鮮度抜群、中央前橋のホルモン焼き 群馬県の豚肉食B (トップ写真) 群馬県では豚肉をよく食べるとこれまで紹介してきた。その傾向は、群馬の県庁所在地・前橋でも顕著だ。上毛電鉄の始発駅・中央前橋駅の周辺には、古くからもつ焼の店が多数並ぶ。メニューには牛ホルモンもあるが、多くの店でメインとなるのは豚ホルモンだ。 (写真:路地裏に位置するが小ぎれいな店構えの「しま田」) 最初に訪ねたのは、前橋中心街の裏路地にある「炭火焼肉ホルモンしま田」。おすすめメニューの筆頭にあるのは、ホルモン盛り合わせだ。上質な素材を厳選、店主がその日おすすめの部位を2切れ7種類盛り合わせてくれる。もちろん、豚ホルモンだ。 (写真:ホルモン7種類の盛り合わせ) 左からガツ芯、豚ハラミ、豚トロ、カシラ、ホルモン、豚タン、トンパイ。ガツ芯は胃袋の厚みのある部分、トンパイは乳房だ。まずは豚タンを焼く。ちょっと厚めに切られていて、それが絶妙の歯ごたえを演出する。 (写真:部位ごとにじっくり焼いて味わいながらいただく) おすすめメニューだけに、どれも絶妙の味わい。鮮度の良さを感じる。漬けダレで出されるのだが、その味付けも絶妙で、テーブルに用意されているタレになかなか箸が伸びない。ひとなめしておいしいたれだと自覚はしているものの、ホルモンそのもののおいしさと絶妙のつけダレで、自然に箸がたれを素通りしてしまうのだ。 (写真:低温調理のタン生) やはりおすすめのタン生も注文してみる。「生」とあるが、豚肉だけに、もちろん生ではない。豚タン刺しを低温調理して、自家製薬味ポン酢と卵黄をからめて食べる。食感はまさに刺し身。低温調理で適度に軟らかさを出した食感も心地よい。 (写真:大トロ、絶妙の焼け具合) 焼き物に戻ろう。大トロは、豚の直腸部分だ。豚の腸の中でも最も美味とされる部位。「大トロ」のメニュー名通り、しっかり脂がのっている。 (写真:コリコリした食感が特徴のタケノコ) 最後はタケノコ。大動脈、血管だ。岡山・津山では牛の大動脈をヨメナカセと呼び、福岡・久留米ではせんぽこと呼ぶ。独特のコリコリとした食感が特徴だ。かなり歯ごたえがあるので、歯が弱い人は遠慮した方がいいかもしれない。 (写真:ニンニク好きには垂涎の「しま田」のガーリックライス) ちなみにシメには「ニンニク好き」を自称する店主が、ニンニクをたっぷりと使って作るガーリックライスを食べてみたい。ビールもいいが、ホルモンが進むこと請け合いのニンニクライスだ。 (写真:昭和が漂う「三番ホルモン」) 小ぎれいな店構えとこだわりメニューの「しま田」だったが、「中央前橋のホルモン」を満喫するなら、これから紹介する「三番ホルモン」ののれんをくぐることをぜひおすすめしたい。店構えからして、これぞ「昭和のホルモン焼き屋」と言った雰囲気だ。 (写真:店内には壁一面の冷蔵庫) 店内ももちろん昭和のたたずまい。ビールは、自分で瓶を冷蔵庫から出して栓抜きで開けて飲む。おろしニンニクも自分で冷蔵庫から取り出して使う。昭和を知る酔っ払いなら、垂涎の店だ。 (写真:アルミの皿も昭和のたたずまい) 魅力的なのは店の雰囲気だけではない。ホルモンがまたゼッピンなのだ。注文したホルモンは、アルミ皿に盛り合わせて提供された。(写真左から)シロコロ、レバー、大トロ、ハラミ、ホルモン。 (写真:タンには自ら塩を振る) 漬け込みではないタンは別皿で出てきた。塩味から食べ始めることにしよう。分厚く切られたタンをやはり昭和のにおいがするガスのロースターに乗せ、自らテーブルの塩を振る。じっくりと焼き上がるまで待って、まずはそのまま一つ食べてみる。絶妙の歯ごたえだ。 (写真:タン塩をごま油で) お店からすすめられたのは、ごま油をつける食べ方。焼き上がったタンを皿のごま油に浸して食べる。ごまの風味が、タン塩の味を一気に膨らませる。以降はすっかりごま油方式のとりこになってしまった。 (写真:エッジの立ったレバーの断面) 続いてレバー。包丁が入った断面が、スパっと垂直だ。レバーの角のエッジが立っている。いかに新鮮なレバーか、その断面が物語っている。たれにたっぷりニンニクを入れ、それをつけて食べる。柔らかすぎないところが魅力だ。焼いてなお、だらんと脱力しないイメージだ。 (写真:きゅっと縮んだ大トロ) 大トロは、ホルモンに付いた脂だけを切り取ったもの。単刀直入に言うと内臓脂肪だ。脂と言いながら、火が通るとどんどん筋が収縮して小さくなっていく。縮みきったときが食べごろだ。 (写真:コロコロになった白コロ) 白コロは大腸の部分。脂肪の多い部分だが、これを裂かずに腸の内側に脂を閉じ込めて焼く。大トロ同様に火が入ると脂肪の部分が収縮するため、生ではふにゃっとしていたものが、焼くに従って締まってきて、最終的には網の上でころころ転がるほどになる。たれをつけて口に含むと、溶けかかった脂が口の中ではじける。 (写真:王道のホルモン) ホルモンは小腸だ。大腸に比べ、脂が少ない。しっかりとした歯ごたえ。その食感を楽しむ。ハラミは横隔膜。正肉に近い、柔らかい食感とジューシーな味わいが特徴だ。 (写真:ゼッピンのロース) 追加でロースを頼んだ。モツ類同様、正肉も抜群のおいしさだ。豚肉の消費量が多く、さらには古くからホルモンを好んで食べる習慣があるからだろう。モツは、新鮮さを保ったまま流通するルートが確立されているようだ。正肉も同様で、しっかりと鮮度管理された、つまりは厳しい品質管理の下で取り扱われているようだ。 (写真:1杯100円でおかわり自由の豚汁) ちなみに豚汁は、1杯100円でおかわり自由。お腹いっぱいになること請け合いだ。 豚を好んでたくさん食べるから品質が上がり、高品質の豚に慣れた舌は、安かろう悪かろうの肉を受け付けない。そんな「正の循環」が群馬県の豚肉料理を常に安くおいしく保っているのではないか。豚肉好きなら、ぜひ、群馬県の訪れるべし、食べるべしだ。