が集まり、飲食を共にするイベントは開催が見送られてきた。 (写真:商店街もにぎわった) 四日市大会も、当初は20年5月に開催予定だったが、コロナ禍の影響で延期されていた。四日市市では、来場者を限定しご当地グルメを持ち帰って食べてもらう「ウィズコロナ」での開催も検討したが、そもそもまちににぎわいをもたらすのがB−1グランプリ開催の趣旨。コロナ終息を待っての開催となった。 (写真:ゴールドグランプリはDo it!松阪鶏焼き肉隊) 恒例の箸による投票の結果、Do it!松阪鶏焼き肉隊(三重県松阪市)が2万3550グラムの箸を集めてゴールドグランプリに輝いた。シルバーグランプリは富士宮やきそば学会(静岡県富士宮市、2万3062グラム)、ブロンズグランプリは亀山みそ焼きうどん本舗(三重県亀山市、1万8302グラム)。4位は西伊豆しおかつお研究会(静岡県西伊豆町)、5位はめいほう鶏ちゃん研究会(岐阜県郡上市)だった。 (写真:岩手からも仲間が駆けつけた) 投票は競うものの、実はB−1グランプリに集うまちおこし団体は決して競合相手ではない。同士なのだ。単独では発信し切れないまちの魅力を、四日市に集まり、共に手を携えて発信するからこそ、その魅力を幅広く伝えることができ、開催都市にはにぎわいももたらされる。そのため、団体のメンバーたちは地域を越えて非常に仲がいい。今回も東海・北陸支部大会にもかかわらず、久しぶりのB−1グランプリということで、北海道から九州まで、全国各地のまちおこし団体関係者が会場に集結、大会を盛り上げた。 (写真:地元のおまつりに出展) コロナ禍が深刻化したのは20年の年明けごろ。全国で緊急事態宣言・まん延防止措置が解除されたのは22年9月末のことだ。その間、イベント開催は自粛せざるを得なかった。各地のご当地グルメでまちおこし団体の活動もほぼストップした。今回ゴールドグランプリに輝いたDo it!松阪鶏焼き肉隊が動き出したのも、コロナ終息が視野に入ってきた22年夏のことだ。まずは、地元の松阪祇園まつりに合わせて小規模に出展した。 (写真:長い行列が絶えなかった今回の松阪ブース) しかし、ほぼ3年にわたって出展が途絶えていただけに、屋台を組み上げた後に、地面に敷くべきブルーシートを忘れていたことに気づき、すべて解体、再度準備をやり直した。やり方を忘れてしまっていたのだ。それから約1年。今回は殺到する来場者に手早く対応できるまでにノウハウを回復した。 (写真:鶏肉を甘辛い味噌ダレとともに網焼きに) 串を通さず、一口大に切った鶏肉を甘辛い味噌ダレとともに網焼きにして食べる松阪鶏焼き肉のおいしさにもひときわ磨きがかかった。松阪牛の地元にもかかわらず、地元市民は鶏焼き肉をこよなく愛するという松阪ならではの食事情が、多くの来場者に発信された。 (写真:下焼きから味付けまで手分けして多くの来場者に対応) 久しぶりのB−1グランプリ、しかも地元実行委員会の目標だった10万人の倍となる20万人もの来場者で、持ち込んだ食材が底をついてしまう団体もあった。そんな中、ホスト団体である四日市とんてき協会や三重の県庁所在地・津の津ぎょうざ小学校は最後の最後までご当地グルメの提供を続けた。用意されたチケットも完売、「2023東海・北陸B−1グランプリin四日市」は成功裏に幕を閉じた。 (写真:閉会式で挨拶する森四日市市長) 閉会式でも、森智広・四日市市長が大会の成功を高らかに宣言した。地元商店街からも久々のにぎわいに喜びの声が上がったという。地元関係者からは「B−1の灯を消したくなかった、次につなげたい」との声も上がった。コロナ前から準備を整えていたからこそ、今回の開催、成功にこぎ着けた四日市大会。コロナ終息を受け、イベント開催が旧に復するのはこれからだろう。 (写真:亀山みそ焼きうどん) 今回上位入賞した3団体が提供した味噌味の松阪鶏焼き肉や歯ごたえの強い麺とラードの絞りかすである肉かすを使った富士宮やきそば、難所の鈴鹿峠越えに備えてトラックドライバーがスタミナをつけたという亀山みそ焼きうどんも、地元以外ではなかなか食べることができないご当地グルメだ。こうして、全国の地元ならではおいしいものが一堂に集うことで、四日市のまちににぎわいをもたらすと同時に、それぞれのご当地グルメの魅力に触れることで「食べに行ってみよう」と来場者が思ってくれることもまたB−1グランプリの存在意義と言えるだろう。ご当地グルメでまちおこしの機運がますます広がることを期待したい。